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EDEN  狂気と裏切りの楽園  作者: スルメ串 クロベ〜
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2-4.再び始まる…

前回のラストを少し変えました。今後しないように気をつけます。

ベッドに寝そべりながら2人を待つ。

…舞はまだ浴室から出てこない。何度か扉を通して声をかけたが、大丈夫という返事しか返ってこない。

ずっと泣いているのか、聞き耳を立てると啜り泣く声が聞こえる。

でもどう声をかけたらいいのか…分からない。

それに、


「合わせる顔がないですよねぇ?わたしのことをこんな風にしたのに、平気な顔をして会えるんですかぁ?」


舞の姿をしたやつが、あざだらけの姿でそう言ってくる。

実際その通りだ…幻覚とは言え、仲間に酷いことをした罪悪感がある。

会って話している時に、傷だらけの舞が視界に入れば嫌でも意識してしまう。

…それに本物の舞に手を上げないか、不安になる。


結果何もできず龍之介を待つしかなかった。早く戻ってきて…



それから数十分後に龍之介が部屋から出てきた。

あたしの顔を見るなり、苦虫を噛み潰したかのような顔をし始めた。

…龍之介に対しても何かしたのかもしれない。


「…おかえり。どう…だった?」

「あっ、ああ…いや〜まあ実習期間のことは思い出せたなぁ…結構ショックだったな…」

「龍之介も?2人とも一体何があったの?」

「ちょっと言えそうにない。ま、まあ大したこと…だけど、そのうち話すわ。」

「…わかった。そうだ、悪いけど舞を浴室から出すの手伝ってくれない?ずっと泣いてるみたいで…」

「そうなのか?わかった。」


龍之介が浴室に向かうと…扉を開けた。

…まさか開けるとは思わなかった。一応女性が使ってるとか考えないのかな…

龍之介に続いて中に入ると、舞が座り込んで泣いている。長時間泣いているからか、目元が腫れて赤くなっている。


「舞大丈夫か?立てるか?」

「…あ…龍之介さん。っ!…結…さんもいたんですね…」


舞があたしを見る目…その目からはあたしへの怯えや恐怖を感じる。

あたしが少しでも近づこうとすると、体を震わせている…

……ダメだ、ここにいられない。…いたくない…


「……ごめん、わたし外出待ってる。2人も準備が終わったら来て…」

「え、は!?ちょっ結?!」

「…あっ…」


あたしは自分の鞄を掴んでセーフルームの外に出る。…けれどすぐにその場にへたり込んで、扉の前から動けなかった。

今は何も考えたくない…舞に怖がられているという事が、心に突き刺さって胸が痛い…

舞だけじゃない龍之介も、あたしに何か隠している。もしかしたら龍之介もあたしのことを怖いと思って…


「それは当然じゃないですか…だって仲間にこんなことする人ですよ?わたしなら一緒にいたくないですね〜。」

「…それは…」

「ほら、扉に耳を当ててみてください。2人があなたのことを話してますよ?」


…言われた通り、扉に聞き耳を立てる。

2人の会話が聞こえる。


「なあ、結のこと思う?」

「怖いですね。さっきも殺されるかと思いました。」

「そうだよな…けどよ、あいつがいないと怪物に会った時大変だろ?だからさ。」

「ふふ…そうですね。しばらく利用しておきましょうか。バレないようにしましょうね?」

「わかってるよ。バレて殺されたらたまらないからな〜、はははは!」

「そうですね…ふふふ…あはは…!」


扉前から飛び退いた。…寒い…全身から血の気が引いているのがわかる。

違う2人はこんなこと言わない。絶対に違う…はず…

けどもしかしたら、これが2人の本音なのかもしれない…あたしと一緒にいるのは怪物から守ってもらうためだけで、それ以上は求めてないかもしれない。

でも信じたくない…だってこれが本当のことだったら、今まであたしがしてきたことは一体なんだったの…


