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EDEN  狂気と裏切りの楽園  作者: スルメ串 クロベ〜
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2-7.亀裂

人狼を始末した後、ひとまずシェルターの中へと戻ることに。あたしの怪我の具合が心配だそうだ。

蔓木は怪我の治療と言っていたが目の前で治ったのを見てるはずなのに。

まあ協力した報酬をまだもらっていないので、それをもらったらここから出ていくつもりだ。


蔓木と話をしたゲームセンターの奥で彼女がくるのを待つ。

その間、誰も話そうとしない。あたしは壁に寄りかかって入り口を見張る。

龍之介はさっきのことを反省してるのか、椅子に座って俯いている。

舞はたびたびこちらを見て何か話そうとしているけど、うまく言えないのか話しかけてくることはなかった。

そんな気まずい空気が流れていると、救急箱を持った蔓木が現れた。


「お待たせ。話す前に検診をしよっか、神代さんだけでなく、雪原さんもケガとか病気してないか確認した方がいいから。真壁君は後でするから外に出ててね。」

「わかりました。…俺は他の人に話を聞いておく。終わったら連絡してくれ。」

「うん、よろしく。」


蔓木以外の人からも話を聞いておきたかったからちょうどいい。

正直検診なんて受けたくはなかったけど、舞に異常がないかは知りたかった。

あたしと舞はおとなしく、検診を受けることにした。採血までさせられたのは面倒だった。

一通り体を調べてもらったが、目立った怪我も病気なく健康そのものだそう。


あたし何度か体貫かれたりちぎれたりしてるけど、その痕も残っていない。…完全に人間じゃない。

そういえば蔓木はあたしとは違うのだろうか。思えばさっきの戦闘も戦ったのはほとんどあたしだ。

けど舞にも今の所変化がない。個人差があるのだろうか。

舞の検診をしている蔓木に質問する。


「蔓木さんは変異後、何か変わったことってなかったですか?」

「ん?身体能力が少し上がったくらいかな。だから怪物が出た時は、囮になって引き付ける役目を請け負ってるかな。」

「そうですか。他の方はどうなんですか?変異で何か変わった能力を持った人とかは。」

「私と似たような感じだね。でも、未道君は少し違ってたかな。思考が早くなった?って言ってたから。」

「未道?その人は今どこにいますか?」


そう聞くと気まずそうに顔を逸らした。

何かあったのか…


「その…前に他の人と揉めたせいで、何人かと出ていっちゃって。このフロアにはいると思うんだけど。」

「連絡できないんですか?」

「出てくれないの。多分まだ怒っているんだと思う、一応私がここのリーダーだから。」

「…連絡拒否って一体何したんですか?」

「それが具体的な原因がわからないの…」


原因を探るため話を聞いてみたが要領を得ない。

状況によるストレスや食料問題、人間関係など色々なことに不満が溜まっていったのが原因としか言えない。

それが本当かはわからないけど。ただ、あたしと同じ変異者…覚醒者だっけ?には話を聞いておきたい。


「はい終わり。2人とも大丈夫そうね。よかった、こんな状況だから小さな怪我や病気でも侮れないから。」

「ありがとうございます。さてそれじゃあさっき手伝った報酬をもらえますか?」

「そうね。何が欲しいの?」


欲しいものはいくつかある。

武器、情報、人材。そして、


「Mカードって持ってますか。」

「えっ!?」


記憶だ。

幸い使える機械は押さえている。後はMカードがあれば記憶を取り戻せる。

椅子に座っていた舞が勢いよく立ち上がって何か言おうとしているが無視する。


「ごめんなさい、手持ちはもうないの。全部使ってしまって…」

「!使ったってことは、使える場所がこのフロアにあるってことですか?」

「ええ。2階の北側広間にある部屋で使える。でもMカードがもうないから使えなくて。」

「今まで持っていたのはどこで手に入れたんです?」

「えっと…元々何人かが持っていたの。…その人達が怪物になって、その怪物を倒した人達がもらったの。私もその1人。後は未道君と、誰だったっけ…」

「それじゃあ、もうここじゃ手に入らないか…」

「そうなるかな。ごめんなさい…」

「…よかった…」


これに関しては仕方がない。

…舞が安堵しているのは気にしないことにした。

そうなると、欲しいものは情報か武器。

ただ情報に関して聞けば普通に答えてくれそうだし仕方がないので、武器をもらうことにした。

その前に龍之介の検診を先に行うこととのことなので、終わり次第もらうことに。

連絡してしばらくすると龍之介が来たので、あたし達も他の人たちに話を聞きに行くことにした。









舞を連れてシェルター内を回る。

エスカレーターは前のフロアと同じで繋がっていなかったけど、エレベーターが動いている。

そのおかげか、このシェルターは3階だけでなく、1、2階にもバリケードを張って怪物が入ってこないようにしている。

1階には果物や野菜などの食材店が並んでいる。ただ何日も経っているせいか、空っぽの棚がいくつか見えた。

流石に腐ってきているのだろう。前に見た肉などは冷凍のものかもしれない。

それにしても、このままだといずれ食料不足になって暴動でも起こるんじゃないかと思うが、他の人は把握しているのだろうか?

