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EDEN  狂気と裏切りの楽園  作者: スルメ串 クロベ〜
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57.人型との戦い

エレベーターが2階に着き、扉が開く。

昨日武器を見つけた場所はここから少し移動する必要がある。

人型の奴がすぐに戻って来るとは思わないけど、手早く済ませて損はない。


それと、グレネードランチャーはエレベーター前に置いて行くことにした。

龍之介が気づかなかっただけで、使えるものがまだあるかもしれない。

そう考えると、あの銃は大きくて重いので邪魔だ。弾もないので使えない。


持って行くのは拳銃と、ショットガンだけ。

マチェットも持って行こうかと思ったけど、手に持ってないといけないから仕方なく置いて行くことに。


準備を終え、2人で走る。

今日は妙に静かだ…。昨日までは叫び声や言い争いの声、誰かの銃声がしていたのに今日は全くない。

…やっぱりこのフロアにはあたし達しかいないのかもしれない。

まあ、正直いても仲良くできる気がしないのでその方がいいかも。


寝不足のせいか走ると気分が悪くなってきた、早めに済ませたい…

そうこうしている内に目的の場所についた。

昨日開けるために壊したのか、ドアノブがなくなっていて扉が開いたままになっている。


龍之介に見張りを任せて中をのぞく。

…狭い。歩ける場所が1畳ぐらいしかない。

左右の壁にある棚には、投げ込まれるように色々なものがぐちゃぐちゃになっていて何が何やら…

この中から探すのは骨が折れそう…


うーんこれあたしが探すよりも、龍之介に任せた方がいいかもしれない。

あたしより龍之介の方がこういうのは詳しいと思うし、うんそうしよう。

すぐに龍之介と交代することに。その際適当な段ボール箱を一つ持ってきた。


壁際に座り、箱を開ける。

何かのケーブルが詰め込まれている。ハズレだこれ…はあ…

……これからどうするべきなんだろう…って昨日からこればかり考えてる。


でも正直わからない。そもそも夕暮れの教室で見たあれは本当にあたしなんだろうか?

あそこで話した自分は、あたしが記憶を取り戻すと自殺するって言ってた。

そこまでのことをしたってこと?…もしかしてもう1人のあたしがそれをした?


…結局考えても答えが出るものじゃない。

でも方法がないわけじゃない。鞄の中からカードを取り出す。

これを使えば、自分が何者か分かるかもしれない。

それに知ってそうな人が1人いる。栄華さん…今どこにいるんだろう…


怪物になりかけてから一度も会ってない。

あたし達はこの施設を割と移動しているのに、一度も姿を見たことがない。

…単にあたしの運が悪いだけかもしれないけど…


うん、決めた。あたしは記憶を取り戻す。

今後はそのために行動しよう。そのためにもあの怪物を倒して、カードキーを奪わないと。

…にしても、龍之介はまだ見つけられないのかな?


「ねえ、まだ見つからない?」

「ああ…ごちゃごちゃしてて訳わかんねえ…もういっそ何個か箱を持って戻った方がいいかもしれん。」

「そうだね…そうしよっか。まだ、怪物は来てないし急いで戻ろ。」

「なら俺が箱を外に出すから、お前が開けて入ってそうなのを分類してくれ。」

「りょーかい。」


龍之介が手当たり次第に置いてくるおかげで、箱が散乱していく。

それを一つ一つ開けていき、銃っぽいものが入っているのを仕分ける。


「龍之介、一旦もどろ。重いのが多いからこれ以上は無駄になる。」

「わかった。結は先に運んで行ってくれ。俺は重いやつを運ぶから。」

「うん、じゃあ先行くね。」


近くにある箱を2つ持ちエレベーターへ。

変異の影響か、力持ちになったので楽々運べる。…もしかしたら龍之介より力あるかも…

思ったよりも早く2つ運べたので、もう一度運びに戻る。

途中で箱を持った龍之介とすれ違ったので、そのことを伝えておく。


「よいしょ…っと!…力が上がっても、やっぱり重い…」


箱を1つ持ち上げ、怪物が来ていないか確認してから運ぶ。

運んだ箱に弾があればいいけど…この作業またやりたくない。

その時だった、


「ふぇ…」


眠気と気疲れのせいか自分の足につまずいた。

受け身を取ろうにも両手が塞がっていてどうすることもできない。

そのせいで転んでしまい、盛大に箱の中身をぶちまける。

…鉄でできているものが入った箱を、硬い地面に…


「いっ…た………やば…!」


周囲にけたたましい音が響く。

すぐに立ち上がり、走ろうとした時だ…後ろから雄叫びが聞こえる。









やばい、やばい、やばい!すぐに逃げないと!

