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元・神獣の世話係 ~神獣さえいればいいと解雇されたけど、心優しいもふもふ神獣は私についてくるようです!~  作者: 草乃葉オウル ◆ 書籍発売中
バナンバタウン ~勇者の一番弟子と幻のバナナ~

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第45話 闇の中に溺れよ

「えっ……?」


 オデットの口から小さな声が漏れる。

 その戸惑いの表情は、剣が折れたことが彼女にとってもまったくの予想外だったことがわかる。


 剣で刺された木の根にはダメージが入り、その動きを止めることができたが、依然として他の無数の根が動き回っている。

 木の根のすべてを操っている本体の動きを止めることには、失敗したようだ……。


(剣を刺す箇所を間違えた? いや、刺し方、力加減を間違えた? ツボを見極める集中直が足りていなかった? 木の根が想像より硬かった? それとも……私の体が衰えている……?)


 目の前の現実を理解しようと、オデットの脳が高速で回転する。

 しかしその間、体は凍り付いたように動かなくなっていた。


「オデットさんっ!!」


 シャロが体当たりを食らわし、オデットを地面に押し倒す。

 その直後、さっきまでオデットの頭があったところを、鋭い木の根の先端が通り過ぎる。

 間一髪で頭を貫かれるところだったのだ。


「しっかりしてください、オデットさん……!」


「あ、ああ……すまない」


 シャロの叫びで、わずかに正気を取り戻したオデット。

 折れた剣を捨て、自らの鋭い爪で襲い掛かる木の根を切り裂いていく。


 猫の獣人らしく、素の身体能力も人間より優れているが、今のオデットの動きはどこか精彩を欠く。

 それを本人も自覚し始めていた。


「ガルー、こちらは一時撤退させてもらう……!」


「ああ、その方がいい。ここら一帯の木の根は、我々で片付けておく!」


「本当に申し訳ない……」


 オデットは左肩にシャロを担ぎ上げ、木々の間を縫うようにジャングルを走り抜けていく。

 不調とはいえ、その動きは木の根が捉えることができないスピードだ。


「よし、オデットたちは十分離れたな……。セフィラ、少々本気を出すとしよう」


「はい! でも、後ろの荷車は巻き込んじゃ駄目ですよ!」


「無論だ」


 セフィラは地上のムニャーを手招きする。


「ムニャー、背中の上においで!」


「ム、ムニャー!」


 ムニャーがぴょんとガルーの背中に飛び乗り、四本の足でガッチリ背中を掴む。


城塞(フォート)の範囲を縮小!」


 ガルー以上の高さがあった光の壁が、セフィラとムニャーだけを守れるサイズに縮む。

 これで準備は整った。


「闇の中に溺れよ――ワオオオォォォーーーーーーッ!」


 咆哮と同時に、ガルーの口からすさまじい量の闇の息吹が吐き出される。

 先ほどまでの勢いとは、まるで別次元だ。


 周囲は闇に染まり、木の根だけでなく純粋な樹木や植物も多少は巻き込んでしまう。

 さらに木の根が飛び出してきた大地の亀裂の中にも闇は入り込み、浸透していく……。


「……ふん、これでしばらくは出てこれんだろう」


 闇の息吹を吐き終わったガルー。

 周囲に残った闇も、数秒後には霧散(むさん)した。


 すでに周囲に動く木の根は存在しない。

 セフィラは聖なる要塞(ホーリー・フォート)を解除する。


「ありがとうございます、ガルー。なかなか厄介な敵でしたね……」


「そこまで戦闘能力があるわけでもないが、ああ数が多いとな。こちらもスマートな解決策を選んではいられなかった」


 闇の力でガルーの周囲は不毛の大地になってしまった。


 しかし、これは一時的なもので、この原生林の自然の力を持ってすれば、数日で草木が復活していてもおかしくはない。

 なんといっても、未知のモンスターが生まれるほどの力を宿した場所なのだから。


「木の根の本体を倒さないことには、これの繰り返しだ」


「セオリー的には、モンスターが守りたい物――つまりバナンバ原種の近くに、本体がいるはずですが……」


 攻撃のごとく花粉を飛ばすバナナの花があるのも、バナンバ原種が唯一生存できるこの原生林を外敵から守るため――そのようなことをオデットは言っていた。


 ならば、この原生林に生まれたモンスターの考えも、似たようなものだろう。

 守りたいバナンバ原種の近くで待ち構えているはずだ。


「ムニャ、ムニャー……」


 ムニャーが心配そうな声で鳴く。

 オデットたちのことを気にしているのだと、セフィラは思った。


「確かにオデコさんの様子は少しおかしかったです……。でも、それでもオデコさんはオデコさんです! 勇者様の一番弟子で、最強の弟子! そんなに心配はいりません!」


「ああ、調子が悪いなら、悪いなりに戦える。オデットはそういう戦士だ。シャロも自分の能力をわきまえている。足を引っ張るような行動はしないだろう」


 セフィラとガルーの言葉を聞いて、ムニャーはひとまず安心したようだ。

 ガルーの背中から降りて、次の行動を待つ。


「……とはいえ、戦力を分散させて良いことはない。オデットたちとの合流を目指すのが無難だろう」


「私もそう思います!」


「ムニャ~!」


 分断された仲間を置いて進まなければならないほど、時間に追われているわけではない。

 ガルーは花粉が舞う中でも、嗅ぎなれたオデットの匂いはわかる。


「引き続き足元を警戒しながら進むぞ、ムニャーよ。それとあまり我から離れるな」


「ムニャッ!」


 匂いをたどって、戦場を離脱したオデットたちを追う。

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