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未来探偵ゼノンと七つの事件  作者: 八海宵一
「04 分子分解銃(通称、ピコピコ銃)の謎
39/47

#12

     *


「いやー。助かりましたよ、シュナイダーさん」

 事件の後処理をボッシュに任せた私たちは、にぎやかな沿道を駅に向かって歩いているところだった。人の多い沿道を歩くのは大変だったが、ゼノンはスイスイと縫うように人をかわし、出店を冷やかしている。

「あのまま、ボッシュ警部補に捜査されてたら、完全に無実の罪で捕まってましたよ」

「いや、まあ……」

 私は曖昧に返事をした。同じ警察として、それを認めるわけにはいかないが、ボッシュならまず間違いなく、ゼノンを逮捕していただろう。

 ふつう銃が犯人だなんて、誰も思わない。

 私は、自分がボッシュのように駆けつけていたら、どうしていただろうと考え、首を振った。やはり、ボッシュと同じようなことをしたはずだ。

「どうかしましたか、シュナイダーさん? なんだか浮かない顔ですね?」

 宇宙リンゴ飴を舐めながら、ゼノンがこちらにやって来た。友人が亡くなったというのに、ペロペロと楽しそうだ。

「あ、わかった。昼ごはん食べ損なったから、おなかが空いてるんですね。いいですよ、ぼく、おごりますよ。なんでも好きなもの言ってください。ご馳走しますから」

 はしゃぐゼノンに違和感をおぼえ、私は口を開いた。

「友人がなくなったというのに、随分、楽しそうですね」

「楽しそう? このぼくが?」

 リンゴ飴を舐める手を止め、ゼノンが頭をふった。

「とんでもない。ぼくは今、友人の死に直面し、とても悲しんでいるところです」

「いや、その割には、とても楽しそうに、リンゴ飴舐めてるじゃないですか」

 私が指さすと、ゼノンは肩をすくめて答えた。

「まあ、それはそれ、これはこれですよ」

 なんじゃそら。

 呆れていると、ゼノンが説明をつけ加えた。

「悲しい、悲しいといったところで、デュークは返ってきませんからね。そういう感情は、胸の内にしまっておけばいいんですよ」

「はあ」

 そんなものだろうか。人の生死に対して、ここまで冷静であるべきだろうか。

「人の死に対して、随分とドライですね」

「そうかな……そうかもしれない。宇宙航海士時代に、たくさんの人の死を見てしまったから、おかしくなっているのかもしれない」

 珍しくゼノンが素直にうなずいた。そして、リンゴ飴をふたたび舐めはじめ、私に尋ねてきた。

「ねえ、シュナイダーさん、ぼくが死んだら、悲しんでくれますか?」

「当たり前じゃないですか」

「そうか、それはうれしいな」

 ゼノンは、心の底からうれしそうに笑った。

「じゃあ、君が死んだら、ぼくも悲しんであげますよ。墓前にネバネバ納豆サンドもお供えします」

 お供えに、ネバネバ納豆サンド……。

 想像した私は思わず、首をぶんぶんと振った。

「クリノさん、それだけは絶対にやめてください!」

「どうして?」

「決まってるでしょう……嫌な事件を思い出すからですよ」

 私は振りむき、ボッシュのいる港の未来ヨーコ・ヨコハマホテルを見て言った。

「お供えするなら、星雲わた菓子にしてください」


     *


【追記】

 翌日、「未来ヨーコ・ヨコハマ大博覧会」は予定通り開催されたが、「自立思考型電脳回路シロノス」と「分子分解銃」の展示は急遽、中止された。

<了>

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