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EDEN  狂気と裏切りの楽園  作者: スルメ串 クロベ〜
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1-0.実験の始まり

…硬い…頬に当たる冷たさで、自分が今床で寝ているとわかる。

重たい瞼を開き、メガネの位置を直しながら立ち上がる。

………なんで私ショッピングモールにいるんだろう?


周りには制服を着た男女が何人もいる。

おそらく二、三十人くらいいると思う。

他の人も私と同じく、今の状況についていけず慌てている。

どうしようか考えていると、派手な見た目の女の子に話しかけられた。


「ねえ、あんた!ここがどこか教えなさい!」

「えっいえ、その…私もどこかわからないんです…」

「はぁ〜?何よあんた、優等生ぽい見た目しているくせに使えないわね…」


…悪かったね、優等生ぽい見た目なのに使えなくて。

けど私これでも…これでも…なんだっけ?

あれ?私目が覚める前は何してたっけ…そもそも…私は誰?


あれ…あれ…あれ?!何も思い出せない!

周りの人も同じなのか、端々で記憶に関する会話が聞こえる。

私も確認するため、さっき話しかけられた人に聞いてみる。


「あ、あの!…私が誰かって…わかります…か?」

「知るわけないでしょ!あたしだってわかんないのに…なんなのよ!」


…この人も覚えてない。周りの人も私たちの会話を聞いて、各々が確認している。

けど、覚えている人は1人もいなかった。

この人数が同時に記憶喪失…絶対おかしい…

このことを受け入れられない人たちが、パニックになって走り出しているのが見えた。


どうしよう…わかんないよ…

パニックになりそうなのを必死に抑え、落ち着こうとするけど…無理…

この状況で落ち着ける人はきっと、心臓に剛毛が生えているに違いない。

周りの人たちも慌てはじめた時だった。


『あーあーテステス…聞こえるかね?ふむ聞こえているようだな。諸君初めまして、私は君たちをここEDENへ連れてきたものだ。』


突然聞こえた放送で辺りが静まりかえった中、どこか偉そうな男性の声が聞こえた。


『今の状況に混乱しているものも多いだろう。諸君らにはある実験に協力してもらいたくてね…』

「…じ…っけん?」


実験…その言葉を聞いた時、知識の中にある漫画の内容を思い出す。

実験と称して、人間を連れ去り殺し合いをさせる…そんな内容だった。

今の状況はそんな漫画の中でしかないような、現実とは思えない状況だ。


『実験内容はシンプルだ、これから君たちがいる場所に怪物を放つ。それを君ら自身の手で倒す…それだけだ。』

「はあ?怪物とか何言ってんのよ!さっさとここから帰せよ!」


派手な女の子がそう叫ぶと、周りの人たちも同調して各々暴言を吐いている。

…私も一応参加した。


『黙れ!』


スピーカーから聞こえた一喝で場が静まりかえる…


『貴様らに拒否権はない。生きてここから出たいのならば、貴様らの手で…怪物を倒すことだ。そのための武器も用意してある、まあ数に限りはあるがね…』

「…早い者勝ちってことか…」


誰かがそう呟いた。

言った本人は声に出したつもりはなかったんだと思う。

けど、今の静かな空間にそのつぶやきは大き過ぎた…


『さあ行け!すぐに怪物が来るぞ!クク…生き残りたければ戦え!』


声が途切れた瞬間、その場にいた人間が一斉に動き出した。


「きゃ!」


人の波に飲まれ、地面に倒れ込む。

走っていく人たち他の人たちを邪魔しながら、辺りを探しはじめた。

言い合いならまだしも、殴り合いの喧嘩を始める人までいた。


私も何かしないと…そう思い立ちあがろうとした時、足に痛みが走った…

足首が赤く腫れている。さっき突き飛ばされた時にひねったのかもしれない。

…これじゃあ歩けない…どうしよう、せめてどこかに隠れないと…


