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EDEN  狂気と裏切りの楽園  作者: スルメ串 クロベ〜
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2-15.向けられる憎しみ

声も上げずに泣いている舞に駆け寄る。

表情が抜け落ち、泣いている舞の肩を揺すってみるが反応がない。

呼びかけても返事もない。おそらく人を殺したショックのせいで、意識が飛んでいる。

なんとかしなくちゃいけない。けど、今は時間がない。


この時間…寝てる人が多いとはいえ、あれだけ銃を撃てば誰か様子を見にくる確率が高い。

そうなると厄介だ、今の状況を客観的に見たらどう思われるか。

頭のない死体に血まみれの人間…どう考えてもあたしが悪者にしか見えない。

最悪いきなり撃たれるかもしれない。会話は…多分無理だ。

それに襲ってきた2人が帰ってこなければ、仲間が探しにくる。

そうなったらまたさっきの繰り返しだ。


とにかく今はどこかに隠れないと。それと、死体を見つからないように移動させる。

けどあたしだけじゃ手が足りない。…こんな時に龍之介がいてくれれば…


「ねえ…その…助けてくれて、ありがと。え、えっと…」


あった時とは違い、オドオドとした態度で話しかけてくる。

そうだった、この子がいたんだった。

でも今は関わってる余裕は…


「……そうだ。ねえ、ちょっと手を貸してくれない?」

「え?ええ!なんでも任せなさい!それでそれで?真那は何をすればいいのかしら?」

「舞を…その子を安全な場所に移動させて欲しいの。あたしはあの死体と、気絶しているやつをどうにかするから。」

「分かったわ!真那に任せておきなさい!向こうに基地があるの。仲間もいるから、そこなら安全よ!」


そう言って北側を指差す。仲間…さっき言っていたすー君という人のことだろうか。

北側、方角だけだとわからないと思ったけど、場所はなんとなく予想ができた。

蔓木が広間にシェルターを作っていたことを考えると、おそらく北側にある広間を使っているのだろう。

もし見つけられなかったとしても、舞のGフォンに連絡すればなんとかなる。


「分かった、片付けたら合流する。舞をお願いね?」

「ええ、任せなさい!…そういえば、名前聞いてないんだけど…」

「あたしは結、そっちの子は舞。あなたは真那でよかった?」

「そうよ!真那!筒裏つつうら 真那まなよ!覚えておきなさい!」

「うん、分かった。ちゃんとした自己紹介は後でするから、それじゃあ後で。」


真那ちゃんに任せて、あたしは後始末をする。

ここから蔓木のところまでどのくらい距離があるかわからないけど、とにかく急いで死体を隠さないと。

死体を持ち上げ、近くの店に運ぶ。空っぽの棚がいくつも並んでいたので、その陰に隠した。

店に入られればバレるけど、通路からは見えない。ひとまず今はこれでいい。


次に蹴り飛ばしたやつに近づく。

うつ伏せに倒れているのを起こしてみると、白目を剥いて泡を吹いていた。

…心臓は動いているので生きていると思う。

あたしの上着で腕を縛り、男のズボンで足を縛る。

起きた時騒がれると面倒なので、口の中に靴下をねじ込んでおいた。


その状態で死体と同じ店に運んでおいた。

2人を運んで床のナイフを拾った時、失敗に気づいた。

運んだ店に向かって血痕が続いている。慌てていて、こんな簡単なことを見落とすなんて…

これじゃあ隠した意味がない。血の跡を辿ってすぐに見つけられる。

どうする…掃除してる時間なんてない、けどこのままだとすぐに見つかって…

その時だった。


「!誰か来た。」


コツコツという足音が聞こえた。

音がする方をみると、南側…蔓木のシェルターがあった方から聞こえる。

あっちから来る人間は、ほとんどが蔓木の仲間と考えるべきだ。

そうなるとこのまま見つかるのだけは避けたい。でもまだ床の血の跡が…


…もういい、切り替えよう。

あたしはナイフを拾い、物資の入った箱を持ち上げ走る。

ライフルも持って行きたかったけど、1m四方の箱を運ぶために両手が塞がってしまい諦めることに。

走り始めてすぐ、背後から大声で何かを叫んでいるのが聞こえた。


死体を見つけられたのか、あたしを探しに来たのか、どっちにしろ関わる気はない。

今はとにかく逃げ切って真那ちゃん達の基地に向かわないと。

そう思い走り続けていると、視界の端を何かが横切る。小さな粒…茶色の塊、最近よく見るやつだ。

…最悪だ。後ろのやつら、撃ってきている。


でも悠長に確認している余裕はない。

あたしはとにかく走り続けた。

幸い身体能力の点で負けることはない、このままいけば逃げ切れる。

でも、あたしは他の人より遥かに劣っている点が一つある。最近自覚した。


「いっつ!っ!あう…」


あたしは運が悪い。

銃弾があたしの足に命中し、躓いて転んでしまった。

持っていた箱は蓋を閉じていたため、中身が散らかることはなかった。けど、走ることができない。

傷口を見ると再生は始まっているけど、状態がいつもと違う。

弾が残ってしまっているのか、皮膚の中にコブのようなものができてしまっている。

そのせいか動くたびに痛み、残った弾が足の中を傷つけているような感じがして気持ち悪い。


