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EDEN  狂気と裏切りの楽園  作者: スルメ串 クロベ〜
63/126

62.そして私達は罪を重ねる…

動かなくなった静華を看取った後すぐに舞の側へと駆け寄る。

うつ伏せになっている彼女を起こし、状態を確認する。

…呼吸はしている。

けれど、お腹の出血は止まる気配がなく…このままだと……死んでしまう…


すぐに傷を抑えて止血するが、手の隙間から滲み出て止まらない。

薬を取りに行こうにも、今の舞を抱えて移動するのは無理だ。

それにどこに、どんな薬があるかわからない。


刻一刻と、舞の命が減ってく…

何かしないと舞は死ぬ。それはわかっている…けど…できることがない。

止血したとしても、怪我は治らない。

怪我を治す道具も、薬もない。


…どうすることもできない…


「……ゆ…い…さん…?どこ…に…」

「?!舞!あたしはここ!ここにいる!」


そう言って彼女の手を取る。

あたしが手を握ると、力無く握り返してくれる。

…あまりにも弱々しくて、手を離したら死んでしまいそうだ…


「……ねえ…結…さん……けほ!こほ!…わたし…わかったんです…」

「え…」

「結さんが…今までどんなに……大変だったのか…痛かったのか…苦しかったのか……少しわかりました…」

「そんなのわかんなくてもいいよ!」

「こんな思い…だったんですね……気づいてあげられなくて……ごめ…ゲホ!…ゴポ…!」

「無理に喋らなくていいから!絶対あたしがなんとかするから!だからぁ!」

「……大丈夫…です…よ?……なぜか…痛く…ないんです……不思…議…ですね…」

「それは…不思…議…だね…ぐすっ…大丈夫…すぐに良くなるから…!」

「ふふ…そうだといいな……よくなったら……結さんと……龍…之介さんで……一緒…に……」


…手の力がなくなっていく。熱が消えていく。…命が消えていく…

だめ…ダメダメダメダメダメダメ!!!!いや!絶対にいや!!!

何か手があるはず!………………なんで……何も思いつかないの……!!!

もっと考えて!!必ず方法はある………ある…からぁ…………


「…誰か!!舞を!舞を助けてよ!!」


できたのは、ただそう叫ぶことだけだった…

………けれど誰も答えて……


「本当にあなたは厄介ごとに縁があるわね。」

「え?」


声の方を見るとそこにいたのは、


「栄華…さん?」


ずっと会いたかった人がそこにいた。








栄華さんは、あたしの隣に座り舞の状態を確認する。


「…酷い状態ね…すぐに対処しないとこの子死ぬわよ。」

「そんなことわかってる!どうにかできないの?!」

「私にはできないわ。」


思わず殴りそうになった。

じゃあ何しに来たんだこの人…


「…は?じゃあ邪魔しないで!すぐに何か探しに」


立ち上がり使えそうなものを探しに行こうとした時、栄華さんに手を掴まれた。


「私にはできないけど、あなたならどうにかできるわ。」

「…何言ってるの?できないから助けを呼んだんでしょ!?もういい!邪魔するなら」

「黙って聞きなさい!」

「っ!…本当にあたしにできるって言うなら、方法を教えてよ!」

「わかったわ……けれど、その前に確認しておくことがある。」

「確認って…今そんなことしてる場合じゃあ!」

「この子を助けた場合、あなたを助ける手段がなくなるけど構わないかしら?」

「……あたしを…助ける?」

「それにこの傷だと、まともな方法だけでは助けられない。…この子を変異させるしかないわ。」

「?!……舞を怪物にしろってこと?」

「そうよ。どうするか決めなさい。…自分が助かりたいなら、この子は諦めなさい。」


この人は何を言ってるんだろう…

助けるために舞を怪物にしろ?じゃあ怪物になった後は?どうやって人間に戻すの?

しかもそれをあたしの手でやれって?……あたしが…舞を怪物にしろって…事?


