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ゲームの中で破綻した都市の市長になった  作者: ニグス


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14/15

赤字地下鉄

都市鉄道運営危機


現在の正常運行率


100パーセント


運行縮小まで


2日14時間


予想運行率


62パーセント


黒瀬悠真は数字をしばらく見つめた。


「ちょっと待ってください」


財政局長が顔を上げた。


「はい」


「給料を払う金がないのはわかりました」


悠真が画面を指した。


「でもなぜ列車まで動かせなくなるんですか」


給与を支払えないからといって、すぐに電車が止まるわけではない。


少なくとも悠真はそう思っていた。


財政局長が答えた。


「都市鉄道には給料以外にも金がかかりますから」


「どれくらいですか」


「電気代、車両整備費、信号設備維持費、清掃・保安業務委託費、部品代」


一つ聞くごとに悠真の表情が硬くなった。


「前回の7億6,800万にはこれが入っていなかったんですか」


「あれは今回の支払日に必要な給与および人件費的支援金が中心でした」


「……」


「鉄道の運営資金は別枠です」


悠真は目を閉じた。


金がないという言葉にも種類があった。


給料を払う金がなく。


電車を動かす金がなく。


故障した設備を直す金もなかった。


「どれくらい足りないんですか」


財政局長が新しい資料を映した。


都市鉄道緊急運営資金


現在の利用可能資金


31,000,000 C


正常運行維持に必要な資金


126,000,000 C


不足額


95,000,000 C


悠真が数字を読んだ。


「9,500万」


13話で苦労して受け取った金が1億500万だった。


ほぼそれと同じ額だった。


「市が出せば?」


「可能ではあります」


「じゃあそれで解決じゃないですか」


財政局長が給与表を横に映した。


給与不足額


現在の見込み


529,000,000 C


都市鉄道緊急支援時


624,000,000 C


悠真は何も言えなかった。


電車を救えば。


給料が遠のく。


給料を守れば。


電車が減る。


「……金が片方からもう片方へ移るだけですね」


「そのとおりです」


悠真が聞いた。


「62パーセントというのはどうやって出したんですか」


「都市鉄道公社から提出された非常運行計画です」


「見てみたいです」


*


1時間後。


悠真は都市鉄道総合管制センターにいた。


正面の巨大な画面にアルカディアの鉄道網が広がっていた。


線が都市を横切っていた。


何十もの小さな点が線の上を動いていた。


列車だった。


普段ならゲームの画面のように感じたかもしれない。


だが今は違った。


一つの点に。


数百人が乗っていた。


都市鉄道公社の社長が悠真を迎えた。


「アルカディア都市鉄道公社の藤原誠一です」


「黒瀬悠真です」


簡単な挨拶が終わると、悠真はすぐに聞いた。


「運行を62パーセントまで減らさなければならないと聞きました」


藤原社長がうなずいた。


「現在の資金ではそうなります」


「どうやって減らすんですか」


「全路線の運行間隔を延ばします」


「全部同じようにですか」


「基本的にはそうです」


悠真が画面を見た。


路線別の数字が表示されていた。


現在の混雑度


1号線中央区間


91パーセント


2号線東部産業区間


87パーセント


北部住宅区間


74パーセント


空港連絡区間


21パーセント


悠真の視線が最後の数字で止まった。


「21パーセント?」


「空港連絡区間です」


「列車がほぼ空だということですか」


「時間帯によって差はありますが、利用率が最も低いです」


悠真は画面を注意深く見た。


空港。


また空港だった。


都市を潰した国際空港。


その空港へ向かう列車が、今も動いていた。


悠真が聞いた。


「なのになぜここまで一律で38パーセント減らすんですか」


藤原社長の表情が少し硬くなった。


「現在の非常計画は最も早く適用できる案です」


「早く?」


「全体の運行表を一定の比率で減らす方式です。勤務編成も調整しやすいですし」


悠真が再び画面を見た。


中央区間91パーセント。


産業区間87パーセント。


空港区間21パーセント。


なのに全部同じように減らす。


悠真の表情がおかしくなった。


ゲームだったら絶対にそうはしなかった。


需要の高いところは残す。


低いところから減らす。


あまりにも当然だった。


「空港のほうから減らせないんですか」


藤原社長の表情が少し硬くなった。


「可能ではあります」


「なのになぜやらなかったんですか」


