#09
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その言葉に目からうろこが落ちた。
たしかにゼノンの言うとおり、ユペルたちを現行の刑法で裁くわけにはいかないことに気づいたからだ。彼らは人造生命体であり、自然発生の生命体とは違う。もちろん、一つの生命としての尊厳は有しているが、だからといって、人間の法律や制度をそのまま適応するわけにはいかない。彼らは限りなく人間に似ていても、人間ではないのだ。
人間とはなにか。実に深淵な問題だが、今のところはそういう線引きがなされている。
ここに来て、ようやく悪魔上司こと、マクレガー警部が唸り声をあげた意味がわかった。
なんてことだ。
目の前のどちらかがアネイル・ショット博士を殺害したことは間違いないのに、現行の法律では犯人を逮捕することができない。
じゃあ、私はなにをすればいい?
困惑していると、ユペルたちが口を開いた。
「じゃあ、ぼくたちはどうなるんだ?!」
「じゃあ、ぼくたちはどうなるんだ?!」
彼らも動揺しているようだった。
ゼノンは首をふり、つまらなさそうにいった。
「どうなるもなにも、これまで通りさ」
「なんだって?」
「なんだって?」
「きみたちはこれまで通り、第二基地で研究対象として監視され、実験テストを受けるだけだ」
「そんなバカな!」
「そんなバカな!」
ゼノンの言葉が真実かどうか、ユペルたちは反射的にワグナーを見た。
答えを知るワグナーは言葉にならない声を漏らすだけだった。肯定しない代わりに、否定もしない。それが答えだった。
「だったら、アネイルを殺した意味がないじゃないか!」
「だったら、アネイルを殺した意味がないじゃないか!」
やけになったユペルたちが叫ぶと、ゼノンは小さく頷いた。
「そう、意味なんてなかったんだよ。きみたちはいずれにせよ、この第二基地で隔離され、監視され、一生を終えるのだから」
その言葉を聞き、私は思った。
それじゃあ、まるで監獄だ。
「自由、じゆう、ジユウをよこせ! これ以上、ぼくたちを束縛するなぁぁ!」
「自由、じゆう、ジユウをよこせ! これ以上、ぼくたちを束縛するなぁぁ!」
彼らはいつまでも泣き叫んだ。
そして、一月後、彼らは死亡した。
互いに相手の胸にナイフを突き刺し、同時に絶命したとのことだった。
その姿は、まるで互いの尾を食うウロボロスのようにとても不気味で、とても美しかったという。




