#03
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「遅い! 遅いですよ。シュナイダーさん!」
部屋に到着するなり、私はゼノンに怒られた。ネバネバ納豆サンドをあきらめてきたというのにあんまりだ。しかも、そんな私をあざ笑うかのように、目の前のチタン製デザインテーブルのうえには、食べかけの“ネバネバ納豆サンド・デミタマDX”が放置されていた。
私はよだれを飲みこみ、とりあえず状況を把握するため、部屋を見回した。
広い応接スペースの高級ソファにふんぞり返ったゼノンが、不満そうに口を尖らせているのが見える。その隣には、同僚であるボッシュ警部補が、なぜか眉間にシワをよせ、仁王立ちしており、さらにその隣では、首から先のない死体が絨毯のうえに転がっていた。さらにさらにその隣では、数台の鑑識ロボットがピコピコと任務を全うしている。
ほかに気になるところといえば、一部黒焦げになっている壁と、DXサンドの横に置かれている穴の開いた宇宙鋼板ぐらいだろう。
えーと……。
しばらく考えてみたが、わけがわからなかった。
「説明してもらえませんか?」
私が言うと、ボッシュ警部補が野太い声で答えた。
「コイツがピコピコ銃をぶっ放して、人を殺した。それだけだ」
「ちーがーう! 見当違いもいいとこだ! なんで、こんなヤツがまだ警察にいるんですかね!」
私は二人のやりとりを見て思い出した。そう、彼らはとても仲が悪いのだ。
何年か前、ゼノンに捜査協力を頼んだボッシュはゼノンの助言のせいでうっかり、北半球を消滅させそうになったことがあり、それが原因で犬猿の仲になったのだと聞いている。まあ、確かにその一件のせいで彼の出世の夢は絶たれたので、嫌うのもわからなくはないのだが……。ふだんから、なんだかんだと難癖をつけては、ゼノンを逮捕しようとする彼の態度には正直、危険なものを感じていた。
私は二人の間に割って入った。
「すいませんが、順を追って話してもらえますか?」
「ああ、シュナイダーさん、助かりました。そうやって、冷静に話を聞いてくれる人こそ、ぼくの求めていたものですよ。早くこの単細胞ゴリラをどっかにやってください」
「クリノさん」
私はあえて言葉を区切り、冷たい口調で言った。
「ゴリラは単細胞生物せはなく、多細胞生物です」
もちろん、そんなことはここにいる全員がわかっている。私は遠まわしにボッシュの悪口を非難したのだ。
しばらく、ゼノンは口を尖らせすねていたが、小さくうなずくと事の経緯を話し始めた。




