第39話 パーティ結成
カリッ――――!!
一度噛めば気持ちの良い音、そして深い甘みが口の中に広がる。
その快感は噛めば噛むほど、その存在感を増していく……!
あふれ出る唾液と混ざり合ったバナナチップスから、バナナの成分が溶け出しているのだ。
それは旨味だけでなく、ある景色をセフィラたちに想起させる。
(動物、植物、生命であふれたジャングル……!?)
熱気まで感じそうなジャングルの姿が脳内を駆け巡り、バナナチップスを飲み込むと共に消えていった。
時間にして数秒ほどの奇妙な体験の後、セフィラは恐る恐る口を開いた。
「一切れのバナナチップスから、自然のエネルギーを感じました……! お通しでこれほどの物を提供できるなんて……原種じゃなくてもバナンバのバナナはすごいんですね!」
「あ、すまんすまん。実は今食べてもらったそれ、バナンバ原種のバナナチップスやねん」
「ほほぉ、これがバナンバ原種の味……ええっ!?」
これにはバナナチップスを食べた全員が驚く。
難しい話はわからないムニャーすらも、なんとなく意図を察して驚いている。
そして、驚きと同時に湧き上がってくるのは無数の疑問――。
それを察しているラカタンは、つらつらと説明を始める。
「ギルドでは緊急事態に備えて、バナンバ原種のバナナを乾燥――つまりバナナチップスにして保存しててな。量は少ないとはいえ、数枚食べれば数か月は花粉もへっちゃらになるはずや」
「そんな貴重な物資を、私たちが食べて良かったんですか?」
セフィラが尋ねると、ラカタンは「当然!」と胸を張って返した。
「今がまさにバナンバ原種が手に入らない緊急事態やし、その問題を解決しに行くあんたらがバナナチップスを食べても、だーれも文句は言えんわな! プラタノ原生林は街よりさらに花粉の濃度が濃いやろうし、体にどんな反応が起こるかわからへん。できる対策はやっとくのが正解や!」
そう言ってラカタンはテーブルを囲むセフィラたち、床に座っているガルーとムニャーの顔も見渡す。
(なるほど、ラカタンさんが私たちに黙ってバナンバ原種を食べさせた意味がわかりました!)
セフィラは閃く――ラカタンの謎の行動の意図を。
バナンバ原種だと事前に知らせてしまえば、オデットが自分以外をプラタノ原生林に向かわせないために、バナナチップスを独占してしまう可能性がある。
しかし、こうして貴重な物資を全員で食べてしまった以上、セフィラたちを置いていくよりは、連れて行った方が合理的になる。
「私たちも貴重なバナナチップスを食べてしまいましたねぇ……オデコさん」
セフィラがわざとらしくオデットに語りかける。
オデットもラカタンの意図を察しているので、少しばかり不満げに頬を膨らませた。
「別にバナナチップスを独り占めしてまで、みんなを置いていこう……なんて考えないよ」
「本当ですか?」
「本当か?」
セフィラとガルーから同時に疑いの声が上がる。
二人の脳裏に浮かび上がるのは、戦争中に行われたオデットによる数々の無茶――。
独断専行はお手の物、単独で敵陣に突撃するのは日常だった。
それが見逃されていたのは、強さゆえに無茶な行動でも戦局を有利にしてしまうからにすぎない。
「い、いやいや……! 昔と比べたら私も落ち着いてるから! 昼間は変な意地張っちゃったなって思ってたし、ここにはセフィラたちと一緒に仕事をするって伝えるために来てるから!」
「その仕事っていうのは、バナンバ原種のバナナを手に入れるために、プラタノ原生林のモンスターを倒す仕事……でいいんですよね?」
念を押すようにセフィラが言う。
オデットは何度も首を縦に振った。
嘘偽りない肯定の証だ。
「これで久しぶりにオデコさんと一緒に戦えますね! 戦うこと自体は好きじゃないですけど、やっぱり懐かしさというか、感慨深さはあります」
「私も別に戦いは好きじゃないよ。ただ、人よりちょっと強いから、戦えない人の代わりをやってる……みたいなもんさ。まあ、セフィラとガルーがいてくれたら、戦力としては申し分ないし、特にガルーはバナナをたくさん運べそうでありがたいかも!」
「ふんっ、我は荷車を引っ張る馬ではないぞ。……まあ、どんなに重い荷物も運べることは否定せん。我も力ある者として、人々のためにできることをするとしよう」
かつての戦友たちが語り合う中、自分の存在をアピールするためにシャロが手を上げる。
「あの~……私、戦力としてはなんの役にも立たないんですけど、貴重なバナナチップスを食べてしまいました……」
申し訳なさそうにしているシャロに対して、ラカタンはあっけらかんと言う。
「あんたもセフィラたちと一緒に行くんやで。これからも一緒に旅を続けるつもりなら、危険をくぐり抜ける練習もしとかんとな!」
「そ、それはそうですけど……! セフィラ様の足手まといになりそうで……。あ、ムニャーはどうするの?」
そうムニャーに語りかけるシャロ。
しかし、ムニャーの答えはすでに出ていた。
「ムニャ~!」
勇ましくしっぽを立て、自分も戦力の一人だとアピールするようにテーブルに前脚を乗せた。
ガルーに憧れるムニャーにとって、戦いを前にお留守番などありえないのだ!
「……私も行きますとも! 戦えないなりの身の振る舞い方を学びます!」
シャロは拳を突き上げる。
これから先、どんな危険な場所を旅することになろうとも、セフィラと一緒にいたいという気持ちは、確かにシャロの中にある。
そのためには、自分を鍛える必要があるだろう。
「これでメンバーは確定やな! それじゃあ、料理を食べながら本題の話――判明しているプラタノ原生林の現状を話していこうやないか」
ラカタンが本題を切り出す。
同時にセフィラ、ガルー、シャロ、ムニャー、そしてオデットの五人パーティが結成された――!




