#06
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犯行の一部始終が映っているならば、なんの問題もなかっただろう。もし、そうなら映像をスロー再生し、注意深く観察するだけで、どちらが犯人だったのか、簡単に知ることができたからだ。だが現実は、そう甘くはなかった。彼らはもみ合った際に、数十秒間、カメラの死角に消えていた。
一人の少年が体当たりで、もう一人の少年を突き飛ばしたとき、二人はカメラから姿を消し、凶器のナイフがゆっくりとした放物線を描きながら、画面中央の床に落ちた。
「これじゃあ、どっちがどっちだか、わかりませんね」
何度か映像を確認した私がつぶやくと、ゼノンは頷き、所長にいくつかの質問をした。
「彼らの指紋は? 区別がつきますか?」
「いえ、まったく同じなので区別がつきません」
「彼らはどのくらいのレベルでシンクロしているんでしょう?」
「ほぼ、完全にシンクロしています。完全複製が研究のテーマでしたから。日々の環境もほぼ同じにしてありました」
「ふーむ」
ゼノンはわざと一拍置いてから、言った。
「ワグナーさん、この研究について随分、お詳しいですね。知らなかったんじゃなかったですか?」
「いや、それは……私だって事件が起きてからは、いろいろと調べましたから、これくらいのことはお答えできますよ」
「なるほど。それは素晴らしい。では、ついでにもう少し詳しく、彼らの研究についてお聞かせ願えますか?」
「ええ……わかりました」
所長は額に玉のような汗を浮かべながら、モニターに複製人間の関連資料を映し出した。




