#08
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「趣向ってなんでしょう?」
大ホールでの挨拶のあと、個室に案内された私は、すぐにゼノンの部屋に行き、さきほどの話について尋ねてみた。
「さあ、なんでしょうね」
部屋に入ると同時に、隠しカメラと盗聴器をごく自然に破壊したゼノンは残骸を床に転がし、肩をすくめた。
「演出が好きな人みたいだから、なにかやるんじゃないですか」
「なにかやるって……つまり、事件につながるようななにかってことですか?」
「いや、それはないんじゃないかなぁ。あくまで祝賀会の余興みたいなニュアンスでしたし。それにそこでなにか起きれば、さすがに騒ぎが大きくなるでしょうから、可能性は低いでしょう」
「ふうむ」
「まあ、そう急いで結論を出さなくてもいい話だと思いますよ。どうせ、明日になればわかることだし」
「まあ、それはそうですけど……」
ゼノンがそういうのなら、気にする必要はないのだろう。だが、スピーダ卿のあの笑みは、なかなか忘れられそうになかった。
「ところで、クリノさん」
「はい?」
「いま、当たり前のように、カメラと盗聴器を壊してましたけど、大丈夫なんですか?」
床に転がった残骸を指差すと、ゼノンが首をかしげた。
「大丈夫とは?」
「そんなことして怒られないんですか?」
「ああ、それなら大丈夫。隠して設置している以上、むこうも表立って注意できませんから」
「はあ……」
そういうものだろうか。
いや、そもそも、それって器物損壊では?
私が微妙な顔をしていると、ゼノンがニヤリと笑って言った。
「ま、大事の前の小事ですから。どこか一箇所くらいは自由に話せる場所がほしいですしね」
「うーん」
仕方がない……私は黙認することにした。
さすがは未来探偵だ。
ああ、胃が痛い。