「路線ごとに列車が完全に独立して動いているわけではありません。車両の回送と乗務員の勤務編成が連動しています」


悠真はすぐにうなずいた。


7話の水道管を思い出した。


地図の上で見えるものと。


現場で実際に動いているものは違う。


「じゃあ俺が単純に考えていたということですね」


藤原社長が少し意外そうに悠真を見た。


悠真が続けた。


「それでも方法が全くないわけじゃないですよね」


「ないわけではありません」


「どうすればいいですか」


藤原社長が隣にいた運行担当者を呼んだ。


数分後。


新しい資料が画面に現れた。


選択的減便可能区間


空港連絡区間の通勤時間外


深夜運行


週末増便


一部低利用支線


見込み費用削減。


41,000,000 C


悠真が数字を確認した。


「4,100万」


「はい」


「じゃあ不足額が9,500万から5,400万に減るわけですね」


「単純計算ではそうです」


悠真が聞いた。


「残りの5,400万は?」


藤原社長は答えなかった。


そのとき後ろから声が聞こえた。


「その金を人から削ろうとしています」


悠真が振り返った。


見覚えのある顔だった。


結衣が紹介した。


「高橋均組合長です」


悠真は席から立ち上がった。


「高橋組合長」


高橋組合長は短く挨拶した後、藤原社長を見た。


「市長にはまだお話しされていないんですか」


藤原社長の表情が硬くなった。


「確定した案ではありません」


高橋組合長の顔が硬くなった。


「確定した案でもないのに、職員には無給休職検討の公文を先に回したんですか」


悠真の視線が藤原社長に向かった。


「無給休職ですか」


藤原社長がため息をついた。


「非常計画の一つです」


「何人ですか」


「最大340人です」


悠真の表情が硬くなった。


「340人?」


高橋組合長が言った。


「先月の手当も遅れています。今月の給料も不確実です。それなのに今度は家で休めと言うんですか」


「給料なしで?」


「はい」


藤原社長が言った。


「遊んでいる人員を作ろうというわけではありません。減便すれば必要な人員が減ります」


高橋組合長がすぐに切り返した。


「そんなに単純ではありません」


「高橋組合長」


「列車を減らしても点検すべき車両は変わりません。駅の安全人員も必要ですし、信号設備も同じように管理しなければなりません」


悠真は二人を交互に見た。


「ちょっと待ってください」


二人の声が止まった。


悠真が聞いた。


「無給休職をしたら、いくら減るんですか」


藤原社長が言った。


「月間ベースで最大1億2,000万ほどです」


大きな金額だった。


現在の鉄道運営資金の不足額より多かった。


その瞬間。


悠真の目の前にシステムが現れた。


都市鉄道緊急構造調整


対象人員


340人


見込み月間費用削減


121,000,000 C


財政改善効果


高い


運営効率


上昇可能


労働紛争リスク


非常に高い


悠真はしばらく画面を見つめた。


数字だけ見れば。


とても良かった。


9,500万足りない。


1億2,000万減らす。


問題が消える。


むしろ金が余る。


ゲームだったら。


迷わなかったかもしれない。


クリック一回。


コスト削減。


赤字改善。


高橋組合長が言った。


「市長」


悠真がシステムから視線を外した。


「340人が数字にしか見えませんか」


悠真の眉が動いた。


高橋組合長が続けた。


「整備士もいます」


「……」


「駅員もいます」


「……」


「清掃をする人もいます」


悠真は答えなかった。


数日前までなら。


おそらく数字として見ていただろう。


今も。


最初に目に入ったのは340という数字だった。


悠真が聞いた。


「無給休職以外の方法を先に見たいです」


藤原社長が言った。


「市長、時間がありません」


「わかっています」


悠真が大型路線図を指した。


「だから今から見ましょう」


*


3時間後。


会議室の壁には運行表がびっしり映し出されていた。


午前6時から9時。


午後5時から8時。


通勤ラッシュ時間。


病院が集まる中央区間。


工場が集まる東部区間。


学校と住宅地が密集する北部区間。


悠真は一つずつ聞いた。


「通勤時間外の空港利用客は?」


「平均22パーセントです」


「夜11時以降は?」


「11パーセントほどです」


「終電をなくすことはできませんか」


高橋組合長が言った。


「完全になくすと夜勤者たちが困ります」


悠真がうなずいた。


「じゃあ本数を減らしたら?」


運行担当者が計算した。


「現在の半分程度までは可能です」


「削減額は?」


「約700万」


悠真が次を指した。


「週末増便は?」


