究極のサプライズパーティー
人は時に、一生をかけて宝物を探します。
名声。
富。
力。
けれど、それよりもずっと大切なものを求める人もいます。
帰る場所。
一日の終わりに待っていてくれる誰か。
自分の帰りを喜んでくれる人たち。
良太郎は、豪華な夢を追いかけたことはありませんでした。
長い間、自分には手に入らないものがあるのだと思っていました。
幸せは、自分とは別の世界の人間のものだと。
ですが人生は時々、不思議な奇跡を起こします。
気づかないうちに、大切な人たちが壊れた心を少しずつ繋ぎ合わせてくれるのです。
そして、叶うはずのなかった願いが現実になります。
今夜、一人の少年は知ることになります。
本当に大切な贈り物は箱の中には入らないことを。
そして、人生を変える誕生日が存在することを。
『究極のサプライズパーティー』へようこそ。
愛子はこれまでにないほど幸せだった。愛してくれる彼氏、支えてくれる友達、そしてそれだけでは飽き足らず、なんと潮麗良がSNSで彼女をフォローしてくれたのだ。今日は良太郎の誕生日だったが、まるで自分がプレゼントをもらったような気分だった。良太郎もまた有頂天だった。アイドルにフォローされただけでなく、1万円相当の賞を含む複数の賞も獲得していたのだ。
日が暮れかけ、良太郎がトイレに急いで行った後、愛子は携帯電話をチェックした。そこにはバンドEclipseからのメッセージがいくつか届いていた。ユウタはリハーサルのことで大騒ぎしていたし、友達からも色々なメッセージが届いていた。しかし、ひときわ目を引いたのは、愛子と良太郎の友達が作ったものの、まだメンバー登録していなかったグループからのメッセージだった。その名は?「サプライズパーティー!」
ジュン:準備はできたよ。あとは細かいところだけ。
ナタリア:誕生日を迎えたアイコジーニャの様子はどう?
アイコ:最高よ!イベントももうすぐ終わるわ。あと衣装を涼太郎のおじさんに返さなきゃいけないんだけど、それが終わったら帰るから。準備はあと1時間よ。
ジュン:完璧に仕上げるには十分な時間だね。
ユウタ:涼太郎にとって最高のパーティーになるよ!!絶対そうなるわよ!!!
ママ:もちろんよ!
義母:初めてのパーティーなんだから。何かあったら、頭を叩いてやるからね!
マヒナ:サトさん、ご安心ください。完璧になりますよ。私が保証します。
カイト:マヒナが保証するなら、きっとうまくいくよ!
アイコは笑って、またスマホをポケットにしまった。涼太郎が戻ってきて、二人はもう遅いから帰らなきゃ、ということで意見が一致した。そこで二人はショッピングモールを出て駅へ向かった。駅で和夫の家に戻り、涼太郎のおじさんに衣装を返し、心から感謝の気持ちを伝えた。それから六本木へ戻った。道中、愛子は涼太郎の肩にもたれて眠ってしまい、涼太郎は微笑んだ。
高根家に着くと、涼太郎は家の中が真っ暗で、明かりもカーテンも消えていることに気づいた。少し不審に思ったが、特に気に留めなかった。
「愛子、今日は人生で最高の誕生日だったよ」涼太郎は愛子の手を握りながら言った。「君と一緒だったから」
「よかった」愛子はくすくす笑いながら言った。「そうじゃなかったら心配だったわ。あ!プレゼント!まだ家の中にある!」
「そうだ、箱だ!」
愛子は涼太郎を家の中へ引っ張り込み、鍵を開けて二人は中に入った。愛子がリビングの電気をつけると、点灯した途端…
「サプライズ!」愛子と涼太郎の友人や家族の声が響き渡った。
涼太郎は驚きのあまり飛び上がったが、すぐに笑顔になった。みんながそこにいて、みんなが彼に微笑みかけていた。悠太、海斗、真比奈、両親、愛子と正広の両親、そして他の友人たち。
涼太郎は目の前の光景が信じられなかった。大切な友人や家族が、自分を祝うために集まってくれたなんて、夢にも思わなかった。愛子は恋人の腰に手を回し、肩に頭を預けた。
「君…全部計画してくれたの?」涼太郎は囁くように言った。「僕のために?」
