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黒桜:星を愛した幽霊の物語  作者: Riv Sansty


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22/41

グレートフェスティバル

プロローグ(日本語)


人生には、


その前と、その後を分ける瞬間があります。


それは戦いの日かもしれません。


別れの日かもしれません。


あるいは、


数百人の観客が見守る舞台の上かもしれません。


勝利のためではなく、


誰かが本当の気持ちを伝えるために。


良太郎は長い間、


自分を隠して生きてきました。


沈黙の中に。


不安の中に。


そして、


『黒い幽霊』という名前の中に。


けれど、


幽霊はいつか消えていきます。


人は生きるためにいるのです。


今日、


エクリプスは舞台へ上がります。


音楽があります。


拍手があります。


涙があります。


そして何より、


もう隠せない想いがあります。


なぜなら、


ある歌は聴くためだけに存在するのではなく、


心へ届くために生まれるからです。


『大いなる学園祭』へようこそ。

2日後…


学校の講堂は満員だった。500席すべてが家族連れ、生徒、そして才能ある人材を探し求めるプロのスカウトなどで埋め尽くされていた。楽屋では、Eclipseバンドのメンバーたちが緊張していた。演劇公演の後、彼らの出番が迫っていたのだ。


「うわぁ…」ユウタは檻の中のライオンのように行ったり来たりしながら言った。「満員だ!講堂がパンパンだ!」


「落ち着いて、ユウタ」ジュンは4本目のエナジードリンクを開けながら言った。「何ヶ月も練習してきたんだから。もし何かあったとしても(ないと思うけど)、お互いにカバーし合えるよ。」


「私も正直、かなり緊張してる」ナタリアは足をトントンと鳴らしながら言った。「でも、きっと大丈夫。」


「Eclipseバンド!」主催者の一人が声をかけた。「次は君たちの番だ!準備はいいかい?」


「まだ…」リョウタロウは自分の名前入りのギターピックを見ながら言った。「でも、行くよ。」



そして、フェスティバルの司会者に呼ばれ、二人はステージに上がった。観客は拍手喝采を送ったが、黒の幽霊こと良太郎も登場したことに驚きを隠せなかった。良太郎は視線など気にせず、ただ最前列にいる愛子の黄金色の瞳だけを見つめていた。物静かな少年はマイクに近づき、足でボタンを押してトークバックを起動させ、仲間のヘッドホンに向かってこう言った。「何ヶ月も練習してきたこの瞬間だ。みんなに俺たちの実力を見せつけよう。準備はいいか?」


良太郎は頷く仲間たちを見て、自分も頷いた。こうして、彼らのパフォーマンスが始まった。


パフォーマンスはマルコス・アルメイダの「ブランカ」で幕を開けた。演奏したのはナタリアと良太郎の二人だけで、アコースティックギターを手に演奏した。メイン曲の前に、観客の心を落ち着かせるような、穏やかで静かな曲調だった。観客はナタリアの歌声の意味は分からなかったものの、そのリズムと歌い方に魅了された。


続いて演奏されたのは、ザラメの「Just One」。曲を知っている人もいたが、ほとんどの人は知らなかった。今回はバンド全員で演奏し、涼太郎はアコースティックギターを、彼のために特別に作られた、数々の有名ギターモデルを融合させたユニークなギター「Void Maker」に持ち替えた。まるで愛の告白のようなこの曲に、男の子たち(そして女の子たちも)は思わず憧れの相手に視線を向けた。


