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EDEN  狂気と裏切りの楽園  作者: スルメ串 クロベ〜
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54.欲望の代償

2人で周囲を警戒しながらフードコートを目指す。

数は少ないが、怪物がいないわけではない。途中で襲われては時間の無駄だ。

銃を使えば楽に殺せるが弾が勿体無い。

それに下手に銃声を立てると、向こうを刺激して何をするかわからない。

だから、


「こうやって、首を切り落とせばいいわ。」

「…それができんのはお前ぐらいだよ、って俺もできるようにならないといけないか。」

「意外と簡単よ。刀身の角度に気をつけて振り抜けばいいだけ。それにこれ、結構切れ味がいいわ。いい拾い物ね。」

「それを簡単って言えるほど、俺はまだ壊れてねえよ…ほんとお前なんなんだよ…」

「さあ?言ったところで信じるとは思えないわね。それに今はそれよりもやることがあるでしょ?」

「…ああそうだ。だがこれが終わったらちゃんと説明しろよ。お前は色々知ってそうだし。」


幸い蛇のやつが1体だけしかいなかった。

途中こちらを見ている人はいたが、3人しかいない。

…人間も減ってきている。ほとんど死んだか、もしくは変異しているのだろう。

外出禁止時間に補充をしているようだが、増えるよりも減る数の方が多いのかもしれない。


そうこうしている内にフードコート近くまでたどり着いた。

直前の店舗から、そちらを確認する。


入り口付近に人影は見えない。

…だが話し声が微かにする。数は…3、4人といったところか…


「あんたは反対側から行きなさい。私が先に行って、後から挟み撃ちにするわよ。」

「わかった。…攫った奴らはどうする?」

「全員殺すわ。けど、舞や静華に見られると面倒だから、先に助けるわよ。」

「…そこまでしなくてもいいんじゃ…」

「あら優しいのね?友達が殺されかけてるのに相手の心配をするなんて。」

「…俺は優しいんじゃなくて、臆病なだけだ。人を殺したら、今後夢見が悪くなるから…」

「ふーん、けど殺すわ。どうせ生かしたところで、怪物になるか殺されるだけよ。人間の内に殺してあげるのも優しさよ。」

「…俺はそこまで背負えない。けど、俺が迷ってるせいでまたお前が傷つくのは御免だ。だから…やる。」

「そう…愛されてるわねこの子…本当に…」


彼を裏手に回らせる。

…彼が殺さなくても済むように先に終わらせておいてあげよう。

それに、あまり気負わせると変異の確率も上がる。


この施設にいる人間は全員、あるものが原因で怪物に変わってしまう危険性がある。

怪物化…変異が起こるのは心が恐怖に染まった時。

強いストレスや恐怖を感じ、それを溜め続けると変異が起こる。

まあこの子の場合は多量の怪物の血を浴びたのも原因の一つだが…


それでも、今まで彼女らが変異しなかったのは話せる友人がいたからだ。

話すことで、ストレスを溜め込まずにいられた。


仮に変異が起きたとしても、強い意志や目的を持ち続ければ人間の形を保てる。

今この体が人間の形を保っているのは、変異が起こった際に人間として友人達といたいと願ったから。

だからこそ、今こうしている。


つまり友人を死なせるのは、彼らを怪物に変異することへ繋がってしまう。それはこの子にも言えることだ。

だから、今は彼らに死なれるのは困る。この子の変異がまた起きかねない…

2度目の変異を私は知らない。だが起きる確率は高い。


それを起こさないためにも、要因は全て取り除く。

それが私がこの子と、雪原舞にできる罪滅しなのだから…








フードコートに入ってすぐに、舞達を見つけた。

ロープの代わりに、服で柱に縛られている。2人とも眠ったように動かない、気を失っているのだろう。

縛っているのだから生きてはいるはず。…もし死んでいたら、ただでは死なせない。

遠目から見た限り、舞はそこまで酷い怪我はなさそうだ。…だが静華は頭から血を流している。


Gフォンを見つけた時にも、血痕があった。未だに血が止まっていないということは深い傷かもしれない。

…その2人を囲むように、4人の男。手にはそれぞれ武器を持っている。3人はスコップや斧だが、1人は銃を持っている。

その銃は舞の頭に突きつけられている。

銃を持っている男子、見たことがある。前に女子と一緒になって、食料を強請ってきたやつか。


…この状況、多分あの子だったらブチギレてただろうな…

まあ私も…これを見て頭に来ているが…

向こうも私に気づいたのか1人が近づきながら、話してくる。


「待ちくたびれたぜ…。おい、もう1人はどこいった?」

「ああ…彼なら怪物と戦っているわ。ここにくる時に襲われたから…」

「は!そりゃいいぜ…手間が省けた。じゃあお前を殺してそいつをもら」

「黙ってなさい。」


呑気に喋っていて隙だらけだったから、思わずマチェットを振り上げ顎を砕いた。

刀身が細いせいか、峰で打ったが数センチ肉を裂いた感触がした。