「もちろんよ!」恵は愛情を込めて微笑んだ。「愛してるわ、私の可愛い幽霊ちゃん。」 「何か忘れられないことをしなくちゃね」と、美沙緒は愛子と同じように微笑みながら首を傾げた。
亮太郎は自分の目にも涙が溢れ、胸が高鳴るのを感じた。感動の笑みが浮かび、何度か鼻をすすってから、震える声で言った。「ありがとう…本当にありがとう。みんな大好きだよ!」
愛子は微笑み、亮太郎の頬にキスをして抱きつき、首筋に顔をうずめた。恵と美沙緒、そして健二と龍も近づいてきて、亮太郎を抱きしめた。真比奈、美香、綾瀬を除く友人たちも同じように抱きしめた。真比奈はまだそういう習慣がなく、美香と綾瀬はまだ場違いな感じがしていた。抱きしめていた二人が離れると、美沙緒は二度手を叩いて言った。「よし!じゃあ、プレゼントをあげようか?」
「いい考えだ!」と悠太は指を鳴らした。「誰から?」
「俺だよ」と健二は言いながら、ソファの後ろから大きな長方形の箱を取り上げた。「誕生日おめでとう、婿殿」
良太郎は箱を受け取ると、ずっしりと重かった。箱を開けると、心臓がドキッと跳ねた。本物の刀だった。鞘は杉材、鍔は金色、柄は濃い赤色。鞘から刀を抜くと、刀身は銀色で、その表面には光が美しく反射していた。
「うわあ!」良太郎は驚きを隠せない。「これ…本物?本当に刀なのか?」
「京都の鍛冶屋が作ったんだ」健二は腕を組み、笑顔を絶やさずに言った。「お前は俺たちの剣心だから、お前にふさわしいものを贈ってやろうと思ったんだ」
「完璧だ」良太郎は刀を鞘に収めながら言った。「どうもありがとう、健二」
すると、正広は涼太郎のズボンの裾を引っ張りながら駆け寄った。
「涼太郎おじさん!涼太郎おじさん!」と彼は言った。「今度は僕の番!」
そして、青い紙に包まれた小さな箱を差し出した。箱を開けると、中には中央に金属製の猫の置物がついたシンプルなブレスレットが入っていた。
「だって、おじさんは猫が大好きだから」と少年は歯を見せてニヤリと笑った。「ブレスレットもね」
「ありがとう、坊や」と涼太郎は言い、少年をぎゅっと抱きしめた。
少年は強く抱きしめられ、小さく「うっ」と声を漏らした。他のプレゼントも様々で、どれもとても楽しいものだった。一つ一つに素敵な意味が込められていた。中でも真比奈のプレゼントは格別だった。仲間たちがちびキャラ風に描かれた黒いスウェットシャツに加えて、彼女は彼に金色の情報をくれたのだ。
「不死川家の当主が逮捕されたわ」と真比奈は涼太郎の耳元で囁いた。「一族は解散。これで平和は確定よ」
世界が一瞬静まり返ったように感じられた。久しぶりに、彼はもう後ろを振り返る必要がなかった。
「完璧だよ、星奈」謎めいた少女から贈り物を受け取った涼太郎は言った。「君の贈り物、全部完璧だ。ありがとう。」
「ちょっと待って!」愛子は指を立てて言った。「私の贈り物がまだないよ、涼ちゃん!」
愛子は自分の部屋に駆け込み、ベッドサイドテーブルに置いてあった贈り物をつかんだ。そしてすぐに戻ってきて、涼太郎に箱を手渡した。涼太郎は白いリボンをほどき、包装紙を開いた。箱を開けた瞬間、彼の心臓は高鳴った。
箱の中には、柔らかな黒いベルベットの下に、指輪とチェーンブレスレットが入っていた。どちらも鋼鉄製で、とても上質なものだった。涼太郎は贈り物を見て、喜びで胸がいっぱいになり、顔に満面の笑みが浮かんだ。
「これ…綺麗だ」涼太郎は呟いた。「すごく綺麗だ。」
「気づかなかったの?」愛子は、いつものように首をかしげて言った。「そこに小さなメモがあるわよ。」
良太郎は確かにそれに気づいた。小さなメモがきちんと折りたたまれていた。開くと、そこにはこう書かれていた。「光が影を消し去るのではなく、影が光に溶け込むのではなく、光と影は互いに補い合うものだと教えてくれた良ちゃんへ。君の存在に心から感謝している。もしまだ疑っているなら、これだけは覚えておいて。僕は君を何よりも愛している。これからもずっと。僕も、そして僕たちの友達みんなも。いつまでも、いつまでも!
