2-25.話し合いに向けて
ひとまず、鈴蘭君には事情を話しておいた。
何も言わずに出ていくのも考えたが、協力する以上伝えておかないと。
それに、手元にある武器は拳銃とナイフだけ。流石に心許なかったので、その事で相談もしたかったからだ。
「そうですか…結さんの想像通り、Gフォンがないと上階には上がれません。」
「やっぱり…それなら取り戻さないと。」
「ええ。それにあなたのお仲間も、早々に蔓木から引き離さないとまずいですね…わかりました、必要なものがあったら言ってください。お渡ししますので。」
「ありがとう。…それと、雪原さんにはこの事内緒にしておいて。その…心配すると思うから。」
「わかりました。ついでに真那さんにも内緒にしておきます、ろくなことをしなさそうなので。」
「あ〜うん、よろしく。」
その後、鈴蘭君に武器をもらった。
予備の拳銃と弾。それと接近戦で使えるものを頼んだら、バールをくれた。
刃がないので大丈夫かな…と思ったけれど、かなり頑丈で雑に扱っても大丈夫な分こちらの方が使い勝手がいいのかもしれない。
そもそも、あたしの力なら切るよりも叩き潰しす方が合っているのかもしれない。
ひとまずこれだけあれば、武器の心配はない。それと、食べ物は持っていかない。
必要なものを受け取って、龍之介を連れ戻すだけだから必要ないだろう。荷物はできるだけ減らしておきたいし。
準備を終え、3階のロビーで一息つく。
何やら真那ちゃんがこちらをニヤニヤしながら見ている気がするけど、多分気のせいだろう。
軽く食事をとり、時間になるのを待つ。…雪原さんはあれから姿を現さない。
一応、真那ちゃんが食事を持って様子を見に行ってくれた時には起きていたようだけど、シアターから出ようとしないそうだ。
きっとあたしと会いたくないのだろう。…悲しいけど、仕方のないことだ。
ソファーに座って時間になるのを待つ。
8時を回ると、外から銃声が聞こえ始めた。昨日と同様、怪物が出たのだろう。…いくつか悲鳴も聞こえる。
外の様子が気になるが、シャッターを開けたところに怪物がいたら洒落にならない。
ただ座って、じっと銃声が止むのを待つ。
1時間ほどで銃声が止んだ。歓声が聞こえることから、無事倒すことができたのだろう。
もう少しで約束の時間だ。武器の点検をし、万全の状態にしておく。
殺し合いをするつもりはないけれど、もしもの場合は戦わなければいけない。
そうなったら、龍之介と戦わないといけない可能性だってある。
その考えを何とか消そうとするが、どうしても浮かんでしまう。…考えるたびに口の中が渇き、手が震える。
…ここに来るまで、3人の友人を殺してきた。
麻倉君に石塚君、それに静華。今も鮮明に思い出せる、話したことも…殺した場面も。
あんな思いを何度も味わいたくない。この先、そんなことが続けばそれが当然だと思ってしまうかもしれない。
…体は怪物になってしまったけど、心までは怪物になりたくない。
そのために、どんな手段を使ってでもGフォンを手に入れて、龍之介を連れて来る。
…そして、時間が来た。
鈴蘭君に頼んで、3階のシャッターを開けてもらう。待っていたのは暗闇。
今いるロビーとは違って、まばらについている非常灯の、頼りない灯りがついているのみだ。
このまま向かって奇襲されたら最悪だ。目を瞑り、目を慣れさせておく。
深呼吸をし、心を落ち着ける。…大丈夫、龍之介は無事に連れて帰る。
「話が終わったら連絡してください、シャッター開けますから。」
「うん、行ってくる。…あたしに何かあったら、雪原さんにはうまく言っておいて。」
「…待ってますから、無事に戻ってきてください。それでは、お気をつけて。」
シャッターがゆっくり閉じていき、閉まると同時に視界が闇で覆われる。