続いて、メインショーの幕開けはリンキン・パークの「Given Up」。この曲では涼太郎のVoid Makerが美しい音色を奏で、ナタリアが17秒間のスクリームは無理だと告白したため、静かな涼太郎がリードボーカルを務めた。会場は熱狂に包まれ、スカウトやプロ以外の全員がヘッドバンギングをし、手でロックサインを作った。そして、あの有名なスクリームが響き渡ると、会場は爆発的な盛り上がりを見せ、一緒に叫び、拍手喝采を送った。涼太郎にとって演奏とスクリームを同時に行うのは大変だったが、彼は見事にやり遂げた。ついに最後の曲、メタリカの「マスター・オブ・パペッツ」が演奏開始。次の曲の準備をしていると、涼太郎はジュンの方を見た。彼の頭が揺れ、眠そうな表情がさらに重くなっているのに気づいた。ナルコレプシーの発作が迫っていたのだ。


「しまった」涼太郎は呟き、トークバックに向かって叫んだ。「ジュンが気を失いそうだ。悠太、楽屋に行って薬を持ってきてくれ、早く!」


悠太は言われた通りに楽屋へ向かった。物を探すのが苦手な彼は、2分ほどかかった。静かな悠太が焦り始めた時、ナタリアが足を2回踏み鳴らし、拍手をした。観客もそれに倣い、すぐに全員がリズムに合わせて動き出した。悠太が楽屋に戻ると、ジュンに薬を渡すと、ジュンは一気に飲み込んだ。効果が出るまで少し時間がかかったが、すぐにジュンの眠そうな表情はすっかり晴れやかになった。


「準備はいいか?」涼太郎が尋ねた。 「わかった。ジュン、いつでもいいよ。」少年は頷き、ハイハットを数回叩いた。涼太郎は腕を上げ、指の間のピックがスポットライトに照らされて輝いた。ジュンが最後の演奏を終えると、演奏が始まった。ギターは唸りを上げ、シンバルはけたたましく鳴り響き、ベースは完璧なリズムを刻んだ。ナタリアは全身全霊を込めて歌い、マイクが手から落ちそうになることが何度もあった。


しかし、フェスティバルが最高潮に達したのはソロ演奏の時だった。亮太郎はただ目を閉じ、唇を噛み締め、曲のソロに身を委ねた。何ヶ月ものリハーサルと長年の練習で研ぎ澄まされた指は、稲妻のように速く、まるで最後であるかのように弦を一本一本弾き上げた。物静かな少年は頭を下げ、足と頭を軽く叩き、最後にはロックスターのように「Void Maker」を掲げた。観客は熱狂し、励ましの言葉、称賛、そして時には罵声までが飛び交った。


最後のコードが響き渡ると、全員が立ち上がり、拍手喝采を送った。「ECLIPSE!ECLIPSE!」と叫び続け、もう一曲リクエストが続いた。メンバー全員が丁寧に頭を下げ、会場を後にした。亮太郎はまだ胸が激しく上下し、額に汗が伝っていた。誇らしげな笑顔を浮かべる愛子をもう一度見つめ、彼女の黄金色の瞳と再び視線を交わした。


そして、彼はある決断を下した。


彼はマイクのところへ駆け戻り、司会者が話を続けようとする前にこう言った。「待ってください!あと3、4分いただけませんか?僕…まだ最後の曲が残っているんです。」


「え?」と司会者は聞き返した。「わかりました。」


涼太郎はアコースティックギターを手に取り、弦を見つめ、それから再び愛子を見た。彼は深呼吸をして言った。「あの…これから歌う曲は、さっきほどアップテンポでワクワクする曲ではないんです。でも、とても特別な曲なんです。そして、とても特別な人に捧げる曲なんです。メロディーは借り物ですが、作曲は僕がしました。一度しか演奏しないと言いましたが、その約束は破らざるを得ません。これは僕の彼女に捧げる曲なんです。」


客席にいた愛子は、彼がこれからしようとしていることが信じられなかった。その時、彼は自身のオリジナル曲「Sweet Aiko」の特徴的な音を奏で始めた。愛子の目には涙があふれ、大きく見開かれ、両手で口を覆い、心臓がドキドキした。彼は本当にこれをするのだろうか?亮太郎は一瞬ためらった。


もし声が出なかったら?


もし全てを伝えきれなかったら?


