哀と愛
「私一旦席外すから2人でごゆっくり〜。」
「あ、ああ。ありがとう…。」
「え〜。別に歌乃ちゃんが居ても困らないけどな〜。」
「私が困るの。それくらいは察してほしい。」
「ごめんね?」
「許さない。」
思っていたよりも篠原は厳しい人なのか?
「まあそういうことだから〜。」
そう言って篠原は教室から去っていった。
妙に気まずい。明らかにさっきの言葉が原因なのだが。
「でさ、いつ空いてるの?」
「いや、ごめんなんだけどデートの件は断らせてもらうよ。」
「え?」
「来月にあるテストの為に勉強をしなくちゃならないんだ。ごめん。」
俺が拒否した瞬間、涼風は豆鉄砲を食らったような顔をして、少し寂しそうな、悲しそうな潤んだ目をして俺の言葉を噛み締めていた。
「きゅ、急だったよね……ごめん。呼び出しといてあれだけど、先に教室に戻ってるね。本当にごめん!」
「っ!涼風!?」
涼風はその綺麗な瞳から透明で、春の終わりを告げるような雫を落としつつ、走って教室を去った。
「涼風……。」
俺は確かに勉強をしなくてはならなかった。しかし、相手を悲しませてまでやる勉強に価値はあるのだろうか?友達の少ない俺をデートに誘ってくれたのに、自分の事情だけを一方的に告げて悲しませた俺に、
「友達は必要なのか…?」
「必要でしょ。悲しませたならそれ相応のことを相手にしてあげな?」
後ろから聞こえてきたその諦めと怒りを孕んだ声に、思わず振り向いた。
「篠原か。」
「何があったの?天ちゃんが涙を流してすごい勢いで出ていったけど。」
「デートの誘いを断った。」
「は!?なんで!?どうして!?」
「来月のテストの為に少しでも勉強したかったんだ。俺の浅はかな考えが涼風を悲しませたことは理解してる。煮るなり焼くなりしてくれ。」
自分のしてしまったことを理解した俺は、もう何か言う気も失せてしまった。
「…鷹咲。自分のやったことが分かるなら、やらなくちゃならないことも分かるでしょ?」
「…。」
「早く天ちゃんのところに行ってきて。次私に話していいのは天ちゃんが笑顔になってから。だから早くして。」
「分かった。ありがとう、篠原。」
そうして俺は急いで涼風のところへ駆けた。
「天ちゃんも、諦めずに頑張ってね…。」