永遠の愛を込めて、
高根愛子」
愛子は少し不安そうに下唇を噛み、良太郎の反応を待った。その時、良太郎の目から銀色の何かがこぼれ落ち、肩が震えるのが見えた。彼は泣いていた。ダイヤモンドのように輝く涙が紙に落ち、ペンのインクを濡らした。物静かな少年はすすり泣いた。
「良ちゃん…?」 「大丈夫? 気に入らなかったの?」と、恋人が泣き崩れるのを見て、愛子は胸が締め付けられるような思いで言った。
「気に入ったよ」と、涼太郎は感情に声を詰まらせながら言った。「気に入ったどころじゃない。大好きだった」
涼太郎はついに顔を上げ、愛子は彼の目を見た。涙で溢れ、まるで溶けた銀の湖のようだった。しかし、彼の表情には痛みや悲しみはなく、純粋な喜びが浮かんでいた。大きな、感動的な笑顔が彼の顔に広がっていた。
「何年も前だったら、僕の誕生日は全く違ったものになっていただろう」と、涼太郎は皆に聞こえるように大きな声で言った。「去年は、部屋で一人ぼっちだったんだ。
小さなケーキと…もう二度と口にしたくない願い事だけだった」
涼太郎は部屋にいる全員を見渡し、さらに笑顔を広げた。いつものように元気いっぱいのユウタ、気だるげな表情と姿勢のジュン、いつもの笑顔のナタリア、揺るぎない名誉を重んじるカイト、芝居がかった仕草のマヒナ、彼を心から愛してくれる両親、すでに家族の一員として受け入れてくれているアイコの両親、妹と同じくらい彼を慕ってくれるマサヒロ、そして最後に、彼がこよなく愛する優しく温かい笑顔のアイコ。
「今?」彼はそこにいる全員を見渡しながら続けた。「今、この瞬間が永遠に続いてほしい。」そして、アイコだけに聞こえるように、さらに小さな声で囁いた。「特に、君のそばにいたい。」
リョウタロウの目に涙が溢れ、再び感情が込み上げてきて、震える声で言った。「みんな、愛してる。みんな、愛してる。心の底から。」
アイコは微笑み、彼女の目にも涙が浮かび、彼を強く抱きしめた。リョウタロウはさらに涙を流した。彼女は彼をぎゅっと抱きしめた。まるで彼のかけらすべてを自分の体の中に閉じ込めるかのように。
「大丈夫よ、涼ちゃん」と彼女は言いながら、彼の背中を優しく撫でた。「泣いてもいいのよ。誰もあなたを責めたりしないから。」
涼太郎は、まるで愛子が今にも消えてしまいそうなほど強く抱きしめ、涙を流した。静かな少年が、砕け散った心の破片を一つ一つ拾い集めるまで、その涙は止まらなかった。二人が離れると、涼太郎は満面の笑みを浮かべた。その純粋な笑顔に、恵は嬉しくて涙を流した。
「見て、龍!」恵は夫の腕に抱きつきながら言った。「涼太郎、本当に笑ってるわ。」
「ああ、そうだな」涼太郎は笑いながら言った。「さあ、このパーティーを楽しもうか?」
「行くぞー!」悠太は叫び、飛び上がって拳を突き上げた。
こうして、パーティーが始まった。涼太郎は愛子に引っ張られてテーブルの中央へ。そこにはホイップクリームがたっぷり乗ったイチゴのケーキが置かれ、17の数字をかたどった2本のろうそくが立てられていた。友人や家族がハッピーバースデーを歌い、物静かな涼太郎はろうそくの火を吹き消し、「この瞬間が永遠に続きますように。そして、もっともっと幸せになれますように」とシンプルな願いを口にした。パーティーはその後も大いに盛り上がった。美沙緒と恵は(二人の仕事である)ファッションと建築について語り合い、龍と健二は(同じく仕事である)法律と投資について語り合い、正広は皆にマリオカートのレースを挑み、恥ずかしさを振り払った美香と綾瀬は涼太郎と愛子の母親たちと話をし、海斗と真比奈は人目のつかない隅で話し込んでいた。その会話はあまりにも面白く、謎めいた真比奈も思わず笑みをこぼした。
