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未来探偵ゼノンと七つの事件  作者: 八海宵一
「05 スピーダの猟犬」
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#07

 森を抜け、草原をしばらく走ると、二つの建物が見えてきた。

 一つはガラス張りの巨大な四角錘(ピラミッド)で、もう一つはヨーロッパ建築を思わせる巨大な石造りの洋館だった。二つの建物は隣接し、その周囲には硬化ガラス柵が張り巡らされ、外界と明確な線引きがされていた。遠目からでも、そこが聖域であるとわかる場所――それがスピーダ生命科学研究所と、所長のモーリス・スピーダが住む屋敷のある場所だった。

 ソーラーモービルが野生区域の境界線を越え、屋敷前の広場に停車すると、私たちは待ち構えていたバトラーたちに案内された。豪華な調度品のならぶ正面玄関ロビーを通り、そして、そのまま2階の大ホールへと連れて行かれた。

「みなさん、ようこそムー大陸へ」

 すでにセレモニー会場として設えられていた大ホールの中央に立った男が、わざとらしい仕草で両手を広げ、低い穏やかな声で私たちを出迎えた。

 銀髪をオールバックにし、神経質そうな鋭い目を細め、まるでごまかすかのように目じりに深い笑い皺を作り、微笑んでいる。

「私がこの屋敷の主人、モーリス・スピーダです。どうぞ、よろしく」

 親愛の情をあらわすように彼は一人ひとりと挨拶をし、それから握手を交わした。特にリム・ヨン・スーには興味があるらしく、「あなたがスー博士ですか!」とひときわ大きな声を出して喜んでいた。

なんだか、すべてが大げさでわざとらしい。

 スピーダ卿は一通り挨拶をすませると、また両手を広げた。

「みなさん、長旅さぞお疲れになったことでしょう。まずは部屋に荷物を置いて、おくつろぎください。授賞式は明日ですが、前夜祭として、ささやかな食事会をご用意しております。ざっくばらんに雑談し、碩学のみなさんと交友を深めることができればと思っておりますので、どうぞ19時にまた、ここにお集まりください」

 そう言うと、モーリス・スピーダはさっと目配せをし、控えていたバトラーたちを動かした。荷物を持っていたバトラーたちは再び私たちの前に立ち、なにごともなかったかのように案内を再開し、歩き始める。と、そのとき、スピーダが思い出したように言った。

「ああ、そうだ。大陸を見学したい方がいらっしゃるかもしれませんが、それはどうか明日までお待ちください。ちょっとした趣向を考えておりますので」

 目じりの皺をさらに深く刻み、そして、彼は楽しそうに笑った。

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