それに…舞を助けたら、あたしは助からないって…

じゃあ…あたしが死ぬの?…嫌だ……怖い…死にたくない…今のままだと、あたしも静華のように…

…でも他に方法はない。舞を見捨てて助かったとしても絶対に後悔する。…これ以上仲間が死ぬのは見たくない。

………答えなんて決まってる。あたしは、


「…どうすればいいか教えて。」

「本当にいいのね?」

「あたしは舞を助ける。だから早く教えて!」

「…わかった。まず、あなたがつけている髪飾りそれの両端を持って反時計回りに回しなさい。」


言われた通り、髪飾りをとり銀の部分を回す。

すると、裏側から太く短い針が飛び出てくる。

…なんでこんな機能がついて…


「…で次は?」

「それをこの子の心臓に突き立てなさい。」

「っ!…わかった…舞ごめん!」


髪飾りを舞の心臓に突き立てた。

パスっと何かを打ち込むような音がした。

…数秒後、舞の体が大きく跳ねる。


「……かはっ!……ひゅー……ひゅー……」

「!やった!これなら!」

「まだよ。このままだとまた心臓が止まるわ。だから…」

「……」

「今ならまだその子は人間として死ねるわよ?」

「…死なせたくない……たとえ舞に恨まれたとしても、あたしは舞を助ける。」

「…今のあなたはそうするのね……わかった、ならあなたの血を傷口と口に流し込みなさい。」


……………あたしは自分の手首を噛みちぎる。

血管から血が流れ出て、止まらない。

流れ出る血を、傷口に垂らす。量が少ないと思ったので、力を入れ血を絞り出す。


次は血の飲ませる。けれど、咳き込んですぐに吐き出してしまう。

なので口に血を含んで、口移しで飲ませた。吐き出すことがから、少しずつ飲んでくれる。

………………これで、あたしは舞を怪物にした。

この罪は絶対に消えない。

いずれ報いを受けることになるだろう…


「…これで助かるの?」

「運次第ね。しばらくすれば変異が始まるわ。」

「そっか…色々聞きたいんですけど、答えてくれるます?」

「無理ね。もう時間がないから。」

「そうですか…」

「しばらくは手を貸せないわ、気をつけなさい。」

「…うん。気をつけます。」


栄華さんが立ち上がると、微笑みながらこちらを見ている。

…笑ってるの初めて見た。でも、どこかで見た覚えが…


「それじゃあ私は行くわ。…生きなさい、諦めずにね。」

「はは…自信ないけど、頑張ります…」

「……大丈夫よ…。だってあなたは、私の」

「あぐぅ!!ああ!!があああ!!ああ!ああああああ!!!」

「っ!舞!しっかり!」


栄華さんの声を遮るように舞が叫んだ。

…舞の変異が始まった。








舞は、目を見開き口から泡を吹きながら叫び続けている。

…激痛のせいか、体を抱え込み悶え苦しんで痛みに耐える姿が痛々しい…

さらに体に爪を食い込ませているため、引っ掻き傷が増えていく。


「そのままだと、暴れて体力が尽きかねないわ。押さえてつけておきなさい。」

「わかってます!舞落ち着いて!」

「ああ!!痛い!痛い痛い痛い痛い!!いや!いやああああああああ!!!!」

「っ!…ごめん、ごめんね…舞…あたしのせいで…」

「うぐううう!!ゆ、結さん…のセイ…で……なんで!なンデ!ナンで!ナんデ!ナンデ!!!」

「恨んでくれていいから!辛いことも、苦しいことも全部あたしのせいにしていいから!だから耐えて!」

「ああ!!アアああア!!神代結!あナタの!あなたのセイデ!!!」

「っう…そう…それでいいの、悪いのは全部あたしだから…舞は何も悪く…」


舞を上から押さえつける。

背中に何度も爪を突き立てられて、血が流れてくる。

…あたしを罵る声が、心を抉る。


それでもあたしはやめなかった。

舞がこうなったのは、あたしが助けると決めたから。そう…あたしが嫌だったから助けた。

目の前で死ぬのが嫌だった、それが舞を助ける動機だ。…そこに舞の意思はない。

