好きか嫌いかいう時間
差し出された手と姉の顔を見比べる。
え?簡単に手を取って貰えるって思っているの?
バカなの?
「えっと……」
一向に茂みからでない私に姉は困った顔をして、手を引っ込めようかどうしようかともぞもぞとし始めた。
「トイレ?」
「ちちち、違うよ!」
「でしょうね。」
「むっ、意地悪……ねぇ、私のこと、どう思ってる?」
手を引っ込めると決めたようで、でも、引っ込めた手をどうしていいかわからずにもじもじとさせながら聞かれる。
「どうって……姉?」
他に答えようがない。
「そうじゃなくて……好き?嫌い?」
「……普通。好きでも嫌いでもない。」
姉妹ひいては家族相手に好きも嫌いもないだろう。
たとえ、どんな扱いだったとしても。
相手がどう思っていても。
「そっか。普通か。」
何故か普通と言われて喜ぶ姉。
なんで?
「嫌いって言われると思ってた。だって、嫌いなものは「嫌い」ってはっきり言うでしょ。なかなか「好き」とは言わないけど。」
そう?
「そうだよ。それくらいわかるよ。何年お姉ちゃんやってると思っているの。」
どうなんだろうね。
お姉ちゃんという肩書きはあったかも知れないが、たいして何かをしてもらった覚えがあまりない。
それでお姉ちゃんだと威張られてもなんだかなぁと思ってしまう私は性格が悪いのだろう。
私はミラベルのようにお姉ちゃんがなにもしなくても、一生の味方だと思ってない。
「……嫌われてるって、思ったのは、なんで?」
聞かなくていいことを聞いてしまってあとで後悔するのに、懲りもせず聞いてしまう。
「昔、酷いこと言ったから。」
「どうだろうね。」
すっとぼけてみたけど、言いたいことはわかっている。
忘れる訳がない。
昔。
色々ギリギリだった姉とちょっとしたことで喧嘩をした。
その時に言われたのだ。
「お姉ちゃんだからって、なんで色々と我慢しなくちゃいけないの!」
「あなたはいいよね。素知らぬ顔をして、我関せずとしてるだけだもんね。」
「大嫌い!!顔もみたくない!!」
泣きながら叫ばれて、それを見て姉を慰めるあの人を私はただただ眺めていたのだ。
そこで、怒ったり、泣いたりすれば、多少かわいげがあったのかもしれない。
でも、私は「それで?」と言わんばかりに反応を示さなかったのだ。
その後、一旦落ち着こうと発案されるまで私は二人を観察していた。
他にやることがなかったから。
そして、休憩が挟まれるとお互い謝罪はなく、喧嘩はなかったことと相成った。




