51.2階
食料の入った荷物をフードコートにある従業員室の中に置き、南側の広間にあるエレベーターまで戻ってきた。
あたしと龍之介が銃を持ってエレベーターに乗りこむ。
残った2人は心配そうにこっちを見ていた。少しだけ不満そうにも見える。
「それじゃあさっき言った通りにお願いね?周りにも気をつけて。」
「は、はい。お二人も気をつけて!」
扉が閉まり、2階へと降りていく。
…緊張で手が震えてきた…。やっぱり怖い…けど、もう時間がないかもしれない。
エレベーターが止まり、扉が開く。開いた先には幸い何もいなかった。
あたしと龍之介はGフォンで上に残った2人に通話する。
これが2人を上に残す為の案。
上の階から2階を監視してもらい、あたし達が調べる。
これなら何かきてもすぐに分かるし、2人を3階に置いていける。
一応3階の2人には、片方が周りを見る様に言ってある。怪物や、他の人が襲ってくる可能性があるから用心はして欲しいから。
「2階に着いたよ。今の所何もないけど、そっちから何か見える?」
『いえ、特に無いわ。今のうちにそこを調べてもらえる?』
「わかった。近くに何か来たら教えて。…じゃあ龍之介行くよ。」
「ああ。俺が前に出るから後ろから来てくれ。」
ショットガンを持っている龍之介の前にいるのは危ないし、言われた通り後ろをついて行く。
壁際から、広間中心に移動して辺りを確認。
…この広間、何も店がない。殺風景な空間が続いている。
ここで何かあればそれでよかったけど、そう上手くはいかないか。
上階の2人に主通路に行くことを伝えて、移動する。
できれば何事もなく、カードキーや武器が手に入ればいいのだけど…
主通路に出て上階の2人を確認する。うん、ちゃんといる。
それにしても…吹き抜けの柵がほとんどない。あったとしても捻じ曲がって落ちかけている。
これ奴がやったんだと思う。人間よりも硬い柵が、粘土のように捻じ曲げられているのを見て嫌な想像をしてしまう。
もしここでやつに会ったら、これと同じように捻じ曲げられて殺される。
…そうなりたくない…集中しないと…。龍之介も青い顔をしていた。多分あたしと同じことを思っているんだと思う。
「龍之介、こうはなりたくないし気をつけて行こう。」
「ああ…けどなんで人型は3階に来ないんだ?こんなことができるなら、壁を伝って上に行けそうだが…」
「さあね…考えてもわかんないし、今は見つからないように移動する事だけに集中しよ?」
「そうだな。それにカードキーが手に入ったら、相手をする必要はないし考えるだけ無駄か。」
下階の怪物が上に来ない理由か…でも蜘蛛も怪物と、狼は来ていた。
そうしないって事は、何か理由があるんだと思うけど…後にしよ。
ゆっくりと深呼吸をし、心を落ち着ける…
目的はカードキー、もしくは武器類。時間はまだ余裕があるから、落ち着いていこう。
上階の2人に移動することを伝え、あたし達も移動する。
…1、3階と違って2階にはほとんど店がない。空の店にある従業員室も調べてみたけど、何もない。
本当に武器やカードキーがあるの?…まあ、まだ調べ始めてばかりだ。
北側の奥を目指して移動する。…時々銃声や、叫び声が聞こえる。
…そろそろ他の人も限界だったんだと思う。状況は悪化するばかりで、よくなる事がない。
このまま何も変わらないと、人同士で奪い合い…もしくは変異が至る所で起こるかもしれない。
止めたいけど…それをしている時間がない。けどカードキーが手に入れば、変えられるかもしれない。
早く見つけないと。…でもどんなのなんだろう…せめて形がわかればいいのに。
「もしもし、こっちは今のところ何もないけどそっちはどう?何か見える?」
『いえ、そっちの先には何もいないわ。…ちょっと待って…最悪。こっちに人の死体がある。おそらくさっきの銃声は…』
「…わかった。こっちは待機するから2人は隠れて。まだ近くにいるかもしれない。」
『ええ、そうするわ。舞、吐くのは我慢して。移動するわよ。』
『…うぅ……はい…ぐす…』
上階の2人の安全が確認できるまであたし達は近くの空の店で待機する。
広い空間だ。四つぐらいの店が繋がってるみたいだ。あたし達がいる場所の反対側奥に従業員室の扉も見える。
まあ見通しがいいいから、何か近づいて来たらすぐにわかる。それに広い方がいざという時戦いやすいからここで待機しよ。
…今の所何も成果がない。正直あのメモは罠だったんじゃないかとも思えてくる。
けど他に手がかりがない以上、それを信じるしかなかった。
もっと情報が欲しい。でも手に入れる方法がわからない。
今思うと外出禁止時間で作業服を着た奴らを…殺しておけばよかった。そうすれば、こんな煩わしいことをしなくて済んだのに…
ああ…まただ。怪物に変異しかけてから、ずっとこの調子だ。すぐに誰かを殺すことを考えようとしてる…
これも変異の影響なの?…もしそうなら変異しなかったとしても、殺し合いになるかもしれない。
できればあたしの性格が悪いのが原因だといいのだけど…それも嫌だな…
……ん?
何かの足音が聞こえる。
…まだ少し遠いからか、龍之介は気付いてない。
2階で足音をたてる奴なんてあいつしかいない…
「龍之介、従業員室に隠れるよ。…多分奴が来てる。」
「?!マジか…分かった。通路には出れないな…音を立てないように移動するぞ。」
足音に気をつけながら奥へと駆ける。
近づいてくる奴の足音の感覚は変わってないから…まだ気づかれてない。
気づかれることなく従業員室の前まで来る。
ドアノブを回す。
「え?…なんで…」
…ドアノブを回しても扉が開かない。
なんでここだけ鍵が…
背筋が凍る。それを見ていた龍之介も完全に固まっていた。
耳鳴りがする…その音はまるで、誰かがあたし達を嘲笑っているかのように聞こえる…
近くにレジとそれを置く台が設置されているが、操作すると音が鳴ってしまう。
それはできないだって…
…もう足音はすぐそこまで近づいている。もうすぐそこまで…
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