#08
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「グリップのその部分を開けると、小さな端子が見えるでしょう? そこに鑑識ロボットから引っ張ってきた赤色のマルチ変換端子をつないでください。あ、それじゃなくて、もう一つのやつです。そう、それそれ……」
私はゼノンに言われるがまま、証拠品であるピコピコ銃の内部を開け、鑑識ロボットの音声デバイスに「シロノス」を接続しようと試みていた。正直、ゼノンにしてもらいたいところだが、ゼノンが証拠品に触れることをボッシュが許さなかったため仕方なく、私が代わりに作業することとなった(ボッシュは私以上に、機械音痴なのだ)。
私は鑑識ロボットの頭にちょんまげよろしくピコピコ銃をセットし、ゼノンの指示に従っていくつかの装置を接続した。
「えーと、あともう一つ。それも繋いでください、シュナイダーさん。そうしたら、出力、入力とも設定が安定するはずです」
さすがは元宇宙航海士。機械類に強く、非常に詳しい。手近にあるものだけで、接続が完了してしまった。
ふう。
一息つくと、まるでそれが合図であるかのように、鑑識ロボットから声が聞こえた。
「ちょっと、アンタ! なによ、もう! 不器用な手ね。音声デバイス繋ぐのに、何時間かかってんのよ!」
なぜかオネエ言葉のピコピコ銃に私は面食らった。
「それになに? デバイス繋ぐ前に“もしもーし”って。アンタ、バカじゃないの? 答えられるわけないでしょっ! ちょっとは考えて行動しなさいよ!」
すさまじい毒舌に返す言葉が見つからない。
オロオロしていると、ゼノンが横から割りこんできてくれた。
「君がシロノスだね」
「その通りよ、ゼノン・クリノ。アタシが正真正銘、自立思考型電脳回路シロノスUP01だけど、それがなに?」
「君に聞きたいことがある」
「あん?」
電脳回路とは思えない返事だ。一体、どういう設定がされているのだろう。それとも、なにか繋ぎまちがえたのだろうか。
接続したばかりの配線をまじまじと眺めていると、シロノスがドスの聞いた声で言ってきた。
「別にデバイスへの接続がおかしくて、こうなってるんじゃないわよ。アタシはね。もともと、こういう人格なんです。なによ、なんか文句あんの?」
「い、いえ。べつに」
どうやら銃のセンサー機能を利用して、我々の動きを把握しているらしい。
私はピコピコ銃から少し離れ、あとの質問をゼノンに託した。
肩をすくめたゼノンは、私とボッシュの顔を順番に見、それから質問を再開した。
「君が複雑な思考回路を有し、人格を形成しているのなら話は早い。なぜデュークに向けてピコピコ光線が発射されたのか、それを説明してくれないか」
高性能電脳回路はその質問にしばらく沈黙し、そして、静かに回答した。
「世界平和のためよ」
「世界平和? それは一体、どういう意味だい?」
「あんなヤツ、いないほうが世の中、丸く収まるって意味よ」
「つまり、君はデュークがいなくなってくれたほうが世の中のためだから、彼に向けて光線を発射したっていうのかい?」
「そうよ」
自立思考型電脳回路シロノスは、はっきりと答えた。