…いや。


もうこの沈黙は終わりだ!


彼が作曲した美しい曲の最初の旋律がホールに響き渡り、そこにいる全員がこれから歌われる歌に耳を傾けた。誰も口を開かず、囁き声さえ聞こえなかった。周りでは、涙が次々とこぼれ落ちた。そして、亮太郎は歌い始めた。


「僕の心の中にある全てを君に捧げる

僕の最も真摯な想いを君に捧げる

君に誓う

何があっても僕たちを引き裂くことはできない…」


目尻に溜まっていた愛子の涙が、ついに溢れ出した。口元を覆っていた両手は、そのまま胸に当てられ、彼女の顔には感極まったような微笑みが浮かんだ。周りの人々も、一人また一人と、感極まり始めた。



「愛しいアイコ、その愛しい眼差し

海のように美しい

僕をその海へ潜らせてくれ

そして君を愛する方法を見つけよう」


最後のフレーズで涼太郎の声はかすかに震えたが、それでも彼は歌い続けた。涼太郎が歌うと、アイコも静かに歌い始めた。物静かな少年は彼女の歌声を見つめ、顔に笑みが浮かんだ。彼は歌い続け、目にも涙が浮かんだ。そして最後のコーラスへと続くブリッジに差し掛かった。こうして彼は歌った。


「僕は幽霊だった

でも君は僕を愛してくれた

僕は孤独だった

でも君は僕を受け入れてくれた

灰色だったものが

今日は色づいている

それは君の瞳の色だ」


涼太郎が「君は僕の家」と優しい声で歌い終えると、観客は一瞬静まり返り、そして一斉に拍手喝采を送った。ただの拍手ではなかった。スタンディングオベーションだった。しかし、静かな少年は拍手など気にも留めなかった。ただ、金色の瞳と黒と金髪の髪を持ち、涙と情熱的な微笑みを浮かべた、愛する少女を見つめていた。そしてギターを脇に置き、ステージから飛び降りて彼女のもとへ駆け寄った。愛子も彼に向かって走り出し、人々は自然と道を空け、二人の間に通路を作った。二人が出会うと、愛子は彼の首に抱きつき、腰に足を絡ませて抱き合った。


「涼ちゃん…」愛子は名前を呼ぶ途中で声が震えながら囁いた。「あぁ、涼ちゃん…大好き…大好き…」

「僕も愛してるよ、愛子」涼太郎は甘い声で囁いた。 ――全身全霊を込めて。


愛子は少し身を離したが、まだ彼にしがみついていた。涙ぐんだ笑顔で彼にキスをすると、観客席の人々は歓声を上げ、拍手喝采を送った。もし生徒たちの間に、二人の愛が本物かどうかという疑念がまだ残っていたとしても、もはやそれはなかった。犯罪者も、噂話も、何ものも二人を引き裂くことはできない。


黒い幽霊は……もはや幽霊ではなかった。

あとがき(日本語)


やがて講堂は静かになります。


照明は消えます。


観客は帰っていきます。


楽器はケースへ戻されます。


あの夜を満たした音も、


いつかは余韻になります。


けれど、


消えないものもあります。


涙を浮かべた少女の笑顔。


仲間たちの誇らしげな表情。


そして、


ようやく居場所を見つけた心。


良太郎は長い間、


一人で戦わなければならないと思っていました。


苦しみも、


悲しみも、


全部自分だけのものだと。


ですが、


あの夜は違いました。


誰も一人では舞台に立てません。


音楽は聴いてくれる人がいて初めて完成します。


そして、


心は誰かに受け入れられて初めて花開くのです。


影の中を歩いていた少年は、


今や光の中で歌っています。


誰にも見られたくなかった少年は、


何百人もの前で愛を伝えました。


黒い幽霊は、


もう幽霊ではありません。


孤独よりも大切なものを見つけたからです。


それは――


帰る場所でした。

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