21.生きる意志
目の前には蛇人間。
後ろには巨大な狼の怪物。
このままどっちに行ってもなぶり殺しにされる。
どうする?…考えろ。まだ諦めるわけにはいかない。
1人で死ぬならまだいい、けどあたしの背中には雪原さんがいる。彼女を死なせるわけにはいかない。
行くなら前しかない。だって後ろに戻ったところでできることはない、まだ前の蛇人間の方がどうにか出来そう。
けど、どうする?拳銃は鞄の中だ。鉈は手に持っているけど、雪原さんを支えててるから使えない。そもそも両手が塞がってるから使えない。
鞄の中に手榴弾はあるけど、手が使えないから取れない。
…なにも思いつかない…もう手はないのかな…
…………手はない?…!それなら!
あたしは全力で前に走る。
「か、神代さん?!ま、前に!」
「わかってる!しっかり捕まってて!」
「*****!!」
そのまま距離を詰める。向こうからも詰めてくる。…やっぱりそうくるよね。けど、狙い通りだ。
あたしは足元の瓦礫を蹴り上げる。色々な機械の破片が怪物めがけて飛んでいく。
「*****!」
あたしの動きを予想していなかった蛇人間は、顔を覆って瓦礫から身を守っている。
その横をあたしは走り抜ける。後ろを見ると、蛇人間はまだ横を抜けたことに気づいていない。
…そのさらに後方から巨大な怪物がこちらに迫っているのが見える。想像以上に速い…!
前を向き直り左を見る。
幸い、降りてきたエレベーターの方を見てみると怪物はいなかった。
けど、このまま行っても追いつかれる。もしくは扉を開けてる間に襲われる可能性が高い。
ならやることは一つだけだ。
「雪原さん!ごめん!少し痛いと思う!」
「え?」
あたしは雪原さんの腕を払い、そして。
エレベータの方に投げ飛ばす。
「…っ!神代さん?!何して!」
「先に行ってて!あたしは後で行くから!後これ持ってて!」
鉈を雪原さんの方に投げる。
あれに近づいてできることはない。なら持っててもしょうがない。
怪物達の方に向き直り、あたしは鞄の中から閃光手榴弾を取り出しピンを抜く。使い方は前に聞いたから大丈夫。
蛇人間のものであろう断末魔が聞こえる。敵はもうそこまで来ている…。
ぐちゃぐちゃと嫌な音が聞こえる。多分蛇人間が食べられてるのだろう。追いつかれたらあたしも同じ目にあうのかな…。
そんな想像で背筋が凍る…。…だめ考えるな!
後ろをみると雪原さんがまだ動けずにいる。なんでまだいるの!
「はやく行って!」
「で、でも…神代さんが…!」
「うるさい!!いいから早く行け!!邪魔だ!」
「っ!…ごめん…なさい…」
よろめきながらもエレベーターに向かっていく。
はぁ…やっと行ってくれた。ごめんね、雪原さん。後で必ず謝るから。
さて…あたしはどうやって逃げ切ろう。
何かを踏み砕く音と共に足音が近づいてくる。
あたしは手榴弾を構える。…そういえばこれってどのタイミングで破裂するの?
そう考えているあたしの視界にやつが現れる。
白い大きな顔、赤い瞳、大きな牙、全てがあたしを恐怖させる。
口からは怪物のものであろう血がこべり付いており、端から垂れている。
全身が震える。心臓が締め付けられる。上手く呼吸できない。
あたしはここで死ぬ。そいつを見た瞬間…そう確信できてしまう。
だけどまだ死ねない、死ぬわけにはいかない。拳を握りしめ、舌を噛み、自分の中の確信という恐怖をごまかす。
ゆっくりとこちらを見る怪物に向けて、あたしは…手榴弾を投げた。
放物線を描いて怪物に向かって行く。それを訝しげな目で見ている怪物。
そうだ、そのまま見てなさい。あたしは腕で目を塞ぐ。
瞬間、辺りは白に包まれる。
「グォ!?グガアァァ!!」
怪物が苦しみの声を上げる。この瞬間を逃すわけにはいかない。
後ろのエレベーター…だめ。さっき上に登ったばかりだから来るまで時間がかかる。他に上に上がるには…
そうだ…!広間のエレベーター!あれがあった!…ここから走って20分くらいか…
あたしは走り出した。
移動しながら鞄から拳銃と手榴弾を取り出す。
後ろをみるとまだ目が見えないのか苦しんでその場にいる。
今のうちに距離を稼がないと!
手榴弾は先にピンを抜いておく。レバーを握っている間は爆発しないらしいから、これですぐに投げれる。
「グォォオオオオオ!!!!!!!」
「!流石にそろそろ来るよね…!」
凄まじい轟音で空気が揺れる。あれ近くで聞いただけで死ぬかもしれない…
後ろをみるとこっちを見失ったのかあたりを探している。今のうちに進めるだけ進んでおこう。
…ってあいつ鼻を鳴らして何を…?!って見つかった!
もしかして匂いで?そうだ、一応狼だったね…!
そう思っているとものすごい速さでこちらに迫ってくる。
っ!速すぎる!あたしは手榴弾を投げる。
再び辺りが白になる。
「グォ!?グガアアアァァァ!!!」
「学習しないやつね!しばらくそこにいなさい!」
走りながら、手榴弾を取り出してピンを抜く。
…………まずい、このままじゃ辿り着けない!
まだ、一つ目の広間にすら辿り着いてないのに手榴弾は後ひとつ。
…走って逃げ切るのは無理だ。
どうする?いっそ戻って…ってあいつは匂いでこっちがわかるから横を抜けるのは無理。
かと言ってこのまま向かっても辿り着けない…!どうする…どうする…
そう思いながら走っていると一つ目の広間にたどり着く。
…ひょっとしてだけどここにもエレベーターがあるんじゃない?
「グォォォォオオオオオオ!!!!」
「っ!うるさ!」
迷ってる暇はない!ここは賭けよう!
あたしは広間に向かった。
瞬間あたしはその選択を後悔した。
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