38.最奥にて
機械を見送り先を目指す。
……だんだんと痛みすら感じなくなってきた…これは本格的に限界が近い…
そんなあたしの様子に気づいているのか、真壁さんはこっちを逐一確認している。
「ごほ!ごほ!あぁ〜……そんなに見られると照れるんだけど?」
「なら心配しなくても済むように、その体調を治せ。」
「はは〜できたらやってるよ〜…ごほっ!ごほ!」
「…悪い、俺のせいで怪我したってのに…こんなことに付き合わせて…」
「何言ってんの?真壁さんの所為じゃないでしょ?あたっごほ!げほ!」
「……本当にすまない…」
「いいって…それにこの時間に何があるか、確認しなくちゃいけないって思ってたから。」
これ以上心配はかけられない。
…しっかりしないと…それにしても、お腹減った…
しんどい…けど、真壁さんに悟られないように、平気なふりをして歩く。
ふと、あたりが明るくなる。突然の変化で目が眩んだ。
…ひょっとして、時間切れ?Gフォンを確認してみる。…AM6:00…まだ大丈夫…
「ごほ…けほ…時間はまだ大丈夫みたい…?真壁さん?」
「お前…そんな顔色して今まで大丈夫なんて言ってたのか…」
「自分で自分の顔色なんてわかんないよ〜…」
「死人みたいな色してるぞ…この辺りなら鍵を持ってるからそこで休め。」
「はは…冗談…」
「冗談なんか!……せめておぶって」
「そうしたら…銃を構えられないでしょ?…あたしは…ごほ!大丈夫…だから…」
「なんでそうまでして…」
なんで…なんでだろう…?
ここから脱出するため…それもある。けどそれ以上に周りの人が傷つくのが我慢ならない。
この先にみんなを助ける手がかりがあるかもしれない。それなのに待ってるだけなんて、できない。
それに真壁さんを1人で行かせることも嫌だ。
…置いていかれることよりも、1人で行かせて死なせて死なせてしまうかもしれない…
これ以上自分の知っている人が死ぬのは嫌だ…自分が死ぬことよりも。
「…前に言ったでしょ?あたしが戦うって…だから…ごほ!ごほ!」
「あれは俺のために言っただけだろ?そんなの気にしなくていい。」
「かもね…でもあたしは行くよ。ここで真壁さんだけ行かせたら、不安で眠れないから。」
「俺ってそんなに頼りないか?」
「そんなじゃないよ〜…これはあたしが心配性なだけ…さっもう行くよ、さっきより歩きやすいし…」
「ああ…」
…歩き続けようやく奥が見えてくる…ただ昼間に見た時と違っていた。
奥が見える店に隠れながら様子をみる。
昼間に見た大きな鉄の壁それが開いていた…。
その先に見えるのは、広い空間。
ここからだと少し見ずらいけど、その中には円形の部屋に続く入り口が見える。…もしかしてエレベーター?
狼が3階にいた理由が分かった…あれでここに運んできたんだ…
気になるのはそれだけじゃない。空間を抜けたさらに奥……そこには別のショッピングモールが見える。
左側に道が曲がっているのをみると、こっちの北側に続いているのかもしれない。
……北側にある扉ってもしかしてあっち側に続いてる?出口じゃなかったんだ…
最後に一番気になっていたこと…それは、防護服を着た集団だ。
黒い防護服を着たやつは真壁さんが持っているような大きな銃を持って周りを警戒している。
そして黄色い防護服を着たやつは、地面に倒れている人…男女の学生に何かしてる。ここからだと何してるか、見えない…
「あれ、アサルトライフルか?軍隊か何かかよ…」
「けどここからじゃまだ見ずらいし、もう少し近づいて…」
「やめとけ。もし近くで咳が出たら気づかれるぞ。」
「けど……そうだ、もう一つの銃に望遠鏡がついてなかった?あれ外せない?」
「ああ、ライフルの方か…外せるのかこれ…」
真壁さんが銃を下ろして確認する。
あれこれ見ている…あたしにはさっぱり分からない…
「…無理だな、ネジ止めされているから外せそうにない。」
「なら少し持っててもらえる?」
「ああ、分かった。」
銃を真壁さんに支えてもらい、望遠鏡をのぞく。
…奥の様子がさっきよりも見える…黄色の奴の方をみる。マジックミラーみたいになってるのか、顔は見えない。
手元を見ると何か持ってる。…あれは拳銃…いや注射器?拳銃の形をしたそれにはピンクの液体が入っている…
それを地面に寝ている2人の首に…
「まずい!止めないと!」
「おい!ダメだって!落ち着け!何を見たんだ!」
「あいつら2人に何か注射しようとしてる!」
「何?…確かにやばいけど、俺らが行っても死に行くだけだ!今は耐えろ…!」
「っでも…ごほ!けほ…っく!…」
助けに行きたい!絶対にまずいことになる!
…でも弱ったあたしは、真壁さんに掴まれて簡単に動けなくなる。
今助けないと取り返しがつかないことになる。あの注射を打たせたら絶対にだめ!理由は分からないけど、そう確信できる。
その時だった。ふと、記憶の中で言われたことを思い出す。
自分の中で何かが叫んでいる………そうだ…助けないと。
助けたい…助けたい…助けたい!…助けないといけない!そうじゃないと私は!
「あの2人を助ける…離せ!私は!」
「おい!暴れるな!…っ力強!」
「私は助けないといけない…それが私の役目だ…!」
「お前……なら俺の役目はお前を守ることだ!」
そう言って上から押さえつけてくる。
体が思ったように動かない…けどそんなことは関係ない。
人を助けて、結びつけるそれが父に言われた私の役目だ。それを守れないなら私に価値はない。
「クソ!どけ!あの2人を!」
「お前は神代じゃないな?…お前は誰だ?」
「何を言ってる?私は……私が……」
…………………
?あれあたし何して…自分の中で何かの熱が急激に引いていく…
「……あの重いんだけど…」
「ふぅ…戻ったか…悪いすぐどく。」
「…もしかして、また出てきてた?」
「ああ。…お前の体調が普通だったら投げ飛ばされてたよ…」
「そっか…ごめん、迷惑かけて…」
「いいさお互い様だ。それよりあっちだ。」
「!そうだった!」
振り返って見ると、作業員が2人から離れている。
…遅かった。あいつらあの2人に何をしたんだろう…
全ての作業が終ったのか、防護服の集団が引き上げていく。
思わず、身を乗り出してその姿を見送った。
?!黄色い防護服の人が振り返り、こっちをみてる!気づかれた!
そう思って身構えていたが、その人は何もしようとしない…なんで黒いやつに言わない?
しばらく見ていると……ポケットから何か落とす。
そして…そのまま、奥に消えていった…
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