42.予期せぬ出会い
…誰かの背中ってすごく安心する…
この施設で目が覚めてから、ずっと気を張って、無理して、自分を誤魔化してきた…
…もうそうする必要もなくなる…
ああ、せっかく友達が増えたのに……悔しいな……
「…神代ついたぞ。」
「ん…けほ…ありがと…」
「えっ…と、この鞄に食べ物と後着替えが入れてあります…。」
「うん、ありがと…それじゃああたしはここで休むよ…」
「待て、俺もここで休むぞ?雪原もそうだろ?」
「は、はい!わたしもかみし…結さんが心配ですから!」
そう言ってくるのはわかってた。でもそれはできない。
…だってあたしは…ここで死ぬ。2人にその姿を見せたくない。
最後なんだ…残った気力を振り絞って、平気なふりをしろ…
2人にはまだ…やってほしいことがあるんだから…
「…頼みたいことがあるの。」
「なんだ?すぐにやってきてやる。」
「…少し戻ったところにある服屋にセーフルームがある。そこにあたしの友達がいるの…光明寺静華、その子をお願い。」
「わかった…すぐに連れてくる。それまで待ってろ。」
「あたしは大丈夫だから、そっちをお願い…それにメモに書いてあったこと調べなきゃいけないでしょ?」
「それはお前が治ってからで!」
「1、2日で治るとは思えないし、先に調べておいてよ。後で合流するから。」
「で、でも!わたしも、結さんが心配です!」
「ありがと。でもあたしより、そっちを優先してほしい。大丈夫!こんなの寝てれば治るから!ほら元気になってきてるでしょ?」
「で、でも!…でも…」
熱を感じない体を、機械を操作するように動かす。
その様子を見て、不安そうな顔で俯く舞の肩に龍之介が手を置く。
…苦虫でも噛み締めた顔してる。絶対納得してない。
多分だけどあたしの考えに気づいてる…けど、
「…本当に良くなるんだな?」
「本当だよ〜、それに一緒の部屋で寝たら不純異性交遊だよ?…大丈夫だから…ね?」
「………わかった、お前の頼みを優先する。だから…絶対に死ぬな。それと、逐一連絡しろ。」
「…うん、ありがとう龍之介。」
2人と連絡先を交換する。
最後まで納得してなかったと思う…でもあたしのことを思って受け入れてくれた。
ありがとう…。2人はあたしにとって最高の友達だよ。
あたしをセーフルーム前に残して2人は去っていく……振り返ってこっちを見てくるから…平気なフリは続ける。
やっと姿が見えなくなった時、地面に倒れ込んだ。
後は、禁止時間が明けてセーフルームに入ったら全てが終わる。
そう思っていたのに……
「相変わらず、ひどい顔をしているわね。」
「?!え…栄華…さん…」
最後に見るのがこの人になるとは思わなかった…
栄華さんがあたしの状態を見てため息をつく。
…なんでここに?まだ外出禁止時間は終わってない…
つまりずっと外にいた?…まあ従業員室とかに隠れていたのかもしれない…
「はあ…それにしても、まさかここまで重症を負うとはね…」
「…な…にが……いい…ゲホ!ゴホ!ゴフ!」
「あなたは喋らなくていいわ。黙って私の話を聞きなさい。」
…なんなんだこの人…
まあいいや…どうせ喋れないから…黙って聞いてよう…
「あなたに警告しておくわ。…ちゃんと覚えておきなさい。」
警告?
「一つ、今みたいに出血のひどい怪我を負うのはやめなさい。」
「…そんな…の…言われ…ゲホ!ゲホ!」
「もし負った場合はなんでもいいから、食べなさい…最悪変異者の肉でもいいわ。」
「?!」
…この人何言ってるの?え?今…怪物の肉を食えって言った?
頭がおかしいんじゃないの?
「二つ、これ以上あなたの…神代結の過去を詮索するのはやめなさい。」
「!なん…で…」
「…知ったらあなたは確実に後悔するわ…最悪の場合…いえ、とにかくやめなさい。そうすれば、夢で思い出すこともなくなる。」
「…………」
………この人は何者?
なんであたしが夢で、過去を思い出していることを知ってるの?誰にも言ったことはない…
それに過去のあたしを知ってる?…じゃあなんで今まで…何も…
「納得できないなら、彼女にでも聞きなさい。いずれ会えるわ。」
彼女って誰?……わからない…
あなたは何者なの?あたしの何を知ってるの?……聞きたいことがたくさんある…
でもあたしの体は動かない…這いつくばって動くのがやっとだ…
「三つ、その髪飾りは絶対に無くさないこと。それがあなたを救う可能性になるわ。」
……なんでここで髪かざり?
いやまあ、気に入ってるし…最初からつけていたから、捨てるつもりはないんだけど…
言うべきことを言ったのか、振り返って立ち去ろうとする…
まだこの人には聞きたいことがたくさんある。ここで逃すわけにはいかない…!
這って彼女に近づこうとすると、こちらに目も向けず話し始める。
「…この後あなたは命運を分けることになる。異常なものを見るかもしれない…けれど決して正気を失わないように…そうじゃないと、人間として死ぬことすら出来なくなるわ…」
「それは…どういう…」
「すぐに分かるわ…あなたはもう知っているでしょう?」
人間として………人間が怪物に変わる……
………待って…いや…いやいや嫌嫌!!嫌!それだけは嫌だ!
あんな姿になるくらいなら死んだほうがいい!
それに怪物になったら…友達を襲うことになる…絶対に嫌!
!待って…それを知っているってことは、この人は絶対に何か知ってる!ここで逃したらあたしは…!
絶対に逃さない…!最悪撃ってでも!
消えかけた気力を振り絞り、這いつくばっての視界から消えた栄華さんを追う…けれど、
「…ま…って!……え…どこにも…いない…」
なん…で…?辺りに隠れられる場所はない…それにあたしとは1、2メートルぐらいしかなかった…
どうなって……まさか飛び降りた?……そんな訳っ?!
「グゥ…があぁ!…胸が…苦しい…!」
突然胸が締め付けられるような痛みがする…。それだけじゃない。
体の中で何かが暴れている…さっきまで何も感じなかったはずなのに…!全身に激痛を感じる…
熱い…熱い…熱い…!全身が燃えるような痛みと熱でのたうち回ることしかできない…
頭の中は何かに掻き回されるような不快感、視界は何十にも重なって、万華鏡のようだ…
『人間として死ぬことすら出来なくなるわ…』
あの言葉が本当なら…
……ダメだ…っここじゃあだめ!……セーフルームの…中にいかないと…!
せめて…誰にも……見られないように…
感想コメント、いいね、評価お待ちしております。