そいつはそのまま崩れるように倒れ込む。死んではいないだろうが、喋れないだろう。

あと3人。…まずは銃持ちを処理しないといけない…


だが、まだ距離がある。私が向こうまで走っている間に舞が殺される。

少しずつ近づくか、もしくは…

どちらにせよ、気を逸らす必要がある。


「ああーごめんなさい、いきなり襲われたから驚いてしまって。」

「こ、殺したのか!ひ、人殺し!」

「あら、死んではいないわよ。それに人を攫って縛り付けるような人たちには言われたくはないわね。」

「だ、だ黙れ!俺たちは悪くない!お、おおお前らみたいなのが食いもんを独り占めするせいだ!」

「そうだ!なんでわけねえんだよ!」「そうだ!そうだ!お前らのせいで俺らは苦しんだだぞ!責任とれ!」

「…はあ…見苦しい…まあなんでもいいわ。それよりこれが欲しいんじゃないの?」


背中に背負っている鞄から、携帯食料を取り出して目の前に投げる。

3人ともそれに釘付けになっている。

けど、すぐに警戒の姿勢に戻ってしまう。


「そ、それだけじゃねえだろ!前にもっとあったのを見たぞ!どこにやった!?」

「ああーそれなら残念ね。途中で襲われた彼が持っていたわ。今頃怪物の腹の中じゃないかしら?」

「は、はあ?!クソクソクソ!!役立たずどもが!…まあいい、お前が持っているのをよこせ!」

「…ええいいわよ。けどその2人を返してもらえるかしら?」

「は!渡すわけねえだろ!こいつらには俺らにご奉仕してもらうんだからよ!」

「そ、そうだ!ここまで苦労したんだから、少しぐらい良い思いしてもいいだろ!」


狂気を孕んだ笑みを浮かべながら、銃を舞の頭に押し付けている。

ダメだこいつらを生かしておく理由がない。…ゲスどもめ…


「それなら渡せないわね。どうするの?」

「じゃ、じゃあ奪えばいい!…そうだお前も捕まえて、こいつらと一緒に犯してやるよ!」

「ヒュー!山やん言うね!」「これで1人1人で楽しめるなぁ!」

「私が何もしないと?」

「は!こっちには人質がいるんだ!抵抗したらこいつら殺すからな!」

「殺したら楽しめないのに?死体と寝る趣味をお持ちなのね?」

「ぐ、うるさい!いいからお前は、抵抗せずに殴られてろ!」


…銃持ちはこっちに来ない。

残りのバール持ちと、斧持ちがこっちに歩いてくる。

無抵抗で2体1は流石に面倒だ。

さて、そろそろきて欲しいのだけれど…もう少し時間を稼ぐか。


「それよりも良いのかしら?私の連れが持っていた食料、今なら無事かもしれないわよ?」

「ああ?!そんなもん知るか!お前をやるのが先だ!」

「本当にそうかしら?私の倍以上を彼が持っていたのだけれど、無くすのは惜しいと思わない?」

「そ、それは…確かに…だ、だがよ!もうないかもしれないだろ!」

「それはあなた達が確認すればいいわ。私たちを逃がしてくれるなら、この食料も渡す。どう?」


こいつら頭悪そうだし、これで釣れてくれないかしら。


「………!い、いや!お前は信じられない!人殺しの言うことなんて信じれるか!」

「そう…残念ね。缶詰とかもあったから、久しぶりにお肉が食べれたかもしれないのに…」

「や、山やん、こいつらよりも食いもんの方がいいんじゃね?」

「な?!北川までこいつの言うことを信じるのか?!」

「だ、だってよぉ…俺らもう3日も何も食ってないじゃん!今後のこと考えると、女より食いもんだろ?」

「だな…まあアイドルと1発やるのもいいが、それより食いもんの方が今はいいわ。」

「…相川まで…クソ!ああもういい!とっととそいつのところまで案内しろ!」

「ええわかったわ…ちょうど本人も来たようだし。」

「なにっぐぁ!」


銃持ちの背後から龍之介が椅子を叩きつけた。

鈍い音とがして、木製の椅子が砕ける。…殺すのは嫌とか言いながら結構容赦ないわね…

けどこれでもう障害はない。


すぐさま近づいてきてる2人に接近し、顎を打ち砕く。

背後の叫び声に気を取られていたためか、こちらから意識を外していたから楽だった。


すぐに縛られている2人に駆け寄る。

先に龍之介が拘束を解いていた。…2人とも手首に跡がついている。

ひとまず2人を休ませないと。今日はもうセーフルームで休んだ方がいいだろう。


一番近いのは…最初に使ったセーフルームか。

その前に地面に転がっている奴らの、武器を回収しておく。

使えるのは銃ぐらいか。まあバールや斧も一応持っておくか。


「さて…2人とも気を失っているようだし、今日はここまでにしたらどう?」

「そうだな。近場のセーフルームは…北側に一つあるな。そこまで2人を運ぶぞ。」

「悪いけど、先に行っておいて。静華の手当てをしてからいくわ。それとそいつらの見張りも。」

「ああ、頼む。向こうが悪いとはいえ、逆恨みされたらたまったもんじゃないからな。」


そう言って龍之介は舞を抱えて先に行った。

…さて静華が起きる前に、


ゴミ掃除をしておかないと。

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