映像文化
週明けの月曜日、学校は大変だった。《応人の盾》については学校内まで噂は届いていない。
代わりに、メイドのお姉さま方には手加減してやれよ……って言ってくる奴が一人いたぐらいで済んだ。
相変わらず東野さんの周囲は女子で溢れている。
最近は榊さんの入店に合わせてAZITOに行くものだから、周りの妄想はますますお盛んだ。
「榊さんってどんな人?」
「大きな会社で働いてるってホント?」
「もう、たまきは人生安泰ね!」とまで言っている。
男としても勝てないな~と思いながら東野さんに目を向けると、
「あ、がっくん!今日は【大合戦】の放送日だよ!」
まったく周囲の目を気にせず、手を振って呼びかけてきた。
周囲の女子共は、榊さんの話題には食いつくが、僕の話題となると途端に興味をなくす。
小さく手を振って応えはしたものの、
これができる男と一般高校生の差か……がっくりと肩を落とした。
公式サイトには、二十時から放送予定と書いてある。
百人対百人の戦いは想像もつかない。
今までは五人編成の部隊が五つ。計二十五名のプレイヤー及びNPCで戦ってきた。
規模でいえば四倍だ。この前のメイドインヘヴンとの戦いを思い出す。
《応人の盾》を発動しても、動けない僕は倒される可能性が高い。
そんなことを考えていては、授業が頭に入るはずもない。
いかんいかん。授業に集中だ。
こう言ってはなんだけど、僕はクラスで三本の指に入るくらい、成績はいい。
最近までゲームをしてこなかったからか、ほかにやることがなかったからか、勉強は嫌いじゃない。
だけど、最近は机に向かうより、コントローラーを握っている時間のほうが長くなってきた。
考えることも、『倭国争乱』と東野さんのことばかり……。
楽しいのはいいことだけど、榊さんみたいにできる男が近くにいると、少しだけ気が引き締まる。
そういえば……AZITOのメンバーって、結構できる人が多いんじゃないか?
今度、榊さんに聞いてみよう。……店長だけには聞いちゃいけないな。
そんなことを考えながら、学校での一日は過ぎていった。
家に帰って晩ご飯を食べ終わったころには、もう放送時間が迫っていた。
部屋に入り、PCを起動して動画サイトを開く。
予定の放送時刻にはまだ早いが、画面はすでにスタンバイ状態で、何やら雑談まで聞こえてきた。
――もうじきですワン。
――ドッキドキだニャー!
解説役の犬と猫が画面の左右に分かれ、犬は「東」、猫は「西」と書かれた兜をかぶっている。
――実は……起用が決まったのは昨日ですワン……。
キャストが決まったのは、そんな直前だったの? と驚いていると――
――こっちもニャー!
猫のほうも同じらしい。……でも二人とも、なかなか楽しそうにしゃべっている。
――そろそろ時間だワン。カウントダウンに入るワン。
緊張感がこっちまで伝わってくるよ~。
――さん、ニャー……
――ワン!
――ニャー!
――始まりましたワン!
――始まったニャー!
――本日、司会進行を務めさせていただきます、東軍応援団長《ポチ丸》と――
――西軍応援団長《ニャン吉》だニャー!……おい!運営!もっとましな名前はなかったのかニャー!
猫のほうは、安直な自分の名前まで楽しそうにネタにしていた。
――今回が初めてとなる【大合戦】。まだまだテストプレイの段階ですが、こうして皆さんにご覧いただけるなんて……感動だワン。
――あったり前だニャー! ニャン吉はもう古参だから、これくらいはやってもらわないと困るのニャー!
猫……テンション高いな。面白いからもっとやれ。
そんな二人の掛け合いに、僕はすっかり引き込まれていた。