まだ目が慣れていないため、手元すら見えない。会う前に、見えるようにしておかないと。
さっき蔓木さんからメールで連絡があった。
遭う場所は3階にあるフードコート。そこで、蔓木さんと龍之介が待っている。
事前に鈴蘭君に場所は聞いてある。このまま、道なりに歩いていけば辿り着けるだろう。
銃を取り出し、歩き出す。
「遅かったじゃーん。」
「っ!誰!?」
声のした方に銃を向ける。…柱の影に誰かが立っている。
もしかして蔓木の仲間?そう思い、銃を構えたまま近づいていく。
小さなシルエット。あたしの身長よりも小さい…それに小柄な感じだ。…最近見た覚えがある。
Gフォンを取り出して、シルエットを照らす。
「…ここで何してるの、真那ちゃん。」
「やっほー。待ってたよ〜、もうちょっと早く来てよね!……暗くて怖かったんだからぁ…」
涙目の真那ちゃんがそこにいた。
どうして…鈴蘭君が話した?いや、鈴蘭君はそんなことしないだろう。
けど、ここで待っていたってことは誰かに聞いたはずだ。一体誰に…
「むふふ〜、しろっち真那がどうしてここにいるか気になってるでしょ?教えてあげよっか?ねえ、聞きたい?ねえ、ねえ?」
「…あたし今、無性に真那ちゃんを引っ叩きたくなったんだけど。どっちの頬がいい?」
「ふぇ?いや、どっちも嫌なんだけど…あっごめん!ひょっほ!ひょひょもひゃないへ…!」
なんかイラっとしたので、ほっぺたを揉んでおいた。!柔らかくて、スベスベ…ずっと揉んでられる。
……………………………っとそんなことしてる場合じゃない。このまま真那を連れていくわけにはいかない。
すぐに鈴蘭君に連絡して、シャッターを開けてもらわないと。けれど、Gフォンを取り出そうとしたところで真那ちゃんに止められた。
「待って待って!蔓木に会いに行くんでしょ?真那も行く!」
「いや、なんで?ついてくる理由がないでしょ。ほら、危ないから戻って。」
「いーや、もどんないから!それに理由ならあるし。」
「どんな?暇だったとかじゃないよね?」
「ちっがーう!ついて行きたいのは…その…し、しろっちが心配だから…」
「…それはありがたいけど、何があるかわからないから戻って欲しい。」
「ダメ!絶対行く!だって…と、友達でしょ!なおさら1人で行かせられないよ!」
…どうやら、ふざけた理由ではないらしい。それは彼女の真剣な表情からも伝わっていくる。
けれど、一緒に行くのは反対だ。何が待っているかわからないような所に連れていけない。
何とか説得しようとしたが、一緒に行く一点張りで話が進まない。
鈴蘭君に連絡しようにも、Gフォンを取られてしまいどうしようもなかった。
「…はぁ、仕方ない。わかった、一緒に来ていいよ。」
「ホント!?ふふん…しろっちもやっと、真那が有能だってわかったんだね!」
「アーハイソウデスネ。」
「棒読み!?」
「これ以上言っても聞かないから、仕方なくだよ…とにかく、ついてくるなら絶対!勝手なことしないでね。」
「もちろん!大丈夫だよしろっち、こう見えても真那強いんだから!」
「わかったから、離れずついてきて。」
「あっ待ってよ!」
仕方なく真那ちゃんを連れていくことになった。
まあ、戦力が増えたって考えればいいのかもしれない。真那ちゃんのスピードは頼りになる。何か起こったら、雪原さんのGフォンを渡して逃げてもらおう。
気を取り直して、フードコートへと向かった。
「…ね、ねえ、暗くて危ないから…手繋いでもいい?いや、怖いわけじゃなくて……怖いから繋いでいい?」
「…もう好きにして…」
…やっぱり失敗だったかもしれない。
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