50.黒ずむ心
探索を終えて集めたものを確認する。
缶詰や携帯食料が鞄3つ分は集められた。
残念だったのが銃や刀剣類はなかった。
…人が1人死んだのに、これだけしかなかった。
栗原は正直好きじゃなかったけど、死んでいいとは思ってない。
一緒に行動した人が死ぬのは辛い…けど落ち込んでいる暇はない。
あたしが落ち込んでいる間にまた誰かが死ぬ。
…絶対にこの3人は死なせない…そのためならあたしは人だって…
「…いさん、結さん?聞いてますか?」
「あっごめん。ちょっと考え事してて…なんだっけ?」
「これからどうするかって話です。2人は食べ物を3階に移動して今日は休もうって、結さんはどうしたいですか?」
「…あたしは2階に行きたい。今日中に武器と、カードキーを手に入れて明日別のフロアに行く。」
「おいおい…少し焦りすぎじゃないか?お前の状態だってあるんだ少し休んだほうが…」
「その逆。あたしがまともな内にできることをやっておきたいの。」
「…それって諦めたってわけじゃないよな?」
「もちろん。けど、どうにかできる方法も分からない。それなら今やるべきだと思う。」
3人とも黙ってしまった。
きっと迷っているんだと思う。休めば治るかもしれない。
でもそうじゃなかったら?休んでいる間にあたしが正気を失くすかもしれない。
正解なんて分からない。3人もそれは分かっているはず。
「…ひとまずこの食糧を3階に移動させてから決めないか?」
「そうね…またカマキリみたいなやつが出るかもしれないし。移動しましょう。」
「分かった。…そういえば奥はどうする?調べる?」
「…いややめておこう。思うに1階は広い場所にそれぞれデカいやつが配備されてる可能性がある。」
「確かに、狼も北側の奥にいたっけ。ワニも別の広間だったし、そう考えるといるかもしれない。」
「そうだな。薬が気になるが、今は食糧の方を先に運びたい。…栗原の犠牲を無駄にしたくない…」
ひとまず3階に戻ることにした。
3階には奥のエレベーターで簡単に戻ることができた為、苦労しなかった。
…薬…あたしを治せるような薬があったらいいけど…みんなを危険に晒してまで行こうとは思わなかった。
エレベーターから降りる。…少しから話し声がする。
近づいて確認してみると、男女2人が言い合っている。
2人とも余裕がないのか、掴み合いになっていて今にも殴り合いの喧嘩が起きそうだ。
ひとまず止めないと、あたしは2人に近づいて話す。
「ねえちょっと、あなた達。どうしたの?」
「ああ?!うっせえ!…あんたらその鞄もしかして、食い物持ってるのか?!それをよこせ!!」
「そ、そうよ!私たちもう5日も食べてないのよ?!助けなさいよ!」
そう言ってあたしに詰め寄ってくる。
…どうしてだろう。助けたいと思わない。むしろ殺したいとすら思えてくる…
だめ…今のあたしに引っ張られてたら正気じゃなくなる。
過去のあたしを思い出せ…他人を助ける事だけをしていた私を…
あたしは顔に笑顔を貼り付けて、明るいふりをしながら龍之介に言った。
「ねえ!少し分けてあげてもいいかな?困ってるみたいだし。いいかな?」
「はぁ、たく…いいけどよ、今回だけだぞ?」
「うん!って言う事だから、少し待って?大丈夫だから。」
「う…ほ、ほんとだな?…いやそれよりも…!」
懐から何かを取り出そうとしていたので、それより早く銃を男子の頭に突きつける。
男子は状況が飲み込めていないのか、固まっている。女子の方はそれを見て小さく悲鳴を上げていた。
自分の顔から笑顔が抜け落ちたのがわかる。
…ああ、イライラする…なんで黙って待っていられないんだろう…
「…食べ物分けるって言ったよね?なんで待ってられないの?」
「あ…う…だ、だって騙そうとして…ると…」
「は?何も持ってないあんた騙してどうするの?少しは頭使ったら?使ってないならその頭いらないよね?じゃあ」
「結そこまでだ!ほら!これやるからどっか行け!」
2人は龍之介が投げた携帯食料を拾って、逃げるように立ち去っていった。
…助かった…あのまま話してたらあたしは…
みんなが悲しそうな目であたしを見ている。それを見て落ち着いてくる。…同時に嫌になる…
「ごめん、助かった。…また迷惑かけると思う。」
「わかってるさ。…お前の言った通り急いだ方がいいな…これを置いたら2階に行くか?」
「…お願いできる?あたしも頑張るから。けど、」
「?なんですか?」「何かしら?私も力になるわよ?」
「2人は3階に居て。一緒に連れて行けない。」
驚いた顔をしてあたしに近づいてくる2人。
「なんでですか?!…た、確かに力不足ですけど…」
「私もそう思ってる。けど、できる事はあるはずよ?あなた達だけで行かせられないわ。」
「人型の怪物。…あたしはあいつが怖い…あいつに会ったらみんなを守れないから…」
そう2階には奴がいる。1日目あたしに強烈なトラウマを植え付けたやつ…思い出すとまだ体が震える…
見つからないようにするためには、少数の方がいい。
そう伝えても2人は納得しない。けど今のあたしは…
…2人を囮にして探索すればいい…
こんな邪悪な考えが頭をよぎる。
もし2人を連れて行ったら実行するかもしれない。今は自分を信じられない、危険は犯せない。
何か2人を置いていく理由があれば…
そうだ…一つ思いついた。これなら2人も納得してくれるはず。
50話達成!あと10話前後で1章が終わる予定…
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