#11
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「どういうことですか?」
展開についていけない私が尋ねると、ゼノンはこともなげに言った。
「イベントで抹殺すると騒ぎは大きくなりますが、すぐに銃の暴発だということがわかってしまう。だけど、これが二人っきりの部屋だったらどうです? 部屋に残った人間を疑いませんか?」
「なるほど」
トリガーログがない以上、そうなるだろう。いや、実際、そうなっていたわけだし……。
「シロノスは、デュークを殺害するだけでなく、ぼくに罪を着せようとしたんです。そうすれば、自分の存在も隠しておくことができる」
なんて銃だ。
私が心の底から戦慄していると、シロノスが抗議した。
「それは違う。アタシは自分の存在なんてどうでもよかった。ただ、アンタを刑務所に入れてやろうと思っただけよ」
「どうして、ぼくが刑務所に入らなきゃならないんだ?」
「危険だからよ。アタシの事前予測だと、アンタも世の中のためにならないわ」
預言者シロノスは言った。
「パイソンを殺害し、アンタに罪をなすりつけることができれば一石二鳥。だから、展示会場じゃなく、この部屋でパイソンを殺害したのよ。トリガーログの説明つかなくても、いまの警察ならアンタを犯人にしてくれたでしょうからね」
「君は引き金が引かれた瞬間に、そこまで考えたのか?」
「当然でしょう。アタシの演算処理能力を甘く見ないでよね」
シロノスが自信満々に言った。
さすがは最先端自立思考型電脳回路だ。凄すぎてため息がでる。ふう。
嘆息する私を横目に、ゼノンが言った。
「最後に一つ教えてくれないか、君はどうやって、自殺防止装置を無視したんだ?」
「無視なんてしてないわ。自殺防止装置はちゃんと作動させたわよ」
「じゃあ、どうして光線が発射されたんだ?」
「決まってるでしょう。アイツが引き金を引き、自殺防止装置が働いたあと、アタシがアタシの意思で光線を発射したからよ」
シロノスが、自分の意思で光線を発射した場合、トリガーログに記録は残らない。トリガーログは、あくまで誰かが引き金を引き、なにかを撃った際、残される記録だからだ。そして、当然、他殺に自殺防止装置は反応しない。
シロノスは引き金に指がかかったそのわずかな瞬間に起動し、判断予想し、行動を起こしたのだった。
私はあらためて、シロノスの性能に戦慄した。
「なんて、恐ろしい銃なんだ……」
するとゼノンが、大きく頭をふった。
「シュナイダーさん、これはもう銃じゃない。ただの殺戮ロボットですよ。一応、指揮系統はすべてカットした配線になってますが、油断しないほうがいい。銃の前に立つと撃たれかねませんよ」
その言葉に私は慌て、大急ぎでシロノスをピコピコ銃のグリップから引っこ抜いた。
指先に収まるくらいの小さな銀色の立方体。それはまるで生きているみたいに発熱し、温かかった。
いま、シロノスはこの小さな箱のなかでなにを考えているだろう。
箱のなかに住むミミック。恐ろしく頭のいい悪魔。だが、彼が世間にその考えを示すことは二度となかった。
こうして、ピコピコ銃の謎は解明された。