だから悪いのは全部あたしだ。どれだけ嫌われても、恨まれても…舞を助ける。

だってこれは、あたしのエゴでしかないのだから…


………どのくらい経っただろう…

気づいたら、舞の動きが止まっていた。

あたしの下にいる舞は静かに寝息を立てて、そこにいる。


「…生きてる……はは…よかっ!つつ…背中ボロボロかな…これ…」


あたしの周りは、飛び散った血で真っ赤になっている。

痛みを感じながら、立ち上がる。

まだ血が止まっていないのか、背中から血が流れて地面に落ちた。

…この傷もすぐに治る。だって、さっき静華にお腹を貫かれた傷も既にない。


「…龍之介!」


辺りを見渡した時、倒れている彼を見つけた。

地面に倒れ込んでいる龍之介に駆け寄り、安否を確認。

頭から少し出血があるけど、気を失っているだけで目立った怪我はない。よかった…


後は2人を起こして、別のフロアに移動するだけだ。

けど、今日はセーフルームで休んだほうがいいかもしれない。

その前に着替えを探さないと、今回は靴も必要だ。


……龍之介の側から離れ、ある場所に移動する。

怪物の死骸、静華だった者の成れの果て…

こいつが本当に静華だったのかはわからない。

…けど、あたしは静華だと思って期待してしまった。


そのせいで、みんなを危険に晒した。

龍之介が怪我をした。

舞は死にかけた…いや一度死んでいた。

それをあたしが怪物に変えた。そのせいで舞は、今後あたしと同じ苦しみを味わうことになる。

…全部あたしのせいだ。


あの時、この怪物があたしの名前を呼んだ時に、躊躇う事なく殺していればこうなっていなかった。

…そうだ、全部あたしの甘さが招いたことだ。

じゃあどうすればよかったのか…簡単な事。


足元の死骸を踏み潰す。

たとえ仲間だったとしても、敵になったら…容赦なく殺す。

そうすれば誰も傷つかない。そう、それが正しいんだ。


だからもし、今後2人があたしのことを裏切ったら…

必ず殺す。たとえ仲間だったとしても、甘さを持ってはいけない…だって、それが仲間を守ることになるはずだから…







近くに怪物がいないか警戒しつつ辺りを見渡す。

ふと、あることが気になった。


「…そうだ…栄華さんは?」


ついさっきまでいたのに、気づいたらまたいなくなっている。

…前もそうだったけど、すぐにいなくなる。どうやって移動してるんだろう…

ひょっとしたら、栄華さんもあたしと同じ状態なのかもしれない。


できればもう少し、話を聞きたかった。

栄華さんは絶対に何か知っているのに、いつも肝心なことを言わない。

…それにこの髪飾り。なんでこんな物をあたしは持って…


…………考えてもしょうがない。

2人の目が覚める前に、着替えとかを準備しておかないと。

怪物に見つからないよう2人をエレベーター前まで運んだ後、あたしと舞の着替えを取りに行く。


置いてある店は知っているから、着替えを持ってすぐに戻って来れた。

戻った時、意識が戻った龍之介があたしを探していた。


「結!…いつつ…無事だったんだな。」

「うん。…舞は、まだ起きてないんだね…」

「まあな…血だらけだったから心配だったんだが、見たかぎり怪我はないんだよな。」

「…ああそれなら、あたしが怪物殺した時の返り血。近くに舞がいたからそのせいでね。」

「ん?そうなのか?…けど服とか派手に穴空いてるけど…これどうしたんだ?」

「……怪物に捕まった時にちぎられて空いたの。」

「そうか。まあ、怪我がないならいいか。…お前も、怪我はないみたいだな。」

「あたしは大丈夫。」

「そうか。…なあこれからどうするよ。今日は一旦セーフルームに行くか?」

「舞が起きた時次第だと思ってる。でも、できれば今日中に移動したい。」


…舞を怪物にした以上、1秒でも早く治療方法を見つけないといけない。

そのためにはここから出るか、もしくは知っているやつから直接聞く必要がある。

