表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EDEN  狂気と裏切りの楽園  作者: スルメ串 クロベ〜
62/126

61.狂気の快楽

口元の血を拭う。口の中は、血の味で満たされている。

不快なはずなのに、なぜか美味しいと感じている…


それと…なんだろう、全身から力が溢れる。

今ならどんなことだってできる、そう思えるほどの万能感だ。

目の前の怪物がむしろ哀れにすら思えて仕方がない。


…その代償なのか目に映るものを全て殺したい殺人衝動と、食べたいという食人衝動が胸の中で渦巻いている。

もしこの場に怪物がいなかったら、間違いなく2人を殺して……

この衝動に飲まれてはいけない。飲まれたら最後、あたしに残った人間性を手放すことになる。


いつものなら、こういった時もう1人のあたしがなんとかしていた。

きっともう1人のあたしが生まれたのは、あたしが嫌なことがあったり諦めた時に逃げ続けてきたからだと思う。

逃げたりすることは必要かもしれない。けどいずれ向き合わないといけない。


あたしは逃げた後向き合おうとしなかった。もう1人のあたしに任せて逃げ続けた。そのせいで静華が怪物になった。

だから今回は逃げない。絶対にあたしが、静華を…殺す。それはあたしが負うべき責任だから…


心臓の鼓動が早い。脳は目の前のやつを殺せと命令しているのがわかる。

…落ちついて…大丈夫…やることは簡単だ。

静華だった奴を殺して、2人を助ける。今はそれに集中すればいい。


「結ぃ…!まだ生キテイたのネ!」

「そうだね、自分でも不思議に思ってるよ。とりあえず龍之介を離してくれる?」

「ハハハハ!できルワケないデショう?コいつは人質ヨ…まずは武器ヲ捨てなサイ。」


言われた通り、両手に持っている武器と、腰に刺している銃を地面に置く。

それを見て怪物はいやらしい笑みを浮かべている。


「結!俺のことはいいから逃げろ!ぐっ!」

「勝手に喋ルナ!…ねエ結、コイつは変異してイナイから…腕が折レタりすれば役に立タナクなるワねぇ…アッハハハハハ!!」

「ぐあああ゛あ゛!」

「…言う通りにしているんだから、やめて?」

「ふん!ツマラないワね…まアいイワ、先に結…アなたカラ殺してアゲる!」


龍之介の腕を持ったまま、あたしに向かって鋭い爪を突き出してくる。

風を切り裂き、向かってくる。

あたしはそれを…片手で掴む。


「…え…ハ…?」


怪物は必死になってあたしの体に突き刺そうとするけど、全く動かない。

たまらず引き抜こうとしているが、それも叶わない。

あまりにも遅かったので思わず掴んでしまった。どうしたんだろう…手を抜いているんだろうか?