そして愛子と涼太郎は?二人はソファに座っていた。愛子は涼太郎の膝の上に座り、物静かな涼太郎は彼女の腰を後ろから抱きしめていた。二人は微笑み合い、心地よい静寂を分かち合った。あまりにも幸せな瞬間だったので、物静かな少年は一瞬、夢を見ているのかと思った。
「なあ」と涼太郎は囁いた。「今年の誕生日は完璧だ。俺たちの平和は揺るぎないものだし、本当の友達もいるし、愛してくれる家族もいる…信じられないよ。」
「信じられないどころじゃないわ」と愛子は言い、涼太郎に寄り添った。「最高よ。どうしてか分かる?」
「どうして?」
「だって、あなたが幸せだから。すごく幸せそう。それこそがどんな贈り物よりも嬉しい。」
涼太郎は再び微笑み、少し頬を赤らめた。愛子は涼太郎の方を向き、愛に満ちた瞳で微笑んだ。物静かな少年は身を乗り出し、あまり目立たないようにそっとキスをした。しかし、愛子はキスを深めようとし、それがきっかけで海斗と真比奈の注意を引いてしまった。
「おい!」と海斗が叫んだ。 「イチャイチャしたいなら部屋に行きなさいよ!」
「うるさい、海斗!」愛子はわざとらしく憤慨したふりをして言った。
「田中さん、それって悪くない考えですね」真比奈はいつものように芝居がかった口調で言った。
「えっ…何?」海斗は顔を真っ赤にして言った。「星奈さん、今は…」
「冗談よ、ダーリン」真比奈は笑いながら海斗の肩を軽く叩いた。「それとも冗談じゃないかも? さあ、どうなるかは分からないわね」
時間が経つにつれ、客たちは帰り始めた。悠太、潤、ナタリアは学校が早く来るからと言って一緒に帰った。まもなく海斗と真比奈も駅まで付き添うと言って帰った。涼太郎の両親も帰りたがっていたし、涼太郎自身も家に帰りたかった。そこで涼太郎は愛子の家族に別れを告げ、自分の家へと向かった。彼らが到着したのは真夜中を過ぎていた。
ベッドに横になり、もらったプレゼントを整理し終えた涼太郎は、最後に携帯電話をちらりと見た。愛子からのメッセージはたった一つで、おやすみのメッセージが届いていた。涼太郎は「おやすみ、愛してるよ」と返信し、新しい携帯電話をナイトテーブルに置いたまま、明日のことを恐れることなく、微笑みを浮かべながら眠りについた。
幼い頃の良太郎は、幸せは遠い場所にあるものだと思っていました。
自分には届かないものだと。
誰か特別な人だけが手にできるものだと。
ですが、その夜は違いました。
幸せは突然現れたわけではありません。
少しずつ積み重なっていたのです。
本物の友情。
彼を愛し続けてくれた家族。
騒がしくて不器用だけれど大切な仲間たち。
そして、隣にいてくれると決めた一人の少女。
あの夜の贈り物は、刀でもありませんでした。
ブレスレットでも。
指輪でも。
パーカーでもありません。
本当の贈り物は――
もう一人ではないという確信でした。
長い時間を経て、良太郎は初めて明日を恐れずに眠ることができました。
それは、どんな願い事よりも価値のあるものでした。
パーティーはいずれ終わります。
音楽もいつか止みます。
一日もやがて終わりを迎えます。
けれど、その夜に結ばれた絆は消えません。
灯りが消えた後も。
ずっと先の未来まで。
そして静かな少年は、初めて自分が幸せになってもいいのだと信じられたのでした。




