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置いてきたもの

凛視点です。

 突然、目の前にいた自称悪魔の姿が霞んだとおもったら、自称悪魔はいなくなり、知らない女がいた。


 誰?この幸薄そうな子は?


 どこかの高校のブレザーを着ていて、まっすぐな黒髪をショートカットにした女の子。年は私と一緒くらいかな?


 んん?誰かに似てる?


 しかし、私の知り合いではない。誰?キョロキョロと周りを見てもみんなも同じような顔をしている。

 いや、一人違う子がいた。

 しれっとしているが、どう考えたって、反応を見せないこの子の知り合いだろう。


 横にいる愛奈とよくよく見比べれば、なるほど、目元がよくにている。


「え~っと、知り合い?」

「いいや。」

「またすぐそうやって冷たい言い方をするのね。」

「残念。本物は、初対面の人にこれだけ囲まれていたら、そんな反応できないから。」

「なるほど。でも、姉妹に向かって、よくもまあ淡々と出来るものだ。」


 やはり、そうだったのか。


 自称悪魔は、女の子の姿で楽しそうに笑う。


「お姉ちゃんもそれくらい楽しそうに笑えたら良かったのにね。」


 小さく呟かれた言葉にはなんの感情も乗っておらず、どういう意図で放たれた言葉なのかがわからない。


「じゃあさ、こっちはどう?」


 言ったそばから、自称悪魔がまた姿を変える。


 今度は、年が一気に上がった。

 しかし、誰?と思わなくてもわかる。母親だろう。


 それも、愛奈は特に反応を返さない。


「あれ。これもお気に召さない?」


 にこにこと楽しそうな自称悪魔と冷めた目をする愛奈。


 家族じゃないとわかっているとはいえ、もう会えない人の姿をみてこれ程冷静でいられるものなのだろうか。


 向こうの世界がどうなったのかなんて、考えていなかった。いや、考えないようにしていたのが正しい。

 どうせ帰れないのだから、きっと私は死んだのか、元よりいない存在だったのだろう。新しい世界で生きられるならラッキーぐらいに思うようにしてきたのだ。

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