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10

 

 朝、目が覚めた時、昨日のことは全て夢だったんじゃないかとも思ったけど、なんとなく昨日までとは違う身体の感覚に少し戸惑いつつ、起き上がった。


 指や腕、足など色々動かしてみるが、痛みはないが、左耳の辺りからのアルフォンス殿下の魔力の感じ方が昨日より強い気がする。

 契約者との繋がりのせいとかかしら、と思っていると、コンコンと音がしてエルゼが声をかけてきた。

 返事をするといつも通り朝の準備をするために入ってきた。

 顔を洗って着替えようとするとエルゼが止めてきた。


「アルフォンス殿下が試したいことがあるからそのままでと」


「もういらしてるの?」


「はい、先ほど。リビングでお待ちです」


 寝間着姿は何度も見られているし、まあいいかと思いつつリビングに移動する。


 庭から繋がる特別仕様の大きい窓を開け放った部屋に入ると、白いシャツと黒いトラウザーズの銀髪の長身の殿下が眩しいほどの微笑みとともに振り返る。


「おはよう、レーツェル。体調はどうだい?」


「おはようございます、アルフォンス殿下。おかげさまでスッキリです。殿下こそ大丈夫ですか?」


 こちらに近づいてきて顔を覗き込まれて頬を挟まれる。

「うん、顔色は良さそうだ。私もゆっくり休ませてもらったからバッチリだよ」


 朝から問答無用の微笑攻撃に顔が赤くなるのが分かった。昨日までとやはりなんだか感じ方が違うような気がする。冷静に冷静にと思いながら尋ねる。


「試したいこととは?」


「あぁ、竜化を。解除は命じただけでできたけど、なるのも命じるだけでできるのかなと。昨日みたいに危険な状況じゃないとなれないなら考えないとね」


 あと竜化して解除するだけで君にどれくらいの負担がかかるのかも、と言われて確かにそうだ、と思い了承した。


 一応部屋の中でも大丈夫かと思ったけど庭に出てから、アルフォンスがレーツェルに声をかける。


「気を楽にして。私の声だけを聞いて。いくよ?」


 アルフォンス殿下と向き合い、深呼吸をして目を瞑る。殿下の手が頬に触れる。触れた場所から暖かい何かを感じる。


「レーツェル、竜になれ」


 優しく、けどはっきりとした意思でアルフォンスが命じる。

 

 その声を聞いた途端、レーツェルの身体が光り輝き、輪郭が崩れて、昨日と同じ漆黒の竜が現れた。


 目の前に現れた黒竜を見て、アルフォンスは微笑み、腕の辺りの鱗を撫でて言った。


「流石レーツェルだな、一回で成功した。それに改めて見ると綺麗以外の言葉が出てこないな」


 その姿でも言葉が通じることを確認し、エルゼからシーツをもらって、解除の言葉を掛けた。


 人の姿に戻りシーツにくるまったレーツェルは昨日とは違い普通に意識を保っており、着替えに向かった。


 白いブラウスと黒い少しタイトなスカートに着替えたレーツェルはエルゼが準備してくれた朝食の席にアルフォンスと共に着く。


 朝食を食べながら、アルフォンスがレーツェルに問いかける。


「昨日は解除後に少し気を失ってたけれど今日は大丈夫そうだね。やはり竜の姿で戦ったりすると身体に負担がかかるみたいだね」


 ただでさえ昨日は初めてだったし、加減もよくわからなかったしね、と言われ、自分の身体を確認してみた。

 確かにただ竜化して何もせず数分で戻るくらいならなんの負担もなさそうだ。


 少しずつ出来ることを2人で確認していこうと言われて頷いた。


 食事が終わり、王宮に向かうための準備をするため、アルフォンス殿下に髪の毛を整えてもらおうとした時だった。

 黒髪を持ち上げた時にアルフォンスが左耳の後ろを見て何かに気づいた。そんなに大きくはないが黒く文字みたいな模様が浮き出ている。髪の毛を下ろしていると隠れるが。


「何?この紋様みたいなの?昨日までなかったよね」

「え?何?」


 レーツェルからは見えない所なのでわからない。エルゼが見に来る。


 「はい、なかったと思います、なんでしょう?呪文みたいな、魔法陣みたいな」


 とそこまで言ってエルゼの動きが止まる。じっとアルフォンスの首辺りを見ている。背の高いアルフォンスだが今はレーツェルの髪の毛を結うため座っていた。


「どうしたの、エルゼ?」

「エルゼ、どうした?」


 2人同時にエルゼに問いかけると彼女の口から思いもかけない言葉が出る。


「アルフォンス殿下の右耳後ろにも同じような紋様がありますが……」


「え?」

とアルフォンスが右耳辺りに手を当てる。が見える訳がなく。


 レーツェルが覗き込むと確かに後ろ髪に少し隠れてはいるが何か魔法陣みたいな紋様が見える。背が高いため座るか屈んでもらわないと見えないが。



 お互い相手のしか見えないので、並んで座ってエルゼに確認してもらう。


「そうですね、ほぼほぼ一緒です。一箇所だけ違う文言がありますが。これは古代魔法言語でしょうか?」


「多分。私も完璧に分かる訳ではないが…これは契約紋か?」


 アルフォンス殿下が私の文様を見ながら考える。


「昨日までは無かったことを考えると竜と契約者との間の契約紋だろう」


 後できちんと調べようと言って髪をセットし始めた。とりあえず分かるまでは隠そうか、と上の方だけ編み込みして耳から下は何もせず流す感じで整えてくれた。


 準備が整った所でそろそろ陛下達との約束の時間なので殿下と一緒に王宮に向かった。

 


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