表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EDEN  狂気と裏切りの楽園  作者: スルメ串 クロベ〜
81/126

2-16.白衣の少女

白衣のような、白の長いロングコートを着た人物。

フード深く被っているため顔が見えないが、声に覚えがあった。

突然現れた彼女…雨宮さんに周りの視線が集中していた。

男達の視線からは困惑を感じられるが、それ以上に…彼女への恐怖が感じられる。

ボロボロになってるあたしには誰も興味を示さない、多分その余裕がないのだろう。

これは予想だけど、あたしを襲ったこいつらは雨宮さんのことを知っている。

最初の日に1人で怪物を殺して回ったのが、彼女だということを知っているから、これだけ恐れているのだろう。


強いかどうか分からないあたしよりも、その強さをよく知っている雨宮さんを警戒するのは当然だ。

いや彼らを見ていると、警戒するというよりも逃げ出したいと思っているようだ。

腕を撃たれて睨んでいるやつ以外は、少しずつ彼女と距離をとっている。

雨宮さんが怪物と戦っているところを見たわけではないが、昨日の夜1人で数体の怪物を殺していた。

それだけでもすごいが、彼らの怯えようを見るとそれ以上の事をしたのかもしれない。


「それで、どうしてその子がそんなふうになっているか…説明して。」


感情が冷え切ったように冷淡で、冷たい声だ。

フードのせいで顔が見えないが、彼らを見る目も冷え切っているのだろう。

関わりのないあたしでも分かる。…これは相当怒っている。

助けてもらっているあたしでさえ、冷や汗が出てくる。


「そ、そぉれは…えっと…こ、こいつ…いや、この子が俺たちの仲間を…」

「そ、そうだ!いえ…そうです…はい…。彼女が俺たちの仲間を殺したから…だから…!」


男達がなんとかこの場を納めようとしているのは分かるが、恐怖で声が上擦っている。

ここまで怖がらせるなんて、本当に何をしたの?