そう思いエレベーターに向かい走り出す。もう1人のあたしは下の階に飛び降りたらしいけど…あたしにそんな勇気はない。

さっきまで遠かった足音が、近づいてきている。やっぱり速い!けど、このままギリギリつけるかも…

…ってそれはダメだ、ギリギリ着いたとしてもエレベーターをこじ開けられるかもしれない。


すぐにGフォンで龍之介に連絡する。


『結!さっきの音はなんだ?!』

「話は後!すぐに弾を探して!よろしく!」

『おい!おま』


聞き終わる前に通話を終える。…後ろに何かの気配を感じる…

振り返ると…そこに奴がいた。こちらを見つけると、雄叫びを上げ睨みつけてくる。

そして、大きな腕を振り回し近くにあった柵を粉砕する。…もしかして怒ってる?


奴はグチャグチャにした柵を引きちぎると、


「ウガアアアアアアアアア!!」


叫びながら投げつけてきた。風を切り裂きながら、直線で飛んでくる。

それを見てすぐに、地面を蹴って店内に転がり込む。…さっきまでいたところを潰れた柵が通り抜けていった。

…逃げるのは無理…でも戦うのも無理だ。勝てる訳ない…


そうなると、飛び降りるしかない。

覚悟を決め吹き抜けに向かって走り出す。そしてそのまま柵を飛び越える。

地面が消え、浮遊感が襲ってくる。


「ぐぇ!」


が、何かに引っ張られ持ち上げられた。

上を見ると、怪物が服フードを掴んでいる。

…助けてくれたわけではない。だって…


「グゥオオオオ!!」

「ひゅ…いやああああああ!!」


引っ張り上げられ、そのまま放り投げられた。

飛び降りた時とは違い、自分の体がボールのように飛んでいく。

地面を跳ね続け数十m転がり止まる。転がっている間、体から何度も砕け、潰れるような音がした。

そのせいか立ちあがろうとした時、激痛が体を走り、口から血がこぼれ出た…


「…げほ!ごぽっ!っ…いった…」


変異しかけた後、あたしはどこかで自分は強くなったと思ってた。

もう怪物なんて相手じゃない。どんなやつにも負けることなんてないと。

実際強くはなっていた。…けどそのせいで勘違いしていたんだと思う。


顔を上げた先にいる怪物がこちらに歩み寄ってくる。

それを見てもあたしは動けずにいる。這いつくばって逃げることもできず、ただ震えていることしかできない。

自分があまりにも惨めで、涙が止まってくれない。怪物もそれを見て満足そうに笑っている…


これで終わり…あたしはここで死ぬ。

こいつはきっと、龍之介が倒してくれる。

そもそもこうなったのはあたしのせいだ。

だから仕方ない。…仕方ない…はず…でも


けど…それでいいの?まだ…できることはあるんじゃないの?

友達のことは?本当にいいの?それに諦めたら、自分のことは何もわからない…本当にそれでいいの?

そんなあたしの声が聞こえた気がした。


いやだ…絶対…だから…あたしは!