「…あんた何してんの?邪魔なんだけど。」

「え…あっさっきの人…」

「はあ?何その呼び方!えりなよ!えりな!…あんたは?」

「え…っと……あ!れいな!れいなです!よかった…名前思い出せて…」

「れいなね。早く移動した方がいいわよ、こんな道のど真ん中にいても邪魔なだけだし。」

「そう…したいんですけど…っつつ…」


なんとか立ち上がることはできたけれど…歩くたびに痛む。

…これじゃあ走るどころか、歩くことも辛い…どうしよう…


「…何よあんた、足怪我したの?………はぁ仕方ないわね…肩貸してあげるわ…」

「えっ!でも、迷惑じゃ…」

「そうね、迷惑よ!じゃあ置いて行っていい?」

「あっすみません!ぜひお願いしたいです!」


本当に行ってしまいそうだったので慌てて引き留めた。

えりなさん、見た目は少し怖いけれど優しい人だ…

お礼を言うとえりなさんは、照れているのかそっぽを向いてしまった。

肩を貸してもらい、人が少ない方に向かって歩き出す。


「どうして少ない方へ?他の人がいた方が…」

「はあ?バカなの?さっき走ってた奴らが協力すると思うの?ほんと頭お花…」

「で、ですよねー…はあ…なんでこんなことに……ん?」


たくさんの人が向かった方から何か…叫び声のようなものが聞こえる。

それに続いて、何かが破裂するような音も聞こえる…なんの音?

…叫び声が止まない、いったい向こうで何が…


「え、えりなさん…向こうで何かあったみたいですよ?」

「聞こえてるつーの!あ〜さっき言ってた、あれ…怪物?でも出たんじゃない?」

「…怪物…ライオンとかですか?」

「知らないわよ。…けどライオンなんていたら…さっさと移動するわよ!」

「あっはい!あっちょっペース早いです…って……なに…あれ…」


…左右の店に潜んでいたのか、さっきまでいなかった生物が私たちの前にいる…

その体は光沢のある緑の鱗に覆われていて、光を受けて光っている。

私たちよりも大きなその体には、私の腕よりもはるかに大きな手、足がついていて…そこに鋭い爪が生えている。

頭は蛇の形をしていて、その口は人を丸呑みできそうなほど大きく開きそうだ。


…こんな生物は知らない…何この生き物…!

それに、なんで少しずつこっちに近づいてきて…


「え、えりなさん!にげ、逃げましょう!」

「……」

「えりなさん!」

「そうね、逃げないといけないわね…だから…お願いね?」

「えっ…」


彼女がそう呟くと、私の体を怪物に向かって突き飛ばした。

最初何をされたのか分からなかった。地面に倒れ込み、顔を上げるとそこには常識から外れた怪物の姿。

自分が彼女に突き飛ばされたことを理解する前に、私の腕に怪物が喰らい付いた…


「いやあああああああ!!痛い!痛い痛いたいい!いや!いやああ!!やめて!えりな…さん!助けて!!」


体験したことのない痛みを味わいながら、助けを求める…

腕に牙が食い込み、肉を引きちぎられていくのが激痛で分かる。

爪は私の腹に突き立てられ、内臓を抉っていく…

出血のせいか、痛みのせいか…何もわからない…ただ真っ赤になっていく…

そんな私を見て彼女は……嗤っていた…


「な、なんで…なん…あが…なんで…なんでぇ!!」

「あっはは!ありがと!これであたしが逃げられる、ほんっとあんたみたいなのは利用しやすくて助かるわ。あっははははは!!」


その顔を見て私は気づいてしまった。彼女は最初から私を助けるつもりなんてなかったことに…最初から囮に使うつもりだったことに……

お礼を言った時顔を背けていたのは、きっと私をバカにして嗤っていたからなんだろう…

私を利用して、ゴミのように捨て…怪物に喰われている私の横を嘲笑いながら、悠々と歩いていく。

このまま死ぬ、それだけはできない。まだあの女に復讐してない…

……許せない…あの女だけは絶対に許せない…殺す……絶対に殺してやる…!!私と同じ痛みを味あわせてやる!!!


