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未来探偵ゼノンと七つの事件  作者: 八海宵一
「03 複製人間の罠」
22/47

#05

     *


 人間の完全複製は、宇宙倫理規定によって禁止されている。

 これは生命が生命をいたずらに複製することを禁止するために定められたもので、倫理的に超えてはならない一線として、全宇宙で守られているものだった。ただし、部分的な臓器の複製は例外として認められており、技術的な面で完全複製ができないわけではなかった。

 ワグナー所長の話によると、月面第二基地で複製人間は、細胞レベルから培養されたものではなく、分子レベルから構築されたこれまでにない完全複製人間であり、被害者アネイル・ショットが秘密裡に研究をしていたとのことだった。

 つまり、アネイル・ショットは自分がこっそり生成、複製した人間によって、殺されたというのだ。

「本当に、彼の独断だったんですか?」

 私の問いかけにワグナーは顔を引きつらせながら、うなずいた。

「もちろんです。完全複製人間の研究だなんて、到底、許可できるものではありません。知っていれば止めていましたよ。まさか、あの子たちが分子複製によって作られていたなんて……」

 うそ臭い台詞だ。

私が黙ったまま、顔色をうかがっていると、ワグナーは咳払いをし、視線をモニターに戻した。

「ま、まあ、禁忌の研究に関しては、後日、宇宙倫理委員会が処分を決めるでしょう。ですからそれは一旦、置くとして、シュナイダーさんには、この殺人事件の犯人を特定していただきたいのです」

「はあ」

 特定もなにも、カメラにしっかりと犯人が映っているじゃないか。一体、なにをいっているんだ……ん、待てよ。

 モニターには、まったく同じ少年が二人、保安員によって押さえつけられていた。すでに凶器のナイフは二人の間に落ちていて、どちらがどちらなのか、もはや、わからなくなっていた。

 つまり、どちらか一方の少年がアネイル・ショットを殺害し、もう一方の少年がそれを阻止しようと、行動していたことになる。

 嫌な予感がした。反射的にゼノンのほうを振り向くと、ゼノンは眠そうな半眼のまま、肩をすくめた。

「いまの映像から判別するのは無理ですよ、シュナイダーさん。二人がもみ合ったときに、どっちがどっちかわからなくなっていますから」

「うーむ」

 やっぱり、そうか。

 ゼノンの言葉に、私は唸り声をあげた。

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