栄華さんは何か知ってるかもしれないけど、あの人は探しても会えない気がする。

それなら、先に進んで知ってそうなやつに聞いた方がいい。

けど、この先に何があるかわからない。舞の体調が悪いなら、明日に回すべきなのかもしれない。


そう考えていると、


「う…ううん……ここ…は…」

「起きた?…よかった…痛いところとかない?」

「…結さん…はい、大丈夫です……あれ、わたしなんで眠っていたんですか?」


…覚えてない?

本当のことを言うべきか…けど、自分が怪物になったなんてショックが大きい。

伝えて、精神的に不安定になったら…また変異が起こるかもしれない。

……なら無理に伝える必要はない。


「怪物に投げられて、気を失ってたの。怪我がないならよかったよ。」

「そうなんですか?…何かあったような…」

「ないよ。何もない。」

「あっえはい。…って!わたしの服なんでこんなにボロボロ…って見ないでください!」

「えっ!あっ悪い!…俺向こうに行ってるから…」


そう言って近くにの店に入って行った。

…ちょうどよかった。着替えを渡しながら、舞の様子を探る。

おかしなところは見当たらない。変異している様子もないし、異常な行動もない。

これならしばらくは大丈夫そうだ。


「…あの…そんなに見られると…ちょっと…」

「ああ、ごめん。サイズとか合ってる?」

「はい!大丈夫です!」

「そっか、ならよかった。…この後だけど、舞はどうしたい?」

「…わたしは…先に進みたいです。」

「本当に?今日は色々あって疲れてるんじゃない?大丈夫?」

「大丈夫です!…それに、ここにいるとむしろ色々考えてしまうので…」

「…そっか、わかった。なら先に準備してて、あたしは龍之介を呼んでくるから。」

「あ、あの!」

「…何?」

「結さんは大丈夫ですか?…その元気がないので、少し気になって…」

「……あたしは大丈夫だよ。じゃあ龍之介を呼んでくるから。」


龍之介が入って行った店に向かおうとした時だった、


「はあ…結さんのせいで怪物になっちゃったな…死ねばいいのに…」


…そんな言葉が聞こえた気がした。








全員が集まり、荷物をまとめる。

あたしが使った武器は全部使いものにならないので捨てた。

代わりの武器を龍之介からもらって身につける。

…今後は銃よりも、マチェットの方が使い勝手がいいかもしれない。


準備が終わり、扉の前に立つ。

それぞれ食料などが入った鞄を背負い、Gフォンを取り出す。


「それじゃあ準備はいい?」

「ああ、いいぞ。」「はい!いけます!」


あたしがカードキーをかざす。

その後、2人がそれぞれGフォンをかざしていく。

…これで、このフロアに残っている人はもうここから出ることができなくなった。

あたしだけなら出入りはできるかもしれないけど、栄華さんはできない。

栄華さん…ごめんなさい…全部終わったら迎えにくるから…


「結?どうした、何か忘れ物か?」

「…なんでもない、じゃあ行くよ。」


そう言って、Gフォンをかざすと扉が開く。


この先に、何があるかはまだわからない…

それにあたしは知らなくちゃいけないことがたくさんある。

変異の原因と治療法、脱出方法、そして…記憶。


なんで人間が怪物になるのか…そもそもここはなんなのか…なぜ記憶を消す必要があったのか…

わからないことがまだまだ多い。…けれど、諦めるわけにはいかない。

胸の内にある邪悪を隠しながら、あたしは進み続ける…

全てを知るために…生き残るために。

今回で1章終わりです。

次話から過去話とか、キャラ紹介などを投稿予定です。

その後に2章を投稿します。

ここまで呼んでいただき本当にありがとうございます。

感想コメント、いいね、評価お待ちしております。

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