いや違う、怪物の瞳が焦りのためか動き続けている。


それを見ていると、どうしてだか顔がにやけてくる。

…ああ…いい気分だ…ダメだとわかってるけど…本当にいい気分…

今まで人を痛めつけてくれた奴が、あたしに怯えている。

本当に気分がいい…もっと…この感情を味わいたい…


「ふふふ…あははははは!!!」

「あ、アナた…何ヲシたノ?!ナンでう、動かな」

「隙あり。」


あまりにも隙だらけだったので、握っている手を握り潰した。

スポンジを握るように簡単に潰れ、体液を絞り出す。

怪物の顔は痛みで歪み、叫び声をあげている。それを見ていると、本当に気分がいい…

なんで今までのあたしはこんなのに怯えていたんだろう?こんなに弱いのに。


片腕が塞がっていてはあたしを殺せないと思ったのか、掴んでいた物を放り投げた。

…ああそうだ、忘れていた。龍之介が捕まっていたんだった。

投げられた彼は壁に当たり、鈍い音を立てていた。


床にうつ伏せになったまま、動かない。

まあ大した高さじゃなかったし、死んでないでしょ。

そんなことよりも、目の前のこいつを痛ぶる方が先だ。


どうやって殺してやろうか…潰してもすぐに再生するからすぐには死なない。

つまり、しばらくは楽しめる。

…ふふ…それは本当にいいことだ。

両手を上げ、ヘラヘラした態度で怪物に話す。


「ふふ…ねえどうしたの?あたしを殺すんでしょ?ほら手に何も持ってないよ?」

「グゥ…!黙れ黙れ黙レ!殺す…絶対二殺ス!いや、タダでハ殺サナい!バラバラにしテカら」

「そうやって話が長いから、捕まるんだよ?」


ペラペラと喋っている間に、まだ潰してない腕を取る。

そして先ほどのように握りつぶした。

怪物の絶叫が響き渡る。ジュースを搾り出すように、怪物の体液が床に撒き散らされていく。


「ああ〜両手潰れちゃったね?ほら早く戻したら?待っててあげるからさ。…ね?」

「っひ……ば、バケモノ…バケモノ!お前はバケモノダ!」

「やだな〜今の静華に言われたくないよー。それよりもはやく戻してよ!じゃないとさぁ…楽しめないじゃん…!」

「…っ…!ガアアアアアアアアアア!!!」

「あっ!やっと本気になったね?…ふふ…楽しみだな…その顔が苦痛に歪むのが…」


再生した両腕を振り上げ、あたしの頭に振り下ろしてくる。

それを虫を払うように叩く。

叩いた部分が弾け飛び、骨が剥き出しになった。

肉片が周囲にゴミのように飛び散る。


残った腕で、体を貫こうとするがその腕も叩き落とした。

さっきよりも強く殴ったおかげか、骨も残っていない。

よかった。ゴミを撒き散らすと、周りに迷惑だからね。

腕がなくなった影響か、床に倒れ込み自分の体液で体を汚していく。

足元の怪物が震えながらあたしを見ている。赤い瞳に映るあたしは、同じ色の瞳を輝かせながら三日月のように口を歪ませながら嗤っている。


「あはははははははは!!!いいねその顔!ねえどんな気持ち?腕なくなっちゃねぇ〜?早く生やさないと、どんどんバラバラになっちゃうよ?」

「グゥ…アあ…殺す…もう…やめて……殺…」

「え?辞めるわけないじゃん…何言ってるの?はあ…ほら早くしてよ…」


足元にある肩を踏み潰す。そしてそこから心臓部分に向かって細かく踏み潰していく。

怪物は痛みで何か言っているがあたしには関係ない。

だって…こんなに楽しいことをやめるわけない。

踏み潰した時の肉や血管が潰れ、骨が砕ける感触が最高だ。

踏み潰す度に苦痛で、瞳を大きく動かしながら涎を垂らして犬のように吠える姿を見るのは…快感だ。

そうだ、もうこいつを殺すことなんてどうでもいい。

今は…この快感を味わいたい…!


そこからあたしは、怪物を使って遊び始めた。

ただ潰すだけじゃつまらない。

少し趣向を凝らして目を抉り出してみた。


見えないからなのか、少しいじめるだけですぐに怯え出した。

蹴る場所を変えるたびに大きく跳ねて面白かった…!


マチェットで肉を薄切りにしてみた。

ステーキを作る人ってこんな気分なのかな?

けど食材が動くせいでうまく切れない。むぅー!

切ったのはもったいなから怪物の口に捩じ込んで食べさせた。

泣いて喜んでくれていたから、すごく嬉しいな〜!


上半身と下半身をバラして振り回して遊んでみた。

振るたびに切り口から血が噴き出て、水遊びをしているようだった。

ただ、服が汚れるのが最悪!この遊びは無しだね!