でもそんなことを気にしている場合じゃない。

まだ距離があるとはいえ、走れなければすぐに追いつかれる。

そして予想通り、追いかけ来る人影が見え始める。

見える影は3つ、さっきより1人多い。


足に力を入れ歩こうとするが、鈍痛のせいでまともに歩けない。

あたしがそんな状態になっても、銃弾は容赦なく飛んできた。

数発が体を掠め、痛みがひどくなる。

それでもなんとか逃げようとするが、


「あぐぅ!」


1発が肩を貫いた。

そのせいでまた地面へと転がる。

鋭い痛みと、焼けるような熱が傷口から体を蝕んでいく。

幸い弾は貫通しているので、足に比べれば軽症。

けれど痛みは、確実に体から自由を奪っていく。


そして何度も足を止めているせいで、ついには追いつかれてしまった。

無様に這いつくばって動けないあたしを、男が囲んでいる。


「おいお前、向こうに血の跡があったろ。あれはなんだ?」

「……」

「それと、こっちに俺達の仲間が来たはずだが…そいつらはどこにいる。」

「………」

「黙ってんじゃねえ!!」

「ごふぅ!うぐっ…」


答えに困り黙っていると、お腹を蹴り上げられた。

硬い靴先が鳩尾に刺さり、鈍い痛みと吐き気が込み上げてくる。

朝食を食べてなくてよかった、食べていたら間違いなく吐いていた。


「なあ、さっさと答えろよ!俺らの仲間をどうしたんだよ!!」

「ぐっ!ゲホ!ゲホ!」

「どうせお前が殺したんだろ!死体はどうした?今頃お前の腹の中かぁ!!」

「ち、ちがっ!あが!」

「この怪物め!お前みたいなのはさっさと死ねよ!」

「おいおい待てよ。すぐ殺すなんて勿体無い、痛めつけてから殺そうぜ?」

「おっそうだな。さすがに怪物と犯る気は起きねえし、その分楽しませてもらおうか!」


怒り狂った彼らによって、何度も蹴られ、踏みつけられる。

声を上げるとそのたびに愉快そうな笑い声が聞こえて、暴力がひどくなる。

何度もお腹を蹴られ、内臓がかき混ぜられ、ちぎれるような感覚がする。

這いずろうとして伸ばした手を踏みつけられ、爪が砕け刺さって真っ赤だ。

指先はあらぬ方向に曲がってしまい、黒ずんでいる。

そして抵抗できずにいるあたしの頭を踏みつけ、地面に押しつけながら、あたしに謝罪の要求と暴言を吐きつけ続けている。

全身を蹴られ続けたせいで、少しずつ意識が遠くなる。


…前にもこんなことがあった気がする。

この施設に来る前、あの時も囲まれていじめられた。

数人に囲まれて、小突かれて嫌がらせをされた。

あの時はどうなったんだっけ…けど、思い出せない。

…痛みのせいで、存在しない記憶を生み出しただけかもしれない。

そんな考えも目の前の暴力のせいで、すぐにどこかへ行ってしまう。


このままだと殺される。けど、何もできない。

立ちあがろうとしても邪魔され暴力を振るわれる。

いくら傷が治るとはいえ、これだけ蹴られ続ければ動けない。

それに彼らの言葉が、あたしの抵抗の意志を削り取っていく。


あたしの死を願う言葉、怪物と言われ嫌悪される。

これが悪意だけの言葉なら、まだ耐えることができる。

…でも彼らはそうじゃない。それは表情を見ればわかる、だって泣きそうな顔をしているのだから。

激しい怒りと憎しみの中に、仲間を失ったことへの悲しみを感じられる。


そんなものを見せられたら、あたしの中の罪悪感が膨れ上がっていく。

…もういいのかもしれない。

彼らの言っていることは間違ってない。あたしは怪物で、人殺し。

あたしを殺すことで彼らの気が晴れるならそれも正解だと思えてきた。

…あたしも疲れた。動けない以上、抵抗しても無駄だ。

それにここで殺されれば、頑張ったけど力及びませんでしたという言い訳もできる。

あっでも、死んだら言い訳も何もないか。


なぶる事に満足したのか、あたしのナイフを奪い取り首へと添えた。

冷たい。触れた刀身から感じる冷気が気持ちいい。

プツリと皮膚を裂き、めり込んでくる。流れる血は、ナイフと違って熱い。

瞼が重い。寝入る時のまどろみに似ている。

このまま眠ってしまえば、起きた時に全て終わっているだろう。

………………


「ぎゃあああああ!!!」

「!」


突然頭上で響く絶叫。

その声で意識が一気に覚醒する。

周りを見ると、男達があたしから離れ、他の場所に視線を集中している。

ナイフを持っていた奴は、ちぎれかけている腕を押さえながら睨んでいる。

あたしもそこに目を向けると、


「だ、誰だお前!この怪物の仲間か?!」

「…違う。仲間じゃない。」

「じゃあなんで邪魔しやがる!お前のせいで俺たちの仲間が怪我してー」

「仲間じゃないわ。でも…」

「あ、あなたは…」

「その子は私の友達よ。」


白衣にも似た上着を着た人物。拳銃を男達に突きつけながら、言い切った。

フードをかぶっているせいで顔がよく見えないが、声に聞き覚えがある。

昨日の夜、あたしを助けてくれた人。

そう…雨宮 雫。彼女がまた助けてくれた。

気づいたら5000越えて、6000PV間近に!

見てくれてありがとうございます。最後まで頑張りますので、これkらもよろしくお願いします!


モチベーションになりますので、感想コメント、いいね、評価お待ちしております。

下の星もお願いします。

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