痛みで狂っていく中、それを超える狂気が私の中に生まれる。

そしてその狂気に応えるかのように…私の体は形を変えていく。

…目の前の怪物も、そこの屑も全部壊して、殺して、喰らい尽くす…そんな存在に私は変わっていく…

そこの怪物じゃあダメだ…あんなのじゃ、全部壊せない…


ふと、脳裏によぎる…私の知識にある恐怖の存在…

どこかで読んだ本に載っていた怪物…それを想像する…

その想像に応えるかのように、変化は大きく、巨大になっていく。


この存在なら、全部壊せる。…私を騙したあの女を殺せる…けどそのためには素材が足りない。

…足りない分は、目の前の怪物を喰らい返して補う…それでも足りない分は…そこにいる…


「…っひ!や、やめ」

「ワオオオオオオオオォォォ!!!」


………その後その生き物は、近づくものを全て喰らい続けた。

全てを喰らい尽くしたその姿は、大きな…白い狼の姿をしていた。








目の前のモニターには凄惨な状況が映し出されている。

女性2人の裏切り、そして…変異。

裏切った女性が、怪物になった女性に食い散らかされていく。

…怪物になった女性は、素手で蛇の怪物の首を引きちぎっていた…


…これが変異。マウスで見たことはあったけど、人間で起こった所を見るのは初めてだ…

想像以上におぞましい光景だ。…それに、変異は連鎖のように続いてしまう。

怪物が生まれれば、それを見た人間も恐怖で変異を起こして怪物になっていく。

いずれ被験者はすべて、怪物に変わるだろう…それを考えると、胸が痛む。

こんなものを生み出すために、協力させられている自分が情けなかった。

けれど、逃げ出すことはできない…あの子達の命がこいつらに握られている以上、協力し続けなくてはいけない…


その光景を見ていると、したり顔をしたハゲがやって来る。


「ふむ…実験を始める為怪物を増やす計画だったが…想定外のものが生まれたな。」

「そうですね。」

「…まあいい、実験にイレギュラーはつきものだ。それに、蛇と蜘蛛の怪物だけではバラエティに欠ける。そう思わないかね?」

「そうですね。」

「君ねえ…分かっていないのかい?君の身内の命は我々が握っていることを…もっと協力的になってくれてもいいじゃないか…」

「っ!…分かって…ます。ですから、あの2人の命は。」

「ああ〜ああ分かってるとも。…はは…美しい姉妹愛ではないか…なあ?神代 栄華君?」

「……今行われている実験の結果をまとめます。」

「ふむ、そうだね…君の作ったナノマシンが、上手く機能しているか後で後で確認させてもらうとしよう…ではな。」


そう言って部屋から出ていく。

…いくつもあるモニター、それぞれに目を背けたくなるような映像が映っている…


怪物に喰われている映像…他の人を利用しあって、共倒れになっている映像…隣にいる人が突然怪物に変わり、喰われる映像…

武器を見つけた人が勇敢にも怪物に立ち向かい…喰われている映像……人間同士で殺し合っている映像…

どの映像もろくなものがなかった。そもそも、今行われている実験は人間が生き残ることを想定していない。


この実験は、怪物を生み出す実験。

被験者の人間は記憶を抜かれ、***を注入されて施設に送り込まれる。

その中に怪物を送り込み、恐怖で人間を怪物に変異させる実験だ…


一部の被験者は、変異を固定させるために送り込まれる前に変異対象のイメージを刷り込まれている。

蛇と蜘蛛…この二つに決めた理由は、PCの近くに人形があったからと言うのを聞いた時は怒りが湧いた…


この実験を考えた人間の正気を疑う。聞いた話だと、政府も絡んでいるのだから本当におぞましい…

それにこの実験に使われているのは、あの子が…

それを利用して、こんな実験に使うなんて…到底許せるものではない。


そしてこの実験の後、生まれた怪物を使って新たな実験が始まる…

おそらくあの子達は、それに参加させられるだろう。

私の作ったナノマシンで怪物の行動を制限できるが、あまり大きく動けない。

せいぜい、怪物の階層移動を止める程度だ。それ以上は、目をつけられる。


今の私には、この実験を止める手はない。

それにあの子が心配だ。ここに連れて来られる前にあの子は一度変異しかけている。

連行される前に、手は打ってきたが…心許ない。髪飾りに仕込んだナノマシンもせいぜい1回分だ。

…心配で胃に穴が開きそうだ。今の私は本当に無力だ…


けど、必ず好気はやってくる。今はそれを待つしかない。

…絶対にあの子たちを死なせるわけにはいかない…

結、そして…雫。あの子達を絶対に救ってみせる。

時系列的には1話の前になります。

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