45.変質
ゴミを持って外に出る。自分の来た服を部屋の中に残していくのは恥ずかしい。
ただ持って歩くわけにも行かないので、気づかれにくい端の方に捨てる。ちょっと罪悪感…誰も見ませんように!
恒例となった吹き抜けからの全体の見渡し。
…思ったよりも数が少ない。
1階には相変わらず蛇のやつがいるけど、1体しか見当たらない。
2、3階は見える範囲ではなにもいない。
北側にいるのかな…それとも数が減ってる?
それなら好都合だ。まだ1、2階は全く調べてない。今のうちに調べておきたい。
そう思い、手をかけている柵に力が入る。
その時だった。何かが割れるような音が手元から聞こえた。
「?…あれ割れてる。」
あたしが握った、柵上部木製の手すりが割れていた。
?劣化してたのかな…そういえば前に、この柵脆そうとか思って曲げようとしてたっけ。
なんだろう、今なら曲げれそうだ。…そんなわけないよね。
それよりも早く合流しないと!
あたしは走って、フードコートに向かった。
南端から走り続けて、フードコートにたどり着く。
ゆっくり寝たおかげかすこぶる調子がいい、全然疲れない。
それと着いた時に気づいたけど、一昨日あたしが狼をぶちまけた肉片が少し片付けられている。
血の跡とか、壊れた道具とかはまだ残っているけど、まだマシと思える。
禁止時間は人とか怪物を運んできてるけど、こういうのを片付けるためにもあるのかもしれない。
それらを見送り、フードコートを進む。
近くのセーフルームの位置的に、本屋の方にみんなはいると思う。
早く合流したい。そう思い進むと、
「*******!!」
「おっと…そりゃいるよね…」
途中に蛇人間がいた。
一昨日見た変異の光景が浮かぶ。
…こいつも元は人間なのかもしれない。
でも、あたしはもう迷わない。迷ったら誰かが傷つく。
それなら…誰であろうと、あたしの邪魔をするなら倒す!
声にならない音を発しながらこちらに迫ってくる。この距離なら当てられる。
冷静に拳銃を構え、撃つ。?なんか衝撃が軽い。
弾丸は避けられることなく右目を貫く。
怪物は痛みに悶え、狼狽えている。
「***!!」
「避けないなら!」
立て続けに2発目を放つ。
残った左目を貫く。怪物は両方の目から血を流し、苦しんでいる。これでやつの視界は封じた。
後は一気に距離を詰めて、頭を吹き飛ばす!
「**!***!!」
やっぱり昨日の変異したやつより弱い。
そうなると、昨日のやつが強かったのは注射が原因?
そもそも変異したのものそのせいなのかも…いやあたしが昨日変異しかかったからそれは違う。
それよりも今は目の前のこいつをなんとかしよう。
何も見えないからか、怪物は闇雲に腕を振り回している。
あたしは冷静に拳銃を構えて頭を狙う。
「!***」
「っ!やば!」
足音で気づいたのか、こちら目掛けて爪を振るう。
鋭い爪が迫ってくる。
咄嗟に体を逸らして躱すが、そのせいで拳銃を構える体勢が崩れてしまう。
その時ふと思った。…今の体勢でも片手でなら撃てるんじゃないか?
さっき2発撃った時もそこまで衝撃を感じなかった。
ふふ…そうだ、やってみよう。
崩れた体勢から頭を狙い直し、片手で持ってる拳銃の引き金を引いた。
放たれた弾丸は、狂いなく怪物の脳天を撃ち抜く。そしてそのままゆっくりと地面に倒れ込んだ。
地面に倒れ込んでいる死体を見て冷静になってくる。
…あれあたしなんで片手で撃ったんだ?
別にあんな体勢で撃たなくても、下がって体勢を立て直してから撃てば良かったのに…
もし、腕が耐えきれなかったら最悪の場合死んでたのに…なんで?
