34.疑念
………この感じ、まただ。あたしが忘れていた記憶。
ゆっくりと目の前の景色が変わっていく…それと同時に子供の声が聞こえてくる。
前に見た少年が大きくなってる、けどまだやんちゃそうだ。
前の時から…4年ぐらい経ったかな…多分5年生ぐらいかな?
いつものように、喧嘩しているクラスメイトの間に入って仲裁をしていた。
4年前から、もう当たり前になった光景。
『誰かが喧嘩をしたら神代がなんとかしてくれる。』
『先生よりも神代に頼ろう。』
『全部神代がなんとかしてくれる。』
そう…いつもそうだった。
私もみんなが頼ってくれることが嬉しくて、自分の役目を果たせてると思っていたからそれに疑問を感じてなかった。
けど、この日全て崩れ去った…。
いつものように喧嘩をしている男女の間に入って仲裁をする。
みんなもまたか…と半ば呆れていた。
みんなが私を見ている。
「はいはい!喧嘩はだめ!今回はなんで喧嘩したの?」
「うるさいな!いつもいつも邪魔しやがって!」
「うんうん、そうやっていつも喧嘩するから私が邪魔するんだよ?」
この時の私は少し…いや、自分が他人よりすごい人間なんだって思い込みがあった。
だからか、言われた男子は自分が見下されているって感じていたのかもしれない。
「神代!お前は誰の味方なんだよ!」
「誰のって…みんなだよ。困ってる人みんなの味方。」
「じゃあなんで俺の味方をしないんだ!それにそれって!」
「裏を返せば誰の味方でもないってことだろ!」
「…は、はあ?何言って…そんなわけ……」
上手く反論できない私を、クラスのみんなが疑いの目で見ている。
いじめていた子も、いじめられた子もみんなが…
この時はっきりと否定すればよかった…そうすれば、未来は変わってたかもしれない。
背中が痛い。…なんで地面で寝てるんだっけ?
それに、また子供の頃の記憶か。
………あの後どうなったんだっけ…思い出せない…けど…いい結果ではなかったと思う。
ゆっくりと体を起こして、辺りを見渡す。
狭い部屋にロッカーと机。多分従業員室かな…あれなんでここにいるんだっけ?
立ちあがろうとして右手を地面についた瞬間、
「いったぁああああああああ?!!!」
脱臼した時と、同等いやそれ以上の痛みを感じた。
痛っ!めちゃくちゃ痛い!あばばばばば!!!腕が…!!
涙目になりながら状態を見る。
腕にはタオルが巻いてあるけど、出血で真っ赤になって湿っている。
これまだ血が止まってない。それに、傷に直でタオルが巻いてあるせいか、動かすたびに傷に当たって激痛が走る。
「おい、神代起きたのか。ってお前!じっとしてろ!」
「ま、真壁しゃん……」
「いつも通りか…」
「ふぇ…?」
「…いいからじっとしてろ、一応水で洗ったけど傷が深すぎて止血ぐらいしかできなかった。」
「ひゃい……ってあたし、どうしてこんな怪我してるんですか?そうだ!狼は?!」
思い出した!あいつが突然現れて、襲われたんだ!
もしかして、真壁さんがあたしを助けてくれた?
…?なんでそんな変なものを見るような目であたしを見てるの?
「お前…何も覚えてないのか?」
「覚えてないって…何をですか?」
「マジかよ……ああ〜どう説明するか…とりあえず狼はお前がやった。」
聞き間違えかな…痛みで頭がおかしくなったかな?
うんきっとそうだよね…
「…誰が何をやったって?」
「神代が、狼を、倒した。」
「…。あっあたし以外の神代さんが倒したってこ」
「そんなボケはいらねえよ?!お前が倒したんだって!」
「いやいやいや!あたしには無理ですって!」
ぼんやりと…拳銃で撃ったのは覚えてるけど…
うーん、確か効果がなかった気がする。それなのに…
「ちなみにどうやって倒したんですか?」
「さあな。狼がいきなり破裂したように見えたが…」
「破裂…あっ!手榴弾!そういえば持ってた。」
「ああー確かそれっぽいのがあったな…パクらなくてよかった…」
「ん?今なんて?」
「それより!なあ聞きたいことがあるんだが…」
「いやむしろあたしの方が聞きたいこと多いんだけど。」
あたしが気を失ってる間に、あたしが狼を倒したってことでしょ?
…ないわー、いやまあできるかもとは思ったけど…意識がないのにどうやって倒せと…
その時ふと湧き上がる疑問。
………あれ……そもそも、いつ気を失ったっけ?
真壁さんが別の怪物に襲われている時まだ意識はあった。
その後…あたしが時間を稼いで………そうだ狼が机とかを飛ばしてきた…ここまでは思い出せる…
真壁さんの足が見えて…それで…それで…それで?…
その先が…思い出せない……
それに前にもこんなことがあった気がする……
いつだ………………そうだ…あの時だ…
…麻倉君が殺された後…あたしはどうやって蛇人間を殺した?
最初はあまりの恐怖で記憶が飛んだと思ってたけど、なんで今まで疑問に思わなかったの?
あの時のあたしに、怪物を殺せるわけがない…
…じゃあどうやって?もしかしてその時も今日みたいなことが…?
そんなあたしの疑問は真壁さんの言葉で、
「なあ神代、お前って…二重人格なのか?」
あたしの中に、得体の知れない何かがいるかも知れないという疑念に変わった…
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