でも誰でもここ来れるってことは、みんな分かっているんだろう。蔓木が上手く押さえているのかもしれない。


2階には寝具店、それと保育所のような場所がある。

なるほど3階の布団はここから運び出したのか。それに保育所には小さいけど、お風呂とシャワーがあった。

生活に必要なものは全部揃っている。ここにシェルターを使ったのは賢いと思う、武器は3階にあったし。


次にここにいる人に話を聞く…はずだったけど、問題発生。

話しかけても無視されるか、どこかにいってしまう。

おそらくあたしがここの人間を殺したことが知れ渡っているのだろう。

実際あたしには話しかけてこないのに、舞には話しかけてくる人が何人かいた。


確かに仲間を殺した人間と話そうなんて思う人はいない。けど、先に手を出していたのはこいつらなのだから不服だ。

それよりも舞に話しかける人達が気になることを言っている。


「雪原舞!まさか実物が見れるなんて…!あの、サインとかもらえませんか?!」

「…あのすみません。どこかでお会いしましたか?」

「ん?ああごめん、記憶ないんだっけ?まあ俺も覚えてないけど、ほらそこにポスターがあるから。」


ん?え?ポスター?

指をさしている方を見ると、煌びやかな衣装を纏った笑顔の舞のポスターが貼ってあった。

…あー、確かに可愛いとは思ってたけど、まさか本当にアイドルだったとは。

何人か写っている中で中央に写っているってことは、リーダー的存在だったのかな?

