2−8.武器庫にて
シェルターの武器は3階バリケードの前にある店に集められていた。
設置してある机の上には銃弾や部品が置いてあり、銃などが壁一面に立てかけてある。
大型の銃から小型の銃、それに刀剣やら斧、スコップなど武器になりそうなものまで集められている。
ここが本当に日本なのか疑問に思えてきた。こんな光景は映画で見ることはないだろう。
とはいえこれだけあれば元々持っていたものよりも良いものがあるかもしれない。
蔓木は他の人員に話があるそうで、あたし達がほしいものを持って行っていいそうだ。
ただ、どれが良い銃なんて分からない。舞も1人で悩みながら物色している。
「ねえ、りゅ…」
いつものように、彼の意見を聞くため声をかけようとしたところで思い出す。
そうだ…ここにいない。あたしが信用できないから、離れて行ったんだ。
あんなことを言われても、すぐに切り替えれるほど器用じゃない。
それにこの施設で一番付き合いが長いのは彼だ。色々助けられたし、助けてきた。
だからこそ言われた言葉が今も忘れられない。
だけどあの時、あたしが言った事が間違っているとは思えない。
むしろなぜ自分たちを襲った人間を簡単に信じられるのだろうか。
もしかして脅されたりとか…いや、そんな様子じゃなかった。もしそうだとしても、3人だけの時に言うこともできた。
…わからない。なんで、あたしよりもここの人たちの方が信じられるの?
やっぱり龍之介はあたしのことを利用していただけだった?他にもっと頼れる人ができたから、あたしを切り捨てたって事?
考えれば考えるほど、用済みになったあたしを切り捨てたという考えになっていく。
あの時どうするのが正解だったのか…
「おいお前らここで何してる!」
「ぴゃっ!な、なんですか?」
怒鳴りながら入ってきたのは、このフロアに来た時会った男。
怯えながらも話を聞こうとしている舞を無視してあたしを睨んでくる。
なんであたしが睨まれなきゃいけないのか、はっきり言って不快だ。そう思い睨み返す。
周りにいた人たちは険悪な空気を感じ取ったのか去っていく。
「何?あなた達のリーダーに許可もらってるんだけど。」
「ああん!!んなわけねえだろ!俺らの仲間を殺したやつになんで蔓木さんが武器を渡すんだよ!」
「そう思うなら聞いてくれば?ああー、下っ端には教えてもらえないか。」
「んだとコラ!てめえは仲間の仇だ!この場で殺してやんぞ!」
ああ、本当にうっとしい。
今は龍之介の件でイライラしている。こんな面倒なやつに構っている余裕はない。
そう思うだけにするつもりだったが、思わず口から漏れていた。
「きゃんきゃんうるさいな…。」
「なんだと…ふざけんな!本当にぶっ殺すぞ!」
「何?まさか図星だった?あ〜ごめんね?…下っ端君。」
「てめぇ!!」
あたしの挑発に乗って殴りかかってくる。
拳が顔面に向かってくるが、当たる前に腕をとり背負い投げのように床に叩きつけた。
多少手加減はしたがそれでも相当痛かったようだ、まあ床が硬いから当然か。
痛みで呼吸できないのか、床で小刻みに震えながら忌々しげにこちらを睨んでいる。
少しスッキリした。これで喧嘩を売ってきたことは許してあげよう。
「うっとしい。いちいち突っかかってこないでよ。」
「へ…仲間…に切り捨て…られたくせに。」
「…あ?」
その言葉を聞いた瞬間何かが切れた。
残っていた理性がどこかへと飛んでいき、仰向けで喚いている奴の腹を踏みつける。
あたしの足を掴んで退けようとしたが、あたしの方が力が強いからか全く動かない。
「あんたさ…あたしを仇とか言うけど、先に殺そうとしてきておいて何様なの?殺そうとしてきたんだから、殺されても文句ないよね?」
「な…に言って…ぐ…」
「さっきあんた、あたしを殺すって言って殴りかかってきたよね?つまり殺されても文句ないよね。」
「ふざけ!っがは!」
少しずつ踏みつける強さを上げていく。最初はすぐに辞めると思っていたようだけど、一向に辞める気配のないあたしに余裕がなくなっていく。
何度も足を殴りつけ退けようとしてくるが、あたしはどけない。
彼の表情が怒りから困惑へと変わり、今は恐怖に変わっている。
「結さんやりすぎですよ!」
「結さん早く殺してくださいよ♪」
2人の舞がそれぞれ真逆のことをあたしに言ってくる。おかしな状況のおかげか少し冷静になれた。
