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未来探偵ゼノンと七つの事件  作者: 八海宵一
「05 スピーダの猟犬」
45/47

#06

     *


 先入観というのは、恐ろしい。

 私はこれまでの話から、勝手にムー大陸を暗雲渦巻く、おどろおどろしい大陸だと思いこんでいた。しかし、実際はその逆で、穏やかな日差しと心地よい風の吹く、楽園のような場所だった。多種多様な植物が生い茂る自然部分と、先端技術の組みこまれた人工部分が複雑に融合したこの場所は、まさにムー大陸と呼ぶにふさわしい眺望だった。

 港に着いた私たちは船から下りると一旦、天井の高いガラス張りのターミナルに集められ、係員の指示で、ソーラーモービルに乗せられた。

 文字通り太陽光で動く小型のソーラーモービルは、あらかじめ運転ルートをプログラミングされているらしく、係員が数人のゲストを乗せドアを閉めると、自動で動き出し、金属的な光沢を放つ舗装道路の上をすべるように走り出した。

 港を出て、少しだけ海辺を走行すると、連なった数台のソーラーモービルは、すぐに森へと進路を取り、減速をはじめた。ネオ・サファリパークよろしく、森を案内しているつもりなのだろう。見晴らしのいい場所まで来ると、モービルは最徐行で移動した。

 正直、これは贅沢な演出だった。

 トキが空を飛び交い、ドードー鳥が目の前を駆けていくのだから。

 私たちはその光景に、おかれた状況を忘れ、息をのんだ。

 そして、同乗していたほかのゲストたちが、口々に「そんなバカな」とつぶやきだした。

「なにをそんなに驚いているんですか? トーテカ教授」

 すでに客船で仲良くなっていたゼノンが尋ねると、トーテカと呼ばれた白髪長身の男性は、目を見開いて答えた。

「ここにいる生物は、すべて絶滅したはずの生物なんだ、ゼノンくん。つまり、なんらかの方法で複製した生物ということになる。これは、これは、すごいことだ!」

「なるほど。でも教授、ムー大陸って、そういう場所じゃないんですか?」

「たしかに、それは、そうなんだが、しかし、これは予想をはるかに上回っている」

「と、いいますと?」

「通常、絶滅した生物の複製は研究室など限られた区域で、限定的に行われるものなんだ。自然界に予想外の影響がでないよう配慮しなければならないからね。だから、絶滅した生物同士で新たな生態系を作り出しているところなんて、ほかでは、まず見ることができないんだよ。おお、見たまえ、あのリョコウバトの群れを!」

 トーテカ教授は興奮したようすで、はばたくハトの一群を指さした。そして、その一群のむこうに、大きな翼を広げた怪鳥が単独で滑空しているのが見えた。あれは、教科書で習ったことがある。そう、確か――、

 始祖鳥だ。

 ジュラ紀に生息したといわれる最古の鳥類。

 それがいま、我々の上空を飛んでいった。

 メチャクチャである。

 だが、そのメチャクチャな光景に、ソーラーモービルの乗客はしばらく息をするのも忘れ、見入っていた。

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