なんだろうこの気持ち…あたしは…
「結!大丈夫か?!」
「っ!龍之介!みんな!」
声のする方を見ると、3人がこっちに向かっていた。銃声を聞いたからか、慌てているようだ。
すぐにみんなに駆け寄っていくと、
「結!よかった、無事で!」
「ふぉえ!ちょ、ちょっと?!」
龍之介に抱きつかれた。
そのあと泣きながらずっと抱きつき続けてきたので、1発頬にくれてやった。
…よかった。みんな無事だった。無事再開できて思わず泣いてしまった。
そんなあたしと、無様に地面に倒れている奴を連れて落ち着ける場所に向かうことにした。
ただ…一つ気がかりなことがあった。
…あの時、蛇人間と戦った時。あたしは最後の瞬間こう思ってしまった。
楽しいと…
落ち着いて話をするため、近くの従業員室に入る。…あたしのせいで汚れていないとこの…
1人を正座させ、他2人と話をする。
怪我の状態や、体調を聞かれたのでもう大丈夫だと答えておく。腕の傷はどうやって説明しよう…考えておかないと…
聞くと、昨日3人で色々と動いていたようだ。
なんでも龍之介が見つけたメモには、それぞれの階に何があるか簡単に書いてあった。
3階には衣服
2階には武器、カードキー
1階には食料、薬
そう書かれていた。
「食料と武器って3階に置いてある鞄にも入ってるじゃん。」
「ええそうね。けどどれも量が少なかったり、性能が低いものが多いでしょ?」
「そうだ。だからここに書いてある通りだとすると、その階にある物の方が鞄に入っているものよりいいものなんじゃないかと思ってな。」
「それはあるかも…けど1階や2階って危ないでしょ?まさか行ったの?」
「いや、まだ行ってない。昨日は他の人に声をかけたり、怪物の数を減らしたりしてたな。」
「怪物の数は減らせたけど…人の方はあまり芳しくないわ。みんな正気を失っている人ばかりで…」
この施設で目が覚めて5日目。
あたし達みたいに、食料や仲間を見つけて怪物に対抗できるなら不安は少ない。
けどずっと1人だったら?5日間何も食べずに過ごしていたら?まともでなんていられないだろう…
あたし達を遠巻きに見ていた人たちはそうなんだろう…助けてあげたいけど、今それはできない。
1人に何かをあげれば、他の人もそこに漬け込んでくる。
そうなるとあたし達が活動する為の分がなくなる。
そうなってしまうと結局みんな共倒れだ。
全員を救うには結局のところ、脱出方法を見つけるしかないのかもしれない。
「あっでも1人協力してくれる人がいましたよ!」
「そうなの?どんな人?いきなり抱きついてこない人かな?」
「そ、それはほとんどの人がそうじゃないかと…」
「いやーわかんないよ?どっかのやつはそうだったし。」
「……言われてるわよ真壁先生。」
「…本当に悪かったよ…あんまりにも嬉しかったから…」
…心配してくれてたのは嬉しい。けどそれはそれ、これはこれ。
後こいつは前科がありすぎるから、ちゃんとお灸を据えておかないといけない。
それと昨日から気になってることがある。
「そ、その人とは後で合流しますから!その時に紹介しますね!」
「うん、わかった。ところで気にあってることがあるんだけど…ねえ静華。」
「あら、何かしら?」
「…真壁、先生って何?」
「?ああ、だってこの人あたしのクラスに教育実習で来ていたから、その時の癖でつい。」
……なんだって?
え?聞き間違えじゃないよね?
「え?!は?!龍之介が教師?!ウッソでしょ!?こんな変態が?!」
「ちょ!おま!言いすぎだろ!…俺だってやる時はやる男だからな。」
「へぇ!教師なのに年下の女の子にあれこれしたり、荷物あさったりするんだ!へえ!」
「…龍之介さんそんなことしたんですか?ちょっと離れてもらえます?」
「ちが…くはないけど!誤解だ!わざとじゃない!」
「いや、わざとじゃなくてもそれはどうかと思うわ…ドン引きです…」
まじか〜、こんなやつが教師…世も末だ…
まあ確かに頼りにはなるんだけど…けどなぁ…他がなぁ…
しばらくの間女子3人による尋問は続いた。
…そのせいであたしが漏らしたのもバレたし、下を見られたのも全部バレた。
口を滑らせた男は、とりあえず殴っておいた。
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