「…違う…2人はこんなこと思ってなんか…」

「本当にそうですかぁ〜?今までだってずっと利用されてきたじゃないですか〜これまでと変わらないですよ…ふふふ…」

「そんなんじゃ…あたしは…」

「そうしたくなるほどの思い出、だったんじゃないんですかぁ?相当悪人だったかもしれないですね〜結・さ・ん♪」

「…そんなの知らない!あたしじゃない!あたしは…あたしは……!」

「ふーん?まあ過去は知りませんが、今だって相当悪人じゃないですか。このあざ見えないんですかぁ?痛かったですねぇ〜。」

「っ!…………もういい……」


…あたしは何も聞いてない。

さっきのだって幻聴だ…絶対そう…きっと…そのはずなのに…

今だって2人があたしのことを笑っている声が聞こえる気がする。…涙で前が滲んでよく見えない…

聞かなかったことにしようとしても、幻聴だと思い込もうとしても……さっきの会話が頭から離れてくれなかった。








数分後後ろから扉が開く音が聞こえて、2人が荷物を持って出てきた。

でもあたしは2人を見ることもできない。…今だってあたしのことを笑っている気がして怖い…

振り返ることなく立ち上がり、別フロアへの扉へ向かう。

後ろで何か言っているようだったけれど、あたしには何も聞こえない…分からない…


扉には機械が取り付けてあり、Gフォンをかざせば開くのだろう。

ここを開けばまた始まる。

怪物達との戦い…狂気に飲まれた人間との争い…少ない物資を奪い合う諍い…待っているのは生きるため、誰かを殺して奪う戦い…

恐怖は全くない。…いや正確にはある、それは自分に対してのものだ。

怪物達はもう殺せる。、人間だとしても容赦なく殺せる。…そう思えてしまう自分が怖かった。

罪悪感なんてものはゴミのように捨てた。倫理観はとうに狂った。善意なんてものは建前分しか持ち合わせてない。

なんで生きたいのかも正直分からなくなっている。…なんであたしはここから出たかったんだっけ…

…もう難しく考えるのはやめよう。必要なことはただ一つ、殺されそうなら殺す。

うんそうだこれでいいあたしは間違ってない絶対に正しい邪魔するやつは皆殺しにして黙らせてあたしは正しい殺すことだけ考えていればいいそうしていればいい仲間を守る殺す殺す殺す…それが正しくて間違ってなくて一番楽しいことのはずだから…


「…い…ゆ……結!おい!聞こえてないのか?」

「っ!」


龍之介の声で思考が途切れた。

…あたし何を考えて…ああでも大事なことは忘れてない。


邪魔する奴は全員殺す。そうすればわたしが全部正しいことになる。

そうだ…忘れない。コれダケは絶対間違ってナイ…


「…ごめんちょっとぼーっとしてた。」

「まあそれならいいけどよ…疲れてるんじゃないか?」

「それはみんなそうだから関係ない。じゃあそろそろ行くよ」

「あの!結さん…さっきのこ」


全てを聞き終わる前に機械にGフォンをかざして扉を開いた。

…今は聞きたくない。それに集中しないといけない、この先に何があるかわからないんだから。

…さあまた始めよう。楽園で起こる、地獄の日々を…



扉を潜った先は見慣れた風景。

ショッピングモール…前のフロアと同じだ。

けどこの事はわかってた。外出禁止時間で見たらか知っている。

ただ違うところがある。それは…至る所に銃痕があることだ。


前のフロアだと銃を撃っている人間は少数だったからか、怪物の傷跡の方が目立った。

けどここは違う。床、壁、柵至る所に丸型の凹みが出来ている。

つまりこのフロアは、ほとんどの人間が銃を持っている。そしてそれを使う理由が存在している。

怪物を殺すために使ったのか…それとも、人間同士で争うために使ったのか。

確認するためにも早くこのフロアの状況を把握する必要がある。


そのためにも人を見つけないと…誰かいな

瞬間視界の端に何かが通り過ぎるのが見えた。

小さなつぶ。楕円形をしたそれは…銃弾はあたしの数m前からこちらに向かってきている。

あたしには当たらない。…けどこの軌道は……龍之介に当たる!