確かに少しやりすぎたかもしれない。龍之介のことでイライラしていたから八つ当たりをしたのは否定できない。
足元のやつを殺すことに関しては何も思わないけど、ここだと後が面倒だ。
仕方なく足をどかそうとすると、
「良いんですかぁ?そうやって甘さを見せると、静華さんの時みたいになりますよ?」
瞬間怪物になった静華とのやりとりがフラッシュバックする。
感情が引いて、心が冷たくなっていく。
…ああ、そうだ。あの時も期待して甘さを見せてしまったから酷い目にあった。
今だってそうだ。ここでこいつを逃してもいずれ仕返しをしにくるだろう。
そうならないためにはどうするか。簡単だ、その原因を排除すればいい。足元の屑を殺しておけば済む話だ。
このまま力を込めて踏み抜けば…
「それ以上はダメです!」
「っ!」
舞に後ろから抱きつかれ、止めた。
足を退けると男は、四つん這いになり逃げ出す。
その姿があまりに情けなくてどうでも良くなってしまった。
そんな情けないやつに舞が話しかける。
「怪我をさせたことは謝ります、ごめんなさい。…でも、あなたにも悪い点はあります。結さんに謝ってください。」
舞はあたしがした事を謝罪した後、逆に謝罪を要求し始めた。
まさかそんな言葉が舞から出るとは思わなかった。
けど、こんな状況で聞ける謝罪なんてその場限りのものだ。それならないほうがましだ。
「いいよそんなの。あたしは」
「ダメです。酷いことを言われたのですから、謝罪してもらうべきです。」
「え、あうん。」
「だ、だがそいつは仲間を!」
「あなたにも言い分があるのはわかります。ですが、こちらがされたことを少し考えてみてほしいです。」
そう言われた男は俯き、考え始めた。きっとあたしの自分をあたしの立場に置き換えているのだろう。
顔を上げた彼は申し訳なさそうな顔をしていた。
「……悪かった。そうだな、俺もお前らの立場だったら怒るのは当然だ。」
「じゃあもうわたし達に酷いことを言わないでくださいね?」
「ああ、本当に悪かった。その…神代、酷い事を言ってすまなかった。」
「…こっちこそ怪我させてごめん。少しイライラしてて。」
互いに謝罪しあい、先ほどまでの殺伐とした空気から変わった。
…すごいな。あたしは殺す事でしかなんとかできないと思っていたのに、舞は会話で解決してみせた。
あたしも最初の頃はそうだったはずなのに、なんで…こうも違うのか…
そう考えていると男が、
「なあ違ったら悪いんだけど、どの銃を選べばいいか迷ってるのか?」
「はい、そうなんです。わたしチンプンカンプンで…」
「もしよかったら、俺が選ぼうか?そのさっきのお詫びみたいな。」
「本当ですか!ぜひお願いします!結さんもどうですか?」
「…あたしはいい。舞だけ選んでもらって。」
そう言って2人から離れた。
舞は男の言うことを聞きながら武器を選ぶ。さっきと違って友好的な彼は真摯に対応している。
あたしも離れた場所で銃を手に取り選んでみるが、よくわからない。
選んでもらうべきだったかもしれない。…でもどうしても信じきれない。
もしかしたら不良品を渡されるかもしれない。そう考えてしまい、頼ることができない。
前のあたしならできていたと思う。
初対面の相手でも話を聞いて、仲を深めようとすることができていた。
でも今のあたしにはできる気がしない。
どうしても相手を疑ってしまい、仲を深めるために踏み出すことができない。
本当はあたしだって…でもそれが正しいのか、どうすればいいのかわからない。
後ろで楽しそうに話す2人の声が聞こえる。
その声が聞こえるたび疎ましさで頭痛がする。あたしは聞こえないふりをして武器を選び続ける。
結局持ち出したのはマチェットを2本だけ。銃は拳銃とショットガンがまだあるから必要なかった。
舞はサブマシンガンという銃を選んでいた。連射ができて扱いやすい銃らしい。
「これでもっと役に立てますね!」
そう言って笑ってくる舞にあたしは生返事しかできなかった。
用も無くなったので怪物が来る時間まで、人がいない場所で休むため武器庫を後にした。
2人が話している時、確かに疎ましいとは思っていた。…でも本当はこう思っていた。
羨ましいと…
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