…気になるけど、今は黙ってよう。だって…


「じゃあ今からあなた達を殺すわ。」

「なっ!なんで!俺たちはあんたに迷惑はーー」

「理由は私を不快にさせたからよ。」

「ふ、ふざけー」


反論をしようとした男の頭が吹き飛んだ。

残った2人は動けずに固まっている。

…驚いた。いきなり人を殺した事もそうだけど、それ以上に動作が見えなかった。

話している間彼女は銃を持ってはいたが、構えてすらいなかった。

だというのに、男が話した瞬間コンマ数秒もかからず構え、頭に正確に銃弾を撃ち込んだ。速いなんてもんじゃない。

瞬きしている間に、人が死んでいた…そう思えるほどの速さ。

そして正確だ。あたしが真似しても、明後日の方向に飛んでいくだけだ。


確かにこのことを知っていたなら、彼女を恐れるのも納得できる。

今みたいに、少しでも彼女を不快にさせたら…1秒たたず殺されるのだ。

これは怖い。下手な怪物なんかよりも恐怖するのも分かってしまう。


「私は蔓木と取引をしている。だから、何もせず戻るなら手は出さない。」

「ほ、本当…ですか?」

「ええ。そこの手がないやつを連れて、早く消えなさい。」

「わ、わかりました!おとなしく戻ります!だ、だから殺さないで!」


そう言ってあたしの近くで、血を流している人を立たせようと手を伸ばす…がその手は別の方へ伸びている。

雨宮さんからは屈んでいる男の背で見えないのか、近くのナイフへと向かっている。

ナイフを手に取り、切先をあたしへ向け、20cmも動かせばあたしの体を貫ける位置だ。

そのことは彼も分かっているのだろう。横目で見た彼の顔は、歪んで笑みをこぼしながらあたしを見ているから。

けれどそれが叶うことはない。なぜなら、ナイフを手に取った瞬間彼の頭が無くなった。


その様子をあたしと、残った1人が見ていた。

丸めた体を制御するものが無くなっため、花が開くように地面に倒れ込んだ。

残った1人はまだ抵抗する意志を残しているが、それもすぐになくなるだろう。


「おとなしくしていれば死なずに済んだのに。まあ、手間が省けたから丁度いいわ。」

「なんで…なんで俺たちが死ななきゃなんねえだ…」

「?なんでって…おとなしく帰らないから。さっき言ったけど、聞いてなかったのかしら?」

「けど、悪いのはこの女だ!俺たちの仲間を殺した!だから俺たちがこいつを殺す!それの何が悪い!」

「じゃあ私があなた達を殺すことも、何か悪いの?」

「…は、はぁ?俺たちはあんたになんの迷惑もーー」

「私の友達を傷つけた。さっきあなたが言った通り、傷つけられたからやり返しただけ。それだけよ?」

「ふざけんな!こっちは人が死んだんだ!怪我させた程度でこんな仕打ちが!」

「殺そうとしたでしょ?」

「そ、それはさっきも言った通りこいつがやったから!」

「彼女は、自分から人を殺そうとはしない。大方あなた達が先に手を出したんでしょう?」


その言葉に男が怯んだ。事実を指摘され、反論できなのだろう。

…というかそのことを知っているってことは、こいつあの場にいた?

知っていながら殺そうとしてきていたならもう手に負えない。


「そ、そんな証拠…どこにあ、あんだよ…」

「そんなのは必要ない。だって」

「へ?どうあぐっ!」


右足が膝から千切れ飛んだ。

そのせいでバランスを崩し、地面へ倒れ伏した。

訳も分からず苦痛にもがいている男に、雨宮さんがゆっくりと歩み寄り言った。


「お前はここで死ぬから。」

「ひぃぃいいい!!」

「安心して、もう少しだけ生きられるわ。」

「た、助けて…ゆ、許してもらえぎぃぁぁあああ!!!」

「その子をそんな風にしたのに、すぐに死ねるわけがないでしょう?」

「あ…ああ……ひぁ…ああああ……」

「お前の死体を細切れにして、蔓木に届けてあげる。そうすれば同じことする馬鹿はいなくなるわね。」

「いだい…い、いやだ…!だずげ…だずげでぐだざい……お願いしまず…」

「恨むなら、馬鹿な自分を恨むのね。」

「だずけて…だずけてくだざい…!…助けて…」

「まず残った足を」

「待って!」


…思わず止めてしまった。

痛みと恐怖、流れ出る涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、あたしへと助けを求めてきたせいだ。

正直助けたいとは思わない。…でも、ここまでする必要は絶対ない。

ここで助けても意味はない。この傷じゃ、もう助からない。

仮に生き残ったとしても、ここから出るのは不可能だろう。

でも…それでも、止めないといけない。あたしのことを友人と呼ぶ彼女に、こんな残酷なことはしてほしくない。

節々が痛む体に鞭を打ち、立ち上がって彼女に言う。


「雨宮さん…これ以上はやめてほしい。」

「こいつらはあなたをリンチした。それでも、あなたは許せるの?」

「…許せはしないよ。でも、それ以上に…あなたにそんなことをしてほしくない。」

「……そう、分かった。あなたがそう言うならやめる。」

「た、助かった…あっ!ありがとう…!ありがとうございま」


男の感謝の言葉を最後まで聞くことはできなかった。

残った手足であたしへと擦り寄ってきていた。

その表情には生き残れた事と、助けてくれたことへと感謝で溢れていた。

けどその表情も、写す顔がなくなってしまえば終わりだ。

そう。雨宮さんが頭を撃ち抜いて殺してしまった。見向きもせず殺す様は、虫を殺すようだった。


今あたしは、複雑な気分だ。

襲ってきた奴らは全員死んだ。ざまあみろという気持ちは確かにある。

でも、これが正しいかと言われると分からない。間違っているとも違う。

自分の中の常識、倫理観が狂わされて訳が分からない。

本当にここまでする必要があったの?こんな見せしめのような真似を。

そもそも殺す必要があったのか?…後に残ったのは、後味の悪さだけだ。

けど…助けてもらった分際でそんなことを悩むのは、おこがましい事なのかもしれない。

でも分からないままじゃだめだ。だから、


「昨日の夜ぶりね。…神代結。」

「そうだね。雨宮…雫さん。」


この後味の悪さを晴らすためにも、あたしは彼女を知らなければいけない。思い出さなければいけない。

あたしのことを友人と呼ぶ彼女と話し、理解すれば、答えが見つけられるかもしれないから。

モチベーションになりますので、感想コメント、いいね、評価お待ちしております。

下の星もお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