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未来探偵ゼノンと七つの事件  作者: 八海宵一
「04 分子分解銃(通称、ピコピコ銃)の謎
38/47

#11

     *


「どういうことですか?」

 展開についていけない私が尋ねると、ゼノンはこともなげに言った。

「イベントで抹殺すると騒ぎは大きくなりますが、すぐに銃の暴発だということがわかってしまう。だけど、これが二人っきりの部屋だったらどうです? 部屋に残った人間を疑いませんか?」

「なるほど」

 トリガーログがない以上、そうなるだろう。いや、実際、そうなっていたわけだし……。

「シロノスは、デュークを殺害するだけでなく、ぼくに罪を着せようとしたんです。そうすれば、自分の存在も隠しておくことができる」

 なんて銃だ。

 私が心の底から戦慄していると、シロノスが抗議した。

「それは違う。アタシは自分の存在なんてどうでもよかった。ただ、アンタを刑務所に入れてやろうと思っただけよ」

「どうして、ぼくが刑務所に入らなきゃならないんだ?」

「危険だからよ。アタシの事前予測だと、アンタも世の中のためにならないわ」

 預言者シロノスは言った。

「パイソンを殺害し、アンタに罪をなすりつけることができれば一石二鳥。だから、展示会場じゃなく、この部屋でパイソンを殺害したのよ。トリガーログの説明つかなくても、いまの警察ならアンタを犯人にしてくれたでしょうからね」

「君は引き金が引かれた瞬間に、そこまで考えたのか?」

「当然でしょう。アタシの演算処理能力を甘く見ないでよね」

 シロノスが自信満々に言った。

 さすがは最先端自立思考型電脳回路だ。凄すぎてため息がでる。ふう。

 嘆息する私を横目に、ゼノンが言った。

「最後に一つ教えてくれないか、君はどうやって、自殺防止装置を無視したんだ?」

「無視なんてしてないわ。自殺防止装置はちゃんと作動させたわよ」

「じゃあ、どうして光線が発射されたんだ?」

「決まってるでしょう。アイツが引き金を引き、自殺防止装置が働いたあと、アタシがアタシの意思で光線を発射したからよ」

 シロノスが、自分の意思で光線を発射した場合、トリガーログに記録は残らない。トリガーログは、あくまで誰かが引き金を引き、なにかを撃った際、残される記録だからだ。そして、当然、他殺に自殺防止装置は反応しない。

 シロノスは引き金に指がかかったそのわずかな瞬間に起動し、判断予想し、行動を起こしたのだった。

 私はあらためて、シロノスの性能に戦慄した。

「なんて、恐ろしい銃なんだ……」

 するとゼノンが、大きく頭をふった。

「シュナイダーさん、これはもう銃じゃない。ただの殺戮ロボットですよ。一応、指揮系統はすべてカットした配線になってますが、油断しないほうがいい。銃の前に立つと撃たれかねませんよ」

 その言葉に私は慌て、大急ぎでシロノスをピコピコ銃のグリップから引っこ抜いた。

 指先に収まるくらいの小さな銀色の立方体。それはまるで生きているみたいに発熱し、温かかった。

 いま、シロノスはこの小さな箱のなかでなにを考えているだろう。

 箱のなかに住むミミック。恐ろしく頭のいい悪魔。だが、彼が世間にその考えを示すことは二度となかった。

 こうして、ピコピコ銃の謎は解明された。

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