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元・神獣の世話係 ~神獣さえいればいいと解雇されたけど、心優しいもふもふ神獣は私についてくるようです!~  作者: 草乃葉オウル ◆ 書籍発売中
バナンバタウン ~勇者の一番弟子と幻のバナナ~

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第44話 ソルジャー・バナナ

 ――ということで、オデットが木にぶら下がっているソルジャー種バナナの房をもぎ取る。

 シャロだけでなくセフィラとガルー、ムニャーにも一本ずつバナナが配られる。


「皮は思ったより柔らかな手触りですね」


 シャロはそう言い、バナナ全体を五感を使って観察する。


 ソルジャー種というお堅い名前ではあるが、皮自体は薄く、押せば中の実の感触が伝わってくる。

 念のためにガルーが自慢の鼻で毒性がないかをチェックした後、みんなで食べる。


「……おおっ! あっさり風味ですね! 風味はちゃんとバナナなんですけど、バナナ特有の濃厚かつねっちょりとした部分が抑えられていて、何本でもパクパク食べられそうです!」


 その言葉通り、セフィラはパクパクとバナナを食べ切る。

 みんなもソルジャー種バナナの口当たりの良さに感心する。


「あの濃厚さがバナナの魅力ではあるんですけど、疲れている時とか急いでいる時は、ソルジャー種のバナナの方が的確な栄養補給手段になるかもしれませんね。とっても食べやすいですから」


 シャロの言葉にみんなうなずく。

 ムニャーに至ってはソルジャー種の皮が薄いのをいいことに、バナナを皮ごと丸かじりしている。


「ふむ、確かに我々にはこんな薄い皮をわざわざむく必要はなさそうだな」


 ガルーもムニャーを真似して、バナナを皮ごとパクリと一口で食べる。

 そうして、あっという間にオデットがもぎ取った一房分のバナナがなくなった。


「ふぅ……なかなか新鮮な味わいでした。危ない場所ではありますが、食べてみて良かったです!」


 シャロが笑顔で言う。

 危ない場所と言っても、今のところ危険には遭遇していない。

 怯えや緊張も、美味しいバナナを食べたことで薄れてきた。


 そんな時こそ、脅威は訪れる――。

 ゴゴゴゴゴ……という轟音と共に、地面が激しく震え出したのだ。


「地震……いや、攻撃ですっ!」


 セフィラは素早くガルーの背に乗り、地面から距離を取る。


 次の瞬間には、うねうねと動く木の根が、大地を割って姿を現す。

 目などついていない木の根だが、すぐにセフィラたちの位置を把握し、先端を突き刺すような勢いで伸ばしてくる!


「こやつら相手には……闇の力を使うぞ、セフィラ!」


「はい!」


 冥府の番犬ガルムが持つ闇の力――。

 ガルーは黒い魔力の息吹を、周囲の木の根に浴びせかける。


闇の息吹(ダーク・ブレス)!」


 セフィラが勝手につけた技名を叫ぶ。

 黒い息吹に触れた木の根は、次々に枯れてやせ細り、やがて塵と化す。


 だが、いくらでも地面から伸びてくる木の根は、黒い息吹をかき消しかねない勢いだ。


「むぅ……このままではキリがない! だが、あまり威力を上げ過ぎると、セフィラたちや原生林の環境を破壊しかねない……!」


 聖なる力に比べて、あまり使わない闇の力……。

 純粋な破壊力だけなら圧倒的に闇の力が勝るが、傷つける対象には見境がない。

 周囲に味方がいる状況では、本気は出し切れないのだ。


 そうしている間にも、背後から新たな木の根がセフィラに迫る。


聖なる城塞(ホーリー・フォート)!」


 セフィラの額に神獣紋が表れると同時に、ガルーの周囲に分厚い光の壁が出現する。

 木の根程度の強度では、この壁を貫くことはできない。


「とはいえ、聖なる力は自然の生命力をベースとした植物系モンスターの討伐には、あまり有効ではありません! 邪悪な魔力で動いているアンデット系相手には超有効でしたけど……!」


 ガルーが攻め、セフィラが守る。

 二人にとって最も優れた役割分担ができてはいるが、木の根は無限かと思うほど現れる。


「ム、ムニャ……」


 いきなり始まった戦闘に、ムニャーは驚いてガルーの近くから動けない。

 しかし、理由はどうあれ、この場合は動かないのが正解だ。


「この木の根……同一の個体から伸びてきた物だね。内部を流れている魔力の質がどれも同じだ」


 龍髭剣(りゅうぜんけん)を木の根に突き刺し、剣から伝わる振動で敵の情報を読み取るオデット。

 その横にはシャロが縮こまっている。


「木の根が本体とつながっているのなら、木の根のツボを突くことで全体の動きを止められる!」


「木の根にツボなどあるのか?」


 ガルーの問いに、オデットは自信をもってうなずく。


「モンスターだって、生き物だから」


 オデットの瞳孔が、猫の目のようにギュッと鋭く狭くなる。

 木の根の動き、魔力の流れ、視覚を中心にあらゆる感覚を使ってツボを見抜く。


「……そこっ!」


 オデットの鋭い刺突により、剣の先端が木の根に深く突き刺さる。

 バキンッ――次の瞬間、オデットの剣は真ん中からポッキリと折れた。


 予想外の展開に、全員が驚く。

 それはオデット本人も例外ではなかった……。

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