そうやって色々な遊びを試してみた。ここに来て遊んだことなんてなかったから本当に楽しい。

何かするたびに自然と笑顔になれる。

こんなに楽しいのはこのおもちゃのおかげだ。

再生が遅れたり、反応が悪くなったら腹を蹴飛ばせばいい。

そうすればまた反抗的な目をあたしに向けてくれる。

それを確認したら、また潰す。…ああ楽しい、楽しい…


楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい違う楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい苦しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい逃げたい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽嫌だ楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい死にたい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい殺して楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい助けて楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい許して楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい違う楽しい楽しい楽しい楽しい…


「あっはははははははははは!!!あはははははははははは!!!はははははははははははは!!!!」


ああ…ここは本当に楽園だ。

このままここで永遠に、


「もうやめてください!」

「?もう…誰?邪魔しないでほし」


声の方を振り返ると何かがあたしに向かってくる。

乾いた音がした。…なぜだか頬が熱い。

…少しずつ熱が冷めてくる。そして目の前にいるのが誰なのかが認識できた。


舞だ。怒りの表情をあたしに向けている…けどどこか悲しげに泣いている。

…なんで邪魔するの?こんなに苦しいことをさぁ…

あたしはもっと辞めたいのに!


あたしの邪魔するってことは、助けて舞もあたしの敵ってことなのかな?

じゃあ逃げたい殺すしかないか嫌だ…もう殺してほしい…


?なんだろうさっきから許して変だ…

…何が…変なんだろう…


「ねえ舞。あたし何か間違ってるのかな?こんなに楽しいのに…」

「…本当にそう思ってますか?」

「うん…本当だよ?」

「じゃあ…なんで……泣いているんですか?」

「……え……あれ…ほんとだ……なんでだろ…」

「当たり前ですよ!だって…こんなの…いつもの結さんじゃありません…!」

「いつもの…いつものってどんなのだっけ…」

「誰かのために必死になって、絶対に諦めない!わたしみたいな役に立たない人間でも、危険を顧みず助けてくれました!」

「……そう…だっけ…」

「誰かが傷つくのが嫌で、いつも自分が傷ついても構わない…そんな自己犠牲の塊みたいな人ですよ!」

「………それ、褒めてないよね…?」

「褒めてますよ!!だって…だって!こんな状況でそんなことができるのは、結さんだけですから!」

「…舞…」

「だからぁ…!もうそんな酷いことはやめてください!…静華さんもそうですが…結さん自身が可哀想です!」


そう言ってあたしに抱きついてくる。

…暖かい…すごく安心して、落ち着く…


以前として、殺意は消えてない…

今だって怪物のことを考えると、バラバラにしてその顔を見たいという欲求が止まらない。

…けど、目の前の友達を悲しませるのは…それ以上に嫌だ…!


心臓の鼓動がうるさい…

落ち着け…思い出せ!あたしが本当にしたいことはなに?


