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差しのべられたその手を

 ものはためしとばかりに、私は上着を脱ぎ、左のブラウスの袖をあげる。

 そして、右手に氷魔法で刃の出たカッターナイフを作り出す。


 うん、毎日持ち歩いていただけあって、めっちゃ上手に出来た。


 左腕には、うっすらと切った後が何本か残っている。

 腕の内側、肘に近い所。

 四センチほどの線。ほんのりピンク色。

 治ったことにより、ちょっと引き攣った線が出来ている。


 その線の近くに氷のカッターナイフの刃を当てる。


 冷たい刃がまるでアルコール消毒みたいなどと思ってしまい、苦笑いがこぼれる。


 端からみたら頭おかしいと思う光景だよね。


 バカなことを思いながら、思い切り真横に引く。


 一拍遅れて、熱いような痛いような感覚がおこる。

 もう一拍遅れて、じんわりと赤い線が出来る。


 しかし、傷が浅かったのか、赤い線が出来ただけで、血が流れる程ではない。


 もう一度カッターの刃を当てる。

 赤い線が出来ている所に。


 さっきと同じように思い切り真横に引けば、再び痛みがきたかと思うと、赤い線がより濃くなりぷくりと血が溢れる。


 ……しかし流れない。


 溢れた血は、その場に留まり続け、流れるほどまで行かない。


 ならば、ともう一度刃を当てて揺らす。


 ぐらぐらとすればするほど傷が深くなり、刃がうっすらと赤色になる。

 そして氷が溶け出したこともあるのか血が滴り始める。


 もう一度カッターを真横に引けば、満足のいく結果が得られた。


 後は布が赤く染まっていくのを眺めたいなぁ、と思うが、ここにはティッシュも絆創膏もない。


 これもなにかで代用しようと思い至ったところで、突然手元に影が落ちた。


 影の正体を確かめる間も無く、右手を捕まれる。

 何が起こっているのかわからずにパニックになりそうな私の手から影はカッターナイフを取り上げた。


「何、やってるの?」


 聞き覚えのある、しかし、二度と聞くことのないはずの声に驚いて振り返る。

 そこにいたのは、姉だった。


「な、んで?」


 さっと血の気が引いていくのがわかる。


 なんで、ここにいるの?

 見られた!どうする?


「何をしているの?」

「別に…」


 動揺しすぎて、まるで喉が張り付いたように上手く声がでない。


「ちょっと、血が出てる!」


 姉は、私以上に真っ白な顔をして、腕の傷をみていた。

 伸ばされた手を、あわてて避けながら腕を後ろに隠す。


「見せて。」

「……やだ。」

「一先ず、こっちに出てきて?」


 心配そうな顔をして、姉は白い手を私に向かって差しのべた。

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