32.強襲
しばらく屈んだまま歩き続ける…この態勢結構しんどい…
真壁さんあんな大きな銃を2挺担いで歩き続けるなんて、体力あるな〜。
「ゼェ…ゼェ…ああ…重…」
「…………」
そうでもなかった。
それでも着実に進んできたおかげで、出口が見えてくる。
出口付近のフードコートは開けていて、かなり広い。これなら怪物が近くにいても気づける。
それにしても…
「か、神代…ゼェ…つ、ついたぞ…はぁ…」
「………そうですね…」
さっきまで頼りになるって思っていたのに…
い、いやまだ頼りになると思ってる。そうだ、きっとやる時はやるタイプだから。
彼に続いて、出口近くにあるお店に入る。真壁さんが鍵束を取り出して、従業員室の鍵を開ける。
…驚くほど静かだ。怪物の叫び声も聞こえない。
「はぁ…はぁ…よし開いた…待たせたな…」
「いえ…周りに怪物はいないみたいですね。」
「そうだな、思ったよりも数が少ない。」
「ただここから先は主通路を歩くから隠れる場所があまりないから、さっきよりも慎重に移動しないと。」
「そうですね。けど今はここで休みましょう。辛いんでしょう?」
「ああ…2丁も持って歩くもんじゃないな…」
扉を開けようとした時だった。
何か聞こえる…
「…ねえ、これなんの音かわかります?」
「いや…なんだ…」
ドタドタと何かが地面を蹴る音。
…聞き覚えがある…けどあいつは1階にいたはず…
音がさっきよりも大きくなって、地面の揺れを感じる…近づいてきてる…!
「ガァオオオオオオオオオ!!!」
「っ!うるさ!真壁さん!」
「ああ…!クソ!ここにきてボス戦かよ!」
大きな狼が血まみれでこちらを睨んでいた…
狼はこちらを睨んだまま、ゆっくりと近づいてくる…
「こいつ1階にいたはずなのになんで…」
「さあな!けどこうなった以上やるしかねえな!」
不思議な気分だ…妙に落ち着いている…
こいつは流石に無理…そう思う。
けれど同時になんとかなるんじゃないか…そう思っている自分がいる。
こちらを睨む狼は白い毛が赤く染まり、体から赤い肉が露出している。
脚も1本ちぎれてなくなっていて、動きずらそうにしている。
あのワニにお礼を言いたい気分だ。
けれど油断はできない…あの時と違って視界が悪いし、缶詰や閃光手榴弾もない。
「真壁さん、作戦とかあります?」
「いや、ねえな。とにかく撃ちまくってなんとかするぐらいだ。」
「…それならあたしが引きつけますから、確実に当ててください。」
「おいおい!そんな役目任せられるかよ!」
「いえ…どうもあいつ、あたしが狙いみたいですから…」
さっきからこっちしか見てない…どれだけあたしのこと嫌いなのこいつ…
あたしは鞄を下ろして、鉈と銃を構える。
「…みたいだな…わかった、任せる。すぐに始末してやるからな!」
「ええ、頼みます!」
そう言ってあたしは、狼の方へ駆け出した。
…こいつを相手にするのに、馬鹿正直に正面から行っても危険だ。
だから、奴を中心に周りを走って引きつける作戦でいこう。
幸いここは広い。机や椅子が多いから素早くこっちには近づいてこれない。
だから一定の距離を保って戦えれば、多分なんとかなる。
狼と平行に走りだす、やっぱりずっとこっちを見ている…これなら…
拳銃を構えて2発撃つ。
?今…背中に当たった…よね?
「ガォオオオオオオオ!!!」
「つぅ〜!うるさいって!」
もう一度2発撃つ。…当たってはいるけど、効いてない?
撃った後怪物の後ろで火花が見えた…もしかして毛で弾丸が滑ってる?
…けど本命は真壁さんだ、だからあたしは気を引くだけでいい。
真壁さんは、
「クソ!こっち来んな!神代悪い!もう少し耐えてくれ!」
「!あいつら!わかった!そっちも気をつけて!」
真壁さんの方に、人型の怪物が向かっているのが見える。
これだけ音を立てれば気づかれるか…援護…いや真壁さんを信じてあたしは自分のやるべきことをする。
狼を向こうに向かわせないそれがあたしの役目。このままの状態を保ち続けないと…。
それに逃げ回ってわかったことがある。今の狼は前ほどの速さがない、あたしでも十分逃げ続けられる。
これなら…?立ち止まって何を…
「ガァアアアア!!!」
「?!」
大きな体を振り回して、机や椅子を撒き散らし始めた。
かろうじて、近くの柱に隠れてやり過ごす。…柱に色々な破片が刺さってる。あたしに当たったら貫通するよ…
また同じことをするつもりなのか、机や椅子があるところに移動している。さっき隠れた柱は崩れそうだから使えない、移動しないと。
…早く倒さないと、そのうち当たる。真壁さん早くこいつをって…
………あれ?
真壁さんが…………いない……
あれ…なんで…さっきまでそこにいたはず……。
狼に注意しつつ、彼がさっきまでいた場所を探す。
…いた…狼が飛ばした机の下、人の足が見える…嘘…まさか…
「ワォオオオオオ!!!!」
「?!まず…」
狼から視線を外しすぎた…あたしに向かって破片が飛んでくる…
柱は…だめ、遠すぎる…一かバッチか!
地面に伏せて、頭を抱える。頭上を大きな塊が通り抜けていく…細かい破片があたしに向かって降り注いだ。
「っつう…!」
拳ほどの大きさの破片が何度もあたしの体を打ちつける…右腕が切り裂かれて、痛い…
頭を上げて狼を見ると、こちらに近づいて来ているのが見えた。
…どうする…どうやってこいつを倒す……
拳銃は効果が薄い。鉈は…あたしの力じゃ意味がない…もっと強い武器…
真壁さんの銃は…瓦礫の下だからすぐには使えない…他に何か…何か…
…ある。あれならこいつを倒せる…問題はどうやってそれを拾って、使うか…あたしにできるの…?
落ち着いて…体はまだ動く。狼も怪我でそこまで早くは追ってこない。
ならできるはず。いやできるかじゃない…やるだけ…
そうだ…私ならできる。
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