2-34.能力の自覚
昼間とは違う、薄暗い広間を懐中電灯の頼りない灯りで照らす。
非常灯が通路に設置されているけれど、ほとんど見えない。手元の明かりを無くしたら、真っ暗になって動くのもままならないだろう。
龍之介さんを連れて1階に着いた時には、大葉さん以外先に行っていた。
一緒に行くために待っていてくれたのかと思ったけど、入り口を閉めるためだった。
内側からしか鍵が閉めれない為、誰かが残る必要がある。それに、自分が行っても足手纏いにしかならないからと。
だから自分の代わりに未道さんを助けてあげてほしい。そう言われわたしは頷く。
彼からマップのデータと懐中電灯をもらい、わたし達は未道さん達の後を追って広間へと出てきた。
早く追いつかないといけないけれど、わたし達の歩みは遅い。
暗闇の中を歩くだけでも大変なのに、ここにはそれ以外にも気をつけないといけない。
いつ怪物が出てくるか分からない。持ち慣れていない拳銃を、慣れない構えをしつつ歩く。
拳銃を持っている手に自然と力が入ってしまう。恐怖と緊張で、わずかな物音に体が跳ねる。
基地から出るまでは、やらなきゃいけない事が多いからかなんとも思ってなかったが、やっぱり怖い。
4
…今彼女はここにいない。わたしがしっかりしないと。
「なあ。「ぴゃっい!!?」…悪い。」
「い、いえ…少し驚いただけです。それで、なんですか?」
「俺が前を行こうか?慣れないことをすると疲れるだろ?」
「…そうですね。でも、わたしが前を歩きます。この先同じような事があるかもしれませんし、できるようにならないと。」
「そうか。分かった、疲れたら言ってくれ。」
気を取り直して先を急ぐ。
大葉さんにもらったマップを見るに、薬局は中間にある。このペースだと1時間ぐらいで着く。
行く先々にある店。その中に敵がいないか注意しつつ、少しずつ進んでいく。
時々怪物の死体が転がっているのは、先に行った雨宮さんの仕業だろう。
目立った欠損もないのを見ると、素人でも彼女が凄腕なのがわかる。
せめてわたしも、怪物を1人で倒せるようにならないと。
「ん?」
なんだか変な感じがする。
進行方向から、何か…気配?のような物が近づいてきている。
この感じは前にも感じた。何か危ないものがこっちに来ている。
龍之介さんの手をとって、近くの店に隠れる。怪訝そうな顔をしていたけれど、したがってくれる。
そのまま様子を伺っていると…
「グルルルル…」
「!…怪物…」
狼の怪物が通り過ぎていった。
危なかった。あのままあそこにいたら、鉢合わせして襲われていた。
「ふぅ…いきましょう。」
「おう。にしてもよく分かったな。」
「そう…ですね…自分でも、なんで分かったか…」
このフロアに来てから、危険な物の気配みたいなのが分かるようになった。
最初は気のせいかと思っていたけれど、大きな怪物が出た時や、結さんが襲われた時も同じように見えたのを考えると、気のせいじゃない。
そのことを彼に伝えると、
「なあ舞。それってお前の能力なんじゃないか?」
「え?」
「ほら、変異した人間…覚醒者になると、何かしらの能力を得るだろ?だから、それがお前の能力なんだと思うぜ。」
「でもわたし、変異した覚えなんてないんですけど…」
「そうなのか?…寝てる時に変わったんじゃないか?」
「えぇ…」
そんなことがあるんだろうか?
…いや、流石にないと思う。
わたしの能力もあり、誰とも会うことなく目的地に着くことができた。
シャッターをノックして声をかけると、中から未道さんが開けてくれた。
「雪原さん来てくれたんですね。すみません、おいていってしまって…」
「いえ、それより筒裏さんの様子はどうですか?」
「雨宮さんが見てくれていますが、ひとまずは大丈夫だそうです。」
「よかった…そういえば、雨宮さんは?」
「真那の検査した後、機材がある部屋にこもってしまって…今は出てくるのを待っているところです。雪原さん達も、今は休んでいてください。」
「わかりました、そうさせていただきます。」
長椅子に腰を下ろし一息つく。
受付を挟んだ奥の部屋で、作業している雨宮さんが見える。真剣な横顔を見ると、筒裏さんの治療もちゃんとやってくれると思える。
未道さんは心配そうにその様子を見続けている。…わたしも、早く結さんに会いたい。
「…ところで、何してるんですか?」
わたしの後ろの椅子に座っている龍之介さんが、ズボンを膝下まで下ろして何か塗っている。
…なんでここで…
「ん?ああ、ちょっと太ももに画鋲を刺してたから軟膏を塗っておこうと思ってな。」
「だとしても、人の前でいきなりズボンを下げるのはどうかと思います。せめてトイレでやってください。」
「あ〜悪い。すぐにでも抜きたかったからよ。次は気をつける。」
「はぁ…どうして足に画鋲なんて刺しているんですか?」
「ああ、洗脳対策にな。痛みを感じると洗脳が解けるっぽいから、こうしておいたんだ。」
「…いつから洗脳されてたんですか?」
「多分、鶴木に会った時からだ。その時から考えがおかしくなったと思う。」
「それなら、わたしは謝らないといけません。」
そう言って彼の方を向く。
わたしの言葉が予想外だったのか、呆けた顔でこちらを見ている。
「ひどいことを言ってごめんなさい。」
「い、いや!謝らないでくれよ!確かに洗脳されたせいで、鶴木のことを信じ切ってたけど…今回のことは俺が悪い。」
「ですが…」
「…言いたくないが、全く思ってなかったとも言えないんだ…俺は、結のことを信じきれてなかった。そのせいで、そこをつけ込まれたんだ…だからお前は悪くない。」
「…わかりました。それなら、結さんにちゃんと謝ってくださいね。それで許してもらえるなら、わたしも許します。」
「ああ、そうする。ありがとな舞。」
「仲良く話しているところ悪いけど、少しいかしら。」
いつの間にか、わたし達のそばに雨宮さん達が立っていた。
「何かようですか?」
「あなたじゃなくて、真壁龍之介。あなたに聞きたいことがあるわ。」
「俺?」
「筒裏さんの体を調べたところ、薬物の反応が出たわ。幸い治療はできるけれど、材料が足りない。鶴木のところに解毒薬はあった?」
「…多分ある。前にも同じ薬を使ったって言った時に、一応治療薬も作ったって…場所まではわからないが。」
「ちなみに、結も同じ状態だった?」
「いや、それはないから安心してくれ。」
「そう…それじゃあ、奪ってくるしかないわね。そのためにも、あなたには向こうの状況を詳しく教えてもらう必要がある。それと、残してきた結がどんな状態だったかも。」
「…ああ、分かった。」
彼は辛そうに顔を伏せ、ぽつりぽつりと話し出す。
彼が語った内容は、わたしが思っていた以上に辛い物だった。
コロナでくたばっており、遅くなりました。
今日から同じように投稿できるように頑張ります。
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