恥ずかしかったのか、舞が顔を真っ赤にしてポスターを剥がしていた。


「うー…なんでこんなの貼ってあるんですか…」

「可愛いからいいと思うけど。それにしても舞、アイドルだったの?」

「はい、そうだったんです!結構人気だったんですよ?」

「そうなんだ。へー…」


…ごめん舞。あたしそういうのにあんまり興味ない。

けど人気があったってことは、きっとすごく努力したんだと思う。

ここから出れたらみてみたいと思う。


「それなら早くここから出ないといけないね。」

「はい!がんばります!ここから出たら、結さんにサインします!」

「あ〜うん、ありがと。」


そう話していると、Gフォンが震える。

画面を見ると龍之介から連絡が来ていた。どうやら終わったようだ。

舞にもそのことを伝え、蔓木のところに戻ることにした。









蔓木のところに戻ると、ある提案をされた。


「ねえ、今日はここで休んで行かない?」


色々と問題はあるけど、正直悩みどころではある。

まだ安全な場所を確保できていない以上、ありがたい話だ。

今から休める場所を探すのは大変だし、安全な場所がある確証もない。

ただこの人達を信用できない。寝ている時に襲われるかもしれない。

そう考えると、ここにいるのも安全とはいえない。


それに外出禁止時間がないのなら、夜通しフロアを探索することもできる。

ここから出ていった人にも話を聞いておきたい。

それにここにいる人達にあまり情を抱くようなことをしたくない。

あんまり情を抱くとやりずらくなるかもしれない。


そう考えるとやっぱり出ていく方がいい。

色々と考えていると、舞が小声で話してくる。


「…あの結さん。わたしはあまりここに長居したくないです…」


ちょっと意外だ。舞ならここに残った方がいいと言うか、あたしについてくると言うと思っていた。

けどあたしと同じ考えなのは少し安心した。

それにしても、あまり自分の意見を言わない舞が言うってことは何かあるのかもしれない。


「ここだと結さんを殺せないからじゃないですかぁ?」


幻覚の舞がそう囁いてくる。

…うるさい。


「理由を聞いてもいい?」

「えっと、自分でもわからないんですけど…何か嫌な感じがするので。」

「…つまり勘ってこと?」

「…そうなります。」


勘か…まああたしもここにいたくないし、舞なりに何か感じているものがあるのかもしれない。

出ていきます。そう言おうとした時、


「なあ結。せっかくこう言ってくれてることだし、ここで休まないか?」

「…え?」


龍之介がそう言ってきた。

…あたし達は蔓木に少し外して欲しいといい、3人で相談することにした。

終わり次第連絡するため、蔓木と連絡先を交換。蔓木が出ていった後、話し合いを始める。


「ねえ、龍之介。どうしてそうしたいか聞かせてくれる?」

「今日は色々あって疲れてるだろ?ここなら安全だし、食料の心配とかもない。他に休める場所があるかどうかわからない以上、世話になったほうがいいだろ?」

「…その世話になる人達は龍之介のこと殺そうとしたんだけど?なんで信用できるの?」

「こんな状況なんだからみんな殺気立つのは仕方ないだろ。それに話をしてみたらいい奴らばかりだったし。」

「あたしにはそうじゃなかったけどね。」

「大丈夫だ。蔓木さんとも話したが、他のやつには話をつけてくれるそうだから心配ないさ。」

「あたしはここにいる人達が信用できないの。話をつけるって、信用できない人がつけても何も意味ないよ。」

「なあ結、そこまでムキにならなくてもいいじゃねえか。誰にだって間違いはあるし、ここは素直に好意に甘えた方が」

「…本気で言ってるの?」

「え?もちろんだけど。」


あたしは椅子から立ち上がると、龍之介の胸元を締め上げた。

龍之介の言いたいこともわかる。

確かにここには人も多いし、食料もある。今から他の場所を探すよりも危険は少ない。

けど、それ以上にここに奴らは信用できない。


いい奴ら?誰にでも間違いはある?

確かに誰だって間違えることはある。だからここにきた時、あたし達を撃ったことは仕方がないことかもしれない。

けどそれは1発だった場合だ。

ここにいるやつらはあたし達を見つけると、何発も撃ってきた。これが間違い?どう考えても故意だ。


撃ったやつの独断という可能性もあるけど、それならなんで他のやつは撃っている間止めようとしなかった?

つまりだ。あれは独断でも、間違いでもない。意図的にやったことだ。

そしてそれを指示できる人間は限られている。

そんな奴がいい奴なわけない。だというのに、目の前のこいつは一体何を言っているのだろう。


「おい、離せよ。流石に怒るぞ。」

「ねえ、なんでそう簡単に大丈夫だなんて言えるの?」

「あ?さっきも言ったろ、ここの奴と話したって。それにここのリーダーが大丈夫だって言うなら大丈夫だろうが。」

「あたし達を殺すように指示したかもしれない人の話を信じるの?」

「全部は信じてねえよ。けど、さっき蔓木さんとも話して信じてもいいかもしれないって思ったんだ。」

「だから、そいつが殺すように指示出したかもしれないのに、なんで信じられるの?!」

「なんだっていいだろ!いい加減離せ!」


振り解くように腕を払われた。

…痛い。怪物達に傷をつけられた時よりも、ずっと痛い気がした。

胸が締め付けられる。なんで龍之介はあたしの言うことを分かってくれないのか理解できない。

もしかして既に蔓木達と裏切るための話をしたのかもしれない。

だってここには戦える人が何人もいる。だからあたしは必要ない。

だからもう一緒にいる必要がないから、あたしが出ていくのがわかっていて言っているのかもしれない。

試すように聞く。


「…じゃああたしだけ出ていくって言ったら、龍之介は残るの?」

「当たり前だろ…今のお前よりはここのやつの方が信じられるね!」

「っ!」「龍之介さん!」


その一言で足元が崩れるような思いだった。

今までなんのためにこいつを守ってきたのだろう。

…もういい。説得しても無駄みたいだし、これ以上話したくない。


「…そうわかった。舞はどうする?ここに残っても」

「わたしもここから出ていきます。結さんを1人にできませんから。」

「…ありがと。それじゃあ龍之介、あたし達はここから出てくから。」

「本当にいいのか?ここにいればお前が危険な目に」

「もう黙って。これ以上あんたの話なんて聞きたくない。」


そう言って蔓木に連絡をした。

連絡してすぐに現れる。…もしかして聞いていた?

まあ聞かれても、別に構わない。どうせすぐに出ていくのだから。


「話はまとまった?」

「あたしと舞は出ていきます。なので真壁さんをお願いします。」

「そっか…残念。でも出ていくなら後2時間ぐらいは待ったほうがいいかな。」

「?それはどうして?」

「毎日8時ぐらいになると、北か南の壁が開いて、そこから怪物が出てくるの。出ていくならそれを倒した後にしてほしい。」


なんでそれをさっき言わないのか…

まあおそらくだけど、休む場所を代わりに手伝えって言うつもりだったのだろう。


「要するに手伝ってほしいってことですか。」

「そう言うこと。渡せるものは食べ物ぐらいしかないけど、1人で戦うよりは危険は少ないと思うの。どう?」

「…これで最後にしてもらえるなら、手伝います。後、武器を多めにください。また壊されたら面倒なので。」

「わかったよ。じゃあついて来て、武器庫を案内するから。真壁君は見張りの人達に連絡するから、その人達から指示をもらって。」

「わかりました。…じゃあな…」

「…………」


その言葉を聞こえないふりをして流した。

あたしと舞は蔓木の後をついて武器庫に向かった。

…ずっと苦しくて、泣きそうになるのを我慢しているあたしを、舞が心配してくれたのが悲しかった…

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