時間がゆっくりになったように飛来物は数cmずつ彼に迫っている。このままいけば龍之介の脳天を貫き、頭が弾け飛ぶだろう。


「つぅあああぁぁ!!!」


ゆっくりと流れる時間に逆らうように体を動かしマチェットを振るう。

銃弾を切ったところで分かれた破片が当たる確率が高い。それに刀身が砕けるかもしれない。

だからあたしは銃弾に刀身を合わせ、重なった瞬間上へ払い上げた。

時間の流れが戻り、送れるように発砲音と着弾音が響いた。冷や汗が流れ、地面に落ちる。


「誰だ!!出てこい!!」

「な、今何が起こって…」

「2人とも下がって!どこかから狙撃されてる!っ!また!」


拳銃よりも早い速度で銃弾が飛んでくる。

ただ発砲の間隔が長い。…おそらく龍之介が使っていたライフルでこちらを狙っているのだろう。

人数は1人。…いや撃ってこないだけで、他にもいる可能性はある。観察している間にも銃弾は飛んでくる。

このまま受け続けるとマチェットが持たない。…そうなる前にやることは決まっている。


次弾が飛来したと同時に、2人を後ろに押し倒して走り出す。

放たれた銃弾は同じ場所から向かってきている。なら撃っている奴はそこにいる、近づいてしまえばライフルじゃあたしを殺せない。

マチェットを右手に持ち、左手に拳銃を構え突進する。

…見えた。数件先の店の陰、半身だけを乗り出してこちらを見ている奴が…殺すべき奴が。

そいつは見つかったことに気づいたのか、逃げ出そうとしている。

…絶対に逃さないこいつは絶対に許さない。あたしを…あたし達を殺そうとする奴は、誰であろうと全員殺す。

こいつはその見せしめだ。手足を切り落として、動けないようにしてから殺すことにしよう…


相手との距離はもう目と鼻の先。

それに焦ったそいつは懐から拳銃を取り出し、焦りながら構えようとしている。


「くっ!こいつ…死ねよ!死」

「遅い。」


けど遅い。

だからこちらに向けた瞬間、銃を手首ごと切り落とした。

絶叫。耳をつんざくような男の叫び声がこだまする。無くなった手を必死に繋げようとしているが、切り落とされたそれではもう掴む事はできない。

切り落とされた断面から血が噴き出て流れ続けている。あたしは男の顔を蹴り上げた。


「ぐああああああ!…く…くそぉ…いてぇ…いてえよ…手…俺の手が…」

「黙れ。いいから聞かれたことに答えろ。そうすれば、苦しむことなく殺してあげる。」

「ふざけんな!こ、殺せ!殺せよ!こんな…ああ…こんなんじゃ俺もう…ああ…あああ!」

「うるさい!」


太ももにマチェットを突き立てた。

痛みにのたうち回るが、足に刺さっているせいで転がるたびに傷口が広がっていく。

…ズボンが湿っている。こいつ漏らしやがった…あたしの武器が汚れる…

腹が立ったので鼻の骨を蹴り砕いた。至る所から血を流しているこいつは、あと数分で失血死するだろう。

せめて死ぬ前に役に立って欲しい。


「ねえ、ここではあんたみたいなのがよくいるの?」

「うぐ…あぐ…あ、あし…手…てぇ…俺の…」

「答えろ!!」

「ひぃ!…あ…お、俺は頼まれて……見張りを…してただけで…知らないんです!すみません…すみません!すみません!助けてください!俺の手ぇ!手を返してくださ」

「黙れ。役立たずが…死ね。」


男の髪を掴んで地面に叩きつけた。そして立ち上がる前に、その頭を踏み潰した。

体が跳ねるように動いている、脊髄反射というものだろうか。

…使えない。わかったのはこいつに頼んだのがいるということだけ。

仕方がない、戻ろう。

そう思い2人の方を見ると…数人の男が2人に銃を突きつけているのが見えた。


「お前ら何をしてる!そこの2人は」

「動くな!…少しでもおかしな真似をしてみろ、この2人の命はないぞ。」

「………わかった。そっちの要求は?」

「おい!そんな奴の話なんて聞く必要ないだろ!そいつは拓也を殺したんだぞ!?」

「そのままそこに跪いて待っていろ!…どうするかはリーダーが決める。」

「待つ必要なんてないだろ!今すぐそいつを殺したほうが!」

「黙ってろ!…もし、この2人を殺したりしてみろ…あいつは俺たちを皆殺しにするぞ…」

「…よく分かってるじゃない!その2人に怪我の一つでもさせたら、生まれてきたことを後悔させてやるから…!」

「大丈夫。私たちはあなた達に危害は加えないから。」


後ろから声が聞こえ、思わず振り向きそうになる。

落ち着いた女性の声。どうするか考えていると、あたしの横を通り姿が見えた。

…あたしよりも年上の白衣を着た女性だ。医者…いや保険の先生の方が印象としては近い。

そのひとは足元の死体を見て悲しそうな顔をしている。すぐにこちらに向きなおり話を始める。


「こんなだけど自己紹介させてもらうね?私は蔓木 真白 (つるき ましろ)。あなたは?」

「…神代 結。」

「神代結…そうあなたがそうなのね…。少し話をさせてもらえない?あなたも状況を知りたいでしょ?」

「そうですね。けどその前に、あいつらをなんとかしてもらえますか?話はそれからです。」

「…そうね、分かった。あなた達!そこの2人を離して!」

「………わかりました!ほら立て…行っていいぞ。」

「クソ!なんで…そいつらは仲間を…!」

「納得していない奴がいるみたいですが、2人を離してもらえたのでひとまずは信じます。」

「そう!よかった…。それじゃあ話は私たちの拠点でしましょう、ついてきて。」


そう言って歩き出した蔓木さんについていく。後ろからあたし達を囲むように男達が後ろをついてくる。

今はおとなしくついていくしかなさそうだ。…今は。

こいつらはあたしの仲間に銃を向けた。その前には撃ってきた。殺す理由としては十分すぎるほどだ…

だから必要なことを聞いたら殺す。1人残らず、全員殺してやる……ああ、少し楽しみだ。

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