…あたしは神代 結。

人と人を結びつける。これだけは絶対に忘れちゃいけない。

今あたしがやっていることはそれを全て無に返す行いだ。


…もう終わりにしよう。

すでに怪物は瀕死。だけど核を潰すまで死なないだろう。

体内から探すのは時間がかかる。

それなら、龍之介が持っていたグレネードランチャーで撃てばすぐに終わらせられる。

冷静にそう判断できた、さっきまで感じていた熱は引いている。


戻ってこれたのは舞のおかげだ。

もし舞がいなかったら、あたしは正気を無くして…怪物になっていた。

舞はもう役立たずなんかじゃない。狂っていたあたしを止めてくれた。


「…ありがとう、舞。もう大丈夫だから、全部終わらせてくるね。」

「!結さん…はい!」


舞の体が離れる。

大丈夫…もう見失わない。

もし見失いそうになっても、仲間を…友達を思い浮かべれば、大丈夫だ。

…だから、


「舞は少し離れっ!」

「………え…?」


目の前にいる舞の腹から、爪が突き出ていることを理解したら…あたしは……壊れるだろう。








…目の前で起こっていることを理解できない。

友達の体から、鋭い何かが飛び出ているように見える。

けど…きっと…見間違いだろう…見間違いのはずだ…

だって…舞がそんなことになるわけが…


「……こぽ…ゲホ…ゆ…いさん…?」


口から血を吐きながら、弱々しく話す声があたしを現実に引き戻す。


「ああ…あああああ…舞………ああああああ…!!!」

「調子二…乗りスギタわネ…結!アッハハハハ!アハハハハハ!!」

「…静華……静華!静華ぁ!殺す!お前は!絶対に!」

「ああ…怖いワネ…。けドいいノカしラ?コの子、殺しチャウわヨ?」

「ゲホ!ゴホ!……結…さん…」

「喋らないで舞!すぐに助けるから!」

「…助け……なくて…いいです…」


一瞬何を言っているのわからなかった。


「………は、は…?何言って…!」

「今…こう…なって…ゲホ!…やっとわかりました…結さん…が……どれだけ……」

「おシャべリハもういイワ。邪魔よ!」


舞の話を遮り、静華が腕を振るう。

あたしの頭上を飛び越え、数m先まで飛んでいく。

すぐに向かおうとしたが、静華の爪があたしの足を貫いて動けない。


…そして、鈍い音を立てながら地面に落下する。

体は勢いを殺すために、何度も地面を転がり赤い線を描いていく。

そのまま壁まで転がって…動かなくなった…


「あははははははは!!残念ね結!コレでアナたが守リタいっテ言ってイタモのハ全て無くなっタワ!」


狂った笑い声が聞こえる。

そして、あたしの腹を何かが突き破ってきた。

…………けどそんなのはもう、どうでもよかった。


あたしの視線は、動かなくなった友人を捉え続けて離さない。

時間が経つたびに、彼女の体から血が流れ続け…

ああ…あたしの……あたしが…守りたかったものは…もう…




………本当に?

だってまだ、確認してない。確かに出血は酷い…けどまだ死んだと決まったわけじゃない。

止血して、1階の薬のとこまで行けばなんとかなるかもしれない。

それなのにあたしは何をしてるの?今やるべきことは、目の前のこいつを1秒でも早く片付けて舞を助けることだ。

だったら早く動け!立ち止まるな!嘆いて俯くのは後でやれ!

今は!


「つっ!ああ!!」

「な?!ナ、なんデマだ諦めナイのヨ!見ナさいアレヲ!アンなに血ヲ」

「黙れ!もうあんたに構ってる暇なんてない!」


静華…怪物の頭を掴み、地面に叩きつける。

苦痛の声が漏れ聞こえる。その上から踏みつけ、頭をつぶす。

けれど、すぐに再生が始まる。


…この怪物は核を潰さないと殺せない…

考えろ…今ので核は頭にないってことはわかった。

じゃあどこにある?……この怪物は、人型の怪物を喰って取り込んでいる。


その怪物の核はどこにあった?あたしはまだ見たことがない。

腕を切り落としたことがあったけど、すぐに生えてきた。なら腕にはない。

体は吹き飛ばして、粉々にしたことがあった。体に核があったならそれで死んでいたはず。

じゃあどこだ?残っている部位は…………もしかして、足?


そうか…あの時人型は体は粉々にしたけど、四肢はちぎれて残っていたのかもしれない。

それなら人型が生き残っていたことにも説明がつく。

そして目の前の怪物もそこに核があるかもしれない。

確認の為に足の付け根を踏み潰す。


「!い、イヤ!ソこはダメよ!」

「…はは…その反応で正解ってわかったよ…!」


肉を踏み潰し、骨を砕く感触に混じって…硬く、丸い石のようなものを踏んだ感触がした。

それを力いっぱい踏みつける。地面を踏み砕く程の力を込めて、踏み続ける。


「…イギぃ…あが……ゆ…い……たす…け…」

「……静華はもう死んだの……ごめんね……助けてあげられなくて…」

「たす……ケ………」


…怪物の命乞いを聞きながら、核を踏み砕く。

割れるような音が聞こえ、踏んでいた物の感触がなくなった。

そして、怪物は…静華は動かなくなった…

感想コメント、いいね、評価よろしくお願いします。

…多分、おそらく次で1章は終わりです。

その後に前日の話と、人物紹介+イラストの予定です。…予定です…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