49.仲間
カマキリの怪物を倒し、先へと進む。
進んだ先にあったのは3階にあったようなフードコートだ。
それに思ったよりも荒れていない。おそらくカマキリがいたせいで、他の怪物が立ち入らなかったからだと思う。
開けていて見通しもいいので、2人ずつで分かれて探索することにした。
舞と静華、あたしと龍之介で分かれた。あの2人で大丈夫だろうか?
聞いてみたけど、大丈夫と言ってすぐに言ってしまった。あたし何かしたかな…
考えてもわからないので、あたし達も探索を始める。
冷蔵庫の中や、従業員室の中を一通り調べていった。冷蔵庫の中のものは少し匂いが気になったのでやめておく。
従業員室に入った時に龍之介に話しかけられる。
「…なあ、結。怪我の具合はどうなんだ?」
「んー?ああ、もう大丈夫だよ。さっきの見てたでしょ?というか龍之介も少しは戦ってよね?」
「それは悪いと思ってる。少し気になることがあったからな。」
「気になること?何それ。」
「…お前だよ。」
突然龍之介に右腕を引っ張られ、タオルを剥がされた。
…昨日はまだ傷があったとわかったけど、今は跡すら残ってない。
それを見て龍之介が複雑そうな顔をしていた。
「…言いたいことあるでしょ。わかってる、わかってるから…」
「手当てしたときは出血が酷かったから、すぐに止血した。だからどんな怪我かまでは分からなかったが、それでもすぐに治る怪我じゃない。」
「うん…そうだね。だって傷口から骨見えてたし、傷口だって黒ずんで壊死してたから。」
「じゃあなんで治ってんだよ!いや、なんで言わなかったんだ!」
「言えるわけないでしょ!!」
言えるわけない。切り裂かれて、腐りかけていた腕が一晩で治りましたなんて。
…そんなの人間じゃない…じゃああたしは今なんなの?
見た目が人間なだけで、中身はなんなのよ…
それに…
「言ったら…みんなも、自分がそうなんじゃないかと思うでしょ…」
「そんななわけ!…いや…」
「…ある人が言ってたの、変異するときに正気を失くすと怪物になるって。」
みんなが変異するとは限らない。けどしないとは言えない。
もしあたしが怪物になりかけたことを話したらきっとみんなも自分を疑い始める。
そんなことになったら…
「こんな状況なの、些細なことで疑心暗鬼になる。だから…」
「じゃあお前はもう平気なのか?変異しなかったんだろ?」
「…そう見える?龍之介にはあたしが正気に見えるの?」
「…見えない。特にさっき怪物と戦ってる時のお前は、まともじゃなかった。」
まともじゃない…か…そうだよ。
あたしはまともじゃない。だってさ…
「うん…分かってる。…だってさ…楽しかったんだよね。怪物を…ううん生き物を殺すのが。」
「…ああ、お前笑ってたよ。楽しそうにさ、怪物を切り刻んでた…笑いながら…」
………ああそっか…もしかして最初に会った男子生徒が言っていた言葉。
あたしが笑っていたって言葉、あれは間違ってなかったのかもしれない。
ああし自身が気づいてないだけで、あたしは最初から…怪物だったのかもしれない…
言葉が見つからずお互い何も言えない。
探索も進まず上の空でただ作業しているふりを続ける。
「…結、お前は今後どうしたいんだ?」
「どうしたいって…あたしじゃなくてみんなに聞くべきじゃない?人の形をした怪物を引き連れてもいいかって…」
「それ二度と言うな…頼む。」
「…だって!わかんないんだもん!…どうしたいかなんて……教えてよ…」
「なんで、一緒に来ればいいだろ。2人もちゃんと説明すれば納得するはずだ。」
「…さっきさ、あたしが怪物を殺した時…みんながあたしをどんな目で見てたか知ってる?」
「………」
「そう言う事だよ…一緒に行ったらむしろみんなが不安になる。だから…」
一緒に行きたい…自分がなんなのかも分からないのに、1人になんてなりたくない…
けどみんなに迷惑をかけたくない…どうしたらいいかなんてわかんない…
「他のやつがどうかなんて…関係ねえよ…ああそうだ!関係ねえ!」
「え?いや関係なくは…」
「それに、お前が今なんなのかなんて知るか。お前は神代結だろ?だったら一緒に来い。」
「…後ろで突然怪物になるかもしないよ?今のあたしはいつ爆発するか分からない爆弾でしかないんだよ…」
「爆弾なら爆発しなければ問題ない!お前が他のやつを心配するように、俺はお前が心配なんだよ!だから来い!わかったな?」
…どうしよう…本当に一緒に行っていいのかな…
絶対に迷惑をかける。不安にさせる。…後悔させる。
それがわかってるはずなのに、どうして…そんなに真っ直ぐあたしを見れるの?
わかんないよ…でも信じたい。信じてほしい。一緒がいい…
「絶対に後悔すると思うよ?それでもいいの?」
「後悔なんてもうしてる。お前を守れなかった、だから今度は守ってやる。」
「ぐす…うん、守ってね…龍之介。」
「ああ…まかせろ。…ん?」
「え?どうした…?!ちょ、ちょっとそこのふたりいつからそこに…」
入り口のドアの間から2人がこっちを見ていた。
なんかニヤニヤしてるんだけど!何さー!ああもうなんか恥ずかしい!
居た堪れなくなり、外に逃げ出した。
「ねえ舞、あれどう思う?」
「はい、実質プロポーズですよね…意外とやりますね…龍之介さん。」
「プロ?!ち、違う!そんなんじゃねえ!」
…従業員室で3人が何やら話していたけど、恥ずかしさで顔を覆っていて聞いてなかった。
端っこでうずくまっていたら3人が探しに来ていた。
…さっきのことを話さないと。…言いたくない…嫌われたくない…
でも隠しておくこともできない。俯いて何も言えずにいると、舞が手を握ってくれた。
…すごく暖かくて、不安な気持ちが安楽でいく。きっと大丈夫だ…
「…みんなに聞いて欲しいことがあるの。あたしが今どんな状態なのか。」
「ええ、聞かせてもらえるかしら。」「お願いします。」「ああ、聞いてやる。」
包み隠さずあたしに起こったことを話す。
体が怪物になりかけたこと。
重症だったはずの腕が治っていたこと。
怪物を…生き物を殺すことが楽しいと思っていたこと。
みんなは黙って聞いていてくれた。
最後まで話終わると、不安な気持ちが押し寄せてきた。
けど、
「不安…だったんですよね?わたしは結さんの気持ちわかります。」
「そうね、むしろもっと早く言って欲しかったわ。…通りで様子がおかしかったのね。」
「不安にさせたのは俺にも原因がある。だから今度からはもっと俺たちを頼れ。いいな?」
「…本当にいいの?あたしがどうなるかなんてわかんないんだよ?それなのに…」
「いいんですよ。それに結さんがいないと寂しいです…」
「私はあなたに何も返せてない。だから今度は私があなたを助ける番よ。」
「俺もだ。…お、俺がお前を……みんなで守ってやるからな!」
「みんな…ありがとう…ありがと…うぅ…ぐす…」
よかった…あたしはまだみんなと一緒にいていいんだ…
怖かった。今までで一番怖かった…みんなに拒絶されるのが…
けどみんなはこんなあたしを受け入れてくれた。
ならあたしはそれに応えないといけない。
もう迷わない。あたしがなんなのかは関係ない、あたしはあたしだ。
この力で…みんなを守る。それでいい…ううんそうしたい。
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