31.私は
真壁さんが扉を少し開けて外を確認する。
外の暗闇が見えると同時に恐怖が襲ってくる。…でも逃げることはできない。
逃げたところで、待っているのは死…だから今は…
「…近くにはいないな、行けるか神代?」
「…はい…あ、少し待ってください。拳銃に弾を入れないと…」
「ああ、それならやっておいたぞ。」
「…そうですか、人の荷物を勝手に漁っていただきありがとうございます。」
「ぐ…俺本当にやらかしてばかりだな…。だがお前もあのGフォンをずっと持っているのはやめとけ。」
…そういえば音がしない。
というか、この人にはデリカシーって言葉はないのかな…
「まさかとは思いますけど、捨てました?」
「ああ、いや待て!ビンタの構えをとるな!理由があるんだ!」
「はぁ…まあ、あれを持ったままだと見つかりますから仕方がないですね…」
「ああ、実際お前をここに連れてくる時に何匹か来ていたからな。投げつけたら追いかけて行ったぞ。」
「あの音に惹かれたのかな…その時画面ってどうなってましたか?」
「ん?ああ…被験者がどうとか書いてあったな…詳しく読んでる余裕はなかったから曖昧だが。」
「そうですか…」
おそらく麻倉君の時と同じ表示だと思う。
あの時はなんて表示されてたっけ………メモしておけばよかった……
「他にはいいか?いいなら行くぞ。暗いからしっかり着いてきてくれ。」
「…わかりました。」
…行きたくない…でも行かないといけない…
心の中で矛盾を抱えたまま、あたしは外に出た。
外に出ると、暗い空間にうっすらと椅子とテーブルが見える。ここはフードコート?
ということは…さっきまでいたのは、お店の従業員室だったんだ。
「神代?行くぞ。」
「あっはい。」
ゆっくりと、足音を立てないように屈んで壁際を歩く。
今の所怪物は見当たらないけど、道の真ん中歩いていたら見つかるよね。
あたしは小声で聞く。
「ねえ、どこに向かうか聞いてもいいですか?」
「ああ、フードコートの出口付近の店だ。あそこの従業員室の鍵も昼間に手に入れておいたからひとまずそこまで行く。」
「…最終的にはどこまで行くんですか?」
「できれば最奥まで行きたいが、怪物の数次第だな。無理そうならそのまま従業員室を転々とする。」
すごいな…そこまで準備してたなんて…。
あたしは他の人を助けたいとは思っていたけど、具体的に何をしていたかって聞かれたら曖昧な答えしか返せない。
…しっかりしないとダメだ…今だって真壁さんに迷惑しかかけてない…
「神代ついてきているか?」
「はい、大丈夫です。」
このままじゃダメだ…恐怖を乗り越えないといけない…。
「止まれ。…クソ3体か…」
「っ!」
見つからないよう注意しながら、真壁さんの視線の先を見る。
そこには今あたしが会いたくないやつがいた。
「まだこっちには気づいていないな…。神代しばらくここで待つぞ。…神代?」
「はっ…はっ…はっ…はっ…!」
「おい、大丈夫か?」
「だ…大丈…夫…です…はっ…はっ…!」
やっぱりダメだ…怖い…怖い怖い怖い!
い、息が苦しい…目の前がチカチカする…落ち着いて…見つかってない…
そうまだ…見つかってない……まだ?…ならいずれ見つかるってことじゃないの?
あいつこっちを見てる気がする…今だって目が合って…
考えちゃダメ!今は何も考えるな!
?…背中があったかい…真壁さんがさすってくれてる。
「…すみません…迷惑をかけて…」
「いやいいさ、それに見つかったとしてもあれくらいならやれる。お前を助けた時だってそうだったろ?」
「はは…あの時は1体でしたよ?」
「なら同じことを3回やればいいだけだろ?楽勝だな。」
そう言って笑いかけてくる。
この人は…気遣いができないのに、こういう気遣いはできるんだ。
…今まで、頼られることはあっても頼ったことがなかった。そっかこんな気分なんだ。
「そうですか、ならその時はお願いしますね?」
「ああ、任せとけ。」
「ええ、頼りにしてますから」
…でもこのままじゃダメだ。この先こんなんじゃ生き残れない、みんなを守れない。
記憶の中でお父さんが言っていた、あたしは結びつける人。みんなを助けられる存在じゃなきゃいけない。
そうだ…あたしは強くなくちゃいけない。そうじゃないと、いけない……そうだ、それが私だったはずだ。
私は神代 結。神の代わりに人を結びつける。そのためならどんなことでもする。
そうどんなことだって…
あの時そう決めた。だから…
パチリと何かが頭の中で弾けた気がした。
………?今何か…気のせいかな…
「よし行ったな…行くぞ神代。」
「はい。」
「?なんだ、もう大丈夫そうだな。」
「え?そうですか?」
「ああ、さっきまではビクビクしてたが今は普通に見える。」
…言われてみれば、先まで感じていた恐怖がどこか薄く感じる。
怪物を見ても、恐怖は感じるけど…それだけだ。
なんだろうこの感覚…いや前にもあった気がする…まるで自分が作り替えられたような…
「その様子なら早くつきそうだな。少しペースを上げるぞ…神代?聞いてるか?」
「えっ?ああはい、わかりました。」
いや逆に好都合だ。とにかく、目の前のことに集中しよう。
あたしは真壁さんの後について歩き出した。
ついさっきまで感じていた違和感はいつの間にか消えていた。だから考えないことにした。
…その結果、どんなことが起こるのかも知らずに…
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