「一時中止すれば600万ほど」


「空港連絡区間は通勤時間外にどれくらい減らせますか」


「配車間隔を12分から24分に延ばせば約2,100万です」


一つずつ足していった。


700万。


600万。


2,100万。


そして他の低利用支線。


宣伝用無料シャトル。


重複運行。


藤原社長が言った。


「ここまで減らすと乗客の不便がかなり大きくなります」


悠真が聞いた。


「通勤時間は?」


「ほぼ正常維持できます」


「病院区間は?」


「現在の配車を維持できます」


「産業区間は?」


「通勤時間には維持可能です」


悠真はうなずいた。


「じゃあそれでいきましょう」


藤原社長が言った。


「それでも金が足りません」


「どれくらいですか」


計算結果が現れた。


非常運行計画修正案


全体見込み運行率


84パーセント


通勤時間運行率


96パーセント


空港連絡区間の通勤時間外運行率


50パーセント


見込み費用削減


49,000,000 C


残余運営資金不足額


46,000,000 C


悠真は数字を見つめた。


4,600万。


最初の9,500万よりずっと小さかった。


「4,600万だけ支援すれば」


「急激な減便は防げます」


「どれくらいの間ですか」


「まずは次の給与支払時点までです」


完全な解決策ではなかった。


数日を稼ぐ方法にすぎなかった。


それでも。


悠真はうなずいた。


「支援しましょう」


財政局長がすぐに言った。


「そうすると給与不足額がまた増えます」


「いくらにですか」


給与不足額


529,000,000 C


↓


鉄道緊急支援


+46,000,000 C


↓


575,000,000 C


5億7,500万。


悠真は数字を見つめた。


金を工面したのに。


また足りなくなった。


だが今回は以前のように虚しくはなかった。


少なくとも一日21万件にのぼる鉄道利用をまるごと危険にさらすよりはましだった。


「進めてください」


財政局長が聞いた。


「確定されますか」


「はい」


悠真は一言付け加えた。


「ただし、安全関連予算には手をつけません」


藤原社長が言った。


「安全人員もですか」


「はい」


悠真は高橋組合長を見た。


「今回の非常運行を理由にした無給休職も、ひとまず保留します」


高橋組合長の表情が少し和らいだ。


だが安心した顔ではなかった。


「今回だけですか」


悠真は答えられなかった。


今回だけ。


その言葉を言うことができなかった。


都市鉄道の赤字は今日始まったものではなかった。


今4,600万を入れたところで消えるものでもなかった。


「保証はできません」


悠真が言った。


「その代わり」


一瞬、息を整えた。


「人を切る前に、他で削れるものは全部見ます」


高橋組合長はしばらく悠真を見つめていた。


「その言葉、覚えておきます」


「どうぞ」


*


市長室に戻ったのは夕方近くだった。


悠真は都市鉄道の資料を再び広げた。


今年の見込み赤字。


運営費。


運賃収入。


市の補助金。


結衣が横で言った。


「今日の火急の火は消しました」


「火急のものだけですね」


「はい」


悠真が一枚めくった。


都市鉄道の年間費用のうち最大の項目。


人件費


全体運営費の


43.7パーセント


悠真の視線が止まった。


その下には都市鉄道公社が提出した中長期改善案があった。


運賃引き上げ。


赤字路線の縮小。


商業施設収益の拡大。


組織統廃合。


そして。


最後の項目。


人員構造調整。


悠真が文書を押した。


システムがすぐに反応した。


都市鉄道財政安定化シミュレーション


職員削減


412人


見込み年間節減額


1,560,000,000 C


財政安定性


+14


運営効率


+8


数字だけ見れば。


良かった。


とても良かった。


今日一日かけて探した金より大きかった。


滞納額を回収し。


公用車を売り。


運行表を作り替えるより。


ボタン一つのほうがはるかに強力だった。


悠真は画面の下のほうを見た。


小さな文字がもう一つあった。


見込み影響


失業率上昇


労働紛争リスク上昇


一部世帯の所得喪失


地域消費減少の可能性


悠真の手が止まった。


412人。


ゲームでは。


ただの人件費だった。


だが今はもう知っていた。


あの数字にも。


家賃があり。


食費があり。


家族がいた。


それでもシステムの数字はあまりにも鮮明だった。


財政安定性 +14


悠真はしばらくの間、画面から目を離せなかった。


人を切れば。


数字は良くなる。

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