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未来探偵ゼノンと七つの事件  作者: 八海宵一
「03 複製人間の罠」
21/47

#04

     *


 月には保安員がいても、警察機構はない。だから、なにか事件が起こるたび、地球(おか)の太陽系警察209分署から警官が派遣されるようになっていた。これまでにも年に何度か刑事事件が起き、後処理をしてきたが、殺人事件は初めてだった。

 私は事件の全貌を知るべく、大きな天窓のある所長室に入るなり、事の経緯を聞きだそうとしたが、ワグナー所長はなかなか話を切り出そうとしなかった。

 代わりにワグナーは、壁に埋めこまれたモニターに監視カメラの映像を映し出し、言葉少なにいった。

「まずは、こちらをご覧ください」

 所長室とはずいぶん雰囲気のちがう簡素な研究室の一室が映っていた。部屋には三人の男の姿が映っていて、一人は白衣を着た博士、残る二人は細身の少年だった。少年は同じ黒のシャツとパンツを身につけ、同じような姿勢でイスに座っていた。いや、同じなのは着ているものや姿勢だけではない。整った目鼻立ち、髪型、姿形、なにもかもが同じだった。

 映像はカウンセリングの一コマらしく、博士の質問に少年たちが順番に答えを返していた。

 そのときだった。

 少年の一人が突然、立ち上がり、隠し持っていたナイフで博士の胸を突き刺した。もう一人の少年が慌てて止めに入ったが、その制止をふり払い、ナイフを持った少年は何度も何度も執拗に博士を突き刺した。ようやく、保安員が駆けつけ、もみ合っている少年たちを押さえつけたときには時すでに遅く、ショット博士は息絶えていた。

 映像を止めたワグナーが私たちのほうに向き直り、神妙な面持ちでいった。

「つまり、こういうことです」

 今まで黙って見ていたゼノンが口を開いた。

「これは問題ですね。ワグナーさん」

 珍しく真剣な顔つきで鋭い口調だった。その様子を見て、ようやく私も気がついた。この少年たちは単にそっくりな双子ではないのだ。

 ワグナーは神経質な視線を私たちに向けたまま、頷いた。

「ええ、お察しのとおり、彼らは複製人間です」

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