「っう!つっ…まだ…諦めないから…」


激痛を無視して、体を起き上がらせる。

…多分いくつか骨が折れてる。けど、まだ動ける。

ふらつきながら吹き抜けへ歩く。…さっき怪物が柵を無くしてくれたおかげで、このまま飛び降りられる。


「ガアアアアアア!!」


それに気づいたのか、すぐにこちらに迫ってくる。

気にせず吹き抜けに倒れるように、落ちる。…けど、また服を掴まれる。


でも、これを待ってた。


こいつは多分あたしに恨みがある。

だからあたしが逃げようとしても、絶対に追ってくる。

けど、すぐに殺そうとはしない。だってさっき飛び降りた時、フードじゃなくてあたしの頭を掴むこともできたはずだ。


それにあたしが倒れている時も、ゆっくりとこっちに近づいてきた。

殺すならもっと速く近づいてくるはずだ。ならこいつの目的はなんなのか。

おそらくあたしを痛ぶる事。そのためにすぐには殺さずにいるのだと思う。


…だからこそ隙ができる。


服を掴まれた瞬間ショットガンを撃つ。

完全に油断していたんだろう。腕の防御が間に合わず、目玉を撃ち抜く。

頭の上半分が吹き飛び、噴水のように血が吹き上がる。


あたしを掴んでいる腕を利用して、2階に戻る。

固まったまま動かない怪物から、カードキーをひったくりショットガンを撃ち込む。

弾が切れるまで撃つ。切れても、装填し直して撃つ。何度も何度も何度何度何度も…


…けど、殺し切れない。

それよりもあたしの体が限界だった。ショットガンを撃つたびに体が軋む。

撃つたびに激痛が襲ってくる。時々血も吐いた…


でもそんなものは気にしてられない。

体の限界なんて関係ない。腕がちぎれても、足が取れたとしても…こいつは必ず殺す。

今こいつを殺し損ねたら、あたしのトラウマは消えない。だからこいつはここで殺す。


撃ち続けていると、ついに弾が切れる。

人型は、地面に膝をついて動かない。頭は再生するたびに吹き飛ばし続けた。

頭がない時は体をひたすら撃ち続けた。そのせいか、ところどころ骨が見え内臓が垂れ下がっている。

地面は血で真っ赤に染まっていて、吹き抜けから滝のように流れ落ちている。


…なのにまだ生きている。

理由はわかっている。威力が足りないのと、こいつの再生力が高すぎるせいだ。

頭の再生は時間がかかるみたいだけど、体の方は小さな傷だとすぐに治ってしまう。

同じところを撃ち続けることで、肉を削ぎ落としたけどそれも時間を巻き戻すように治ってきている。


弾が切れた以上もうこいつを殺す方法はない。

…でも足止めはできる。龍之介が弾を見つけるまでこいつはここから逃さない。

回らない頭で必死に考えて行動に移す。

ショットガンを投げ捨て、怪物の肉を引きちぎる。…素手で。


生暖かさと、鉄っぽい匂いが周囲を満たしている。

肉に触れるたび、吐き気が込み上げてくる。

あたしの体は返り血で真っ赤になっていると思う。爪の間にも怪物の肉が詰まって気持ちが悪い…


けどやめない。

頭が再生すれば、ネジを取るように回しながら引きちぎる。

腕が再生すれば、カニの腕のように折り曲げながら引きちぎる。

体が再生すれば、砂場で砂を掬い上げるように引きちぎる。

ただひたすらニクを…ヒキチギル…絶対二…コイツハ殺ス…


…どのくらいそうしていただろう。もう自分が何をしているのかわからなくなってきている時、誰かに引っ張られた。

龍之介だ。息を切らしながら、大きな銃を持っている。


「悪い、待たせた。」

「…本当だよ。カードキーはとったから、じゃあ後は任せるね?」

「ああ、離れてろ。木っ端微塵にしてやる…」


2人して店内の奥まで下がり、龍之介が怪物に銃を向ける。

ポン!と、どこか間抜けそうな音をだしながら弾を撃ち出す。

放物線を描きながら、弾が怪物に当たる。次の瞬間、爆音と衝撃が辺りに広がる。


「あっつ!」


距離が近かったからか、爆発の衝撃と熱を感じた。

着弾場所は煙で見えない。どうなったか見ようとしたら龍之介に止められた。

そしてもう一度撃った。…龍之介の顔、めちゃくちゃ怖い。


その後、2回撃ち込み銃を下ろした。

爆発の煙が店内まで漂ってきて煙たい…火薬くさ…

煙が晴れてきたので着弾点に近づく。怪物がいたところを見ると…何もない。


恐る恐る1階を見ると、黒焦げになった人の形をしたのが転がっている。

龍之介がそれを確認すると、なぜかもう一度撃ち込んでいた。

それを見てあたしは…なんだか笑ってしまった。

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