07話
今回長め!更新!
冴月家の居間にあるテーブルには4人の人物が椅子に座っていた。未だ眠そうに目を擦っている金髪の少女「ミーナ=キーソン」、早朝から強烈なボディブローを喰らい、未だに腹を抑えている金髪の少女の父で、娘と同じ金の髪を持った巨漢「ホーク=キーソン」、早朝から爆音を聞き、耳鳴りが止まない冴月家の大黒柱「冴月剛輝」、そして椅子に座る面々の中で唯一、完全に目が覚めている「冴月レイナ」の4人が椅子に座っていた。
そして、その4人以外に妙齢茶髪のメイド「マリア」がそばに控え、キッチンには白髪サングラスに女装メイド「アオイ」がゴム手袋を身に着けて洗い物の仕事をしていた。
「じゃあ、全員揃ったから食べよ。お父さん?」
「…そうだな、それじゃあ頂きます」
「「頂きます!(なのぉ)」」
4人は「頂きます」と律儀に言ったあと、食事を始めた。なお、レイナ以外の3人はノロノロと食事をしているが…
「レイナ、そろそろ耳元で目覚まし時計を鳴らすのは止めて欲しいんだが」
「だったら自分で起きてよね。軟な方法じゃ起きないからそうやってるんでしょ?」
「ぬぅ」
「アオイ、まだ腹が痛いんだが…」
『ねむぃ…アオィ、私眠い』
レイナと剛輝が親子の会話をしている対面でホーク親子がアオイに向けて文句をたらたらと述べている。それを使った道具を洗いながら聞いていたアオイはその作業を止めることなく反応をする。
「普通のやり方じゃ起きない旦那様とお嬢様が悪いです。起こさないと延々と寝ているじゃないですか…それで毎度仕事や学校に遅刻しかけてますし」
「それにしてもなぁ」
「他の先輩方が起こすことができるなら良いです。ですが旦那様の強固な腹筋を破ることが出来るのは自分以外だと、マリアさんと…執事のアルバートさんだけじゃないですか」
「他にもやり方があるだろう?」
「それで起きた例がありますか?」
「…ぬぅ」
「そういうことです」
アオイとホークのやり取りの横で寝ぼけてキチンと食べ物を口に運べていないミーナをマリアがサポートし、テーブルの上を汚さないようにしている。万が一、落としたり、汚したりしても即座にそれらを拭き取ることができるようにしている。
ガヤガヤと食事をしているとき、唐突に剛輝の仕事用のスマートフォンが鳴りだす。本日は土曜日、本来であれば剛輝は今日は休日であり、現在の時刻は朝7時でもある。そんな朝早く電話が来るのは珍しいと思うと同時に嫌な予感が脳裏に過ぎる。
「はい、冴月です…え!?ちょ、ちょっと待ってください」
電話に出た剛輝はいつも通りに応対する。しかし内容が内容であったため、急いで席を立ち上がって廊下にでる。
廊下からは「壊滅!?」や「急いで調査って…」、「あと処理もって」などが居間にいる面々にも聞こえ、互いに見合って首を傾げていた。
…メイドの2人を除いて。
3分程通話したところで剛輝が電話を終えて居間に戻り、大きい音を響かせながら木製の椅子に座り込む。そしてその勢いのまま手で顔を覆いながら大きい溜め息をつく。
「どうしたのお父さん?仕事でも入ったの?」
「ああ、まぁ、その通りだ。すまんな今日は帰りが遅くなりそうだ」
「いつもの事だから大丈夫。それに今回はミーナちゃん達もいるし」
「そうか…はぁ」
「お父さんがそんなに溜め息つくの珍しいね。どうしたの?」
「んー、ここにいる人間なら大丈夫か。それがな…」
まず、剛輝は私立探偵事務所の所長であり、先ほどの電話は仕事の関係者からのものであった。
そして剛輝が言うには、とある依頼によって長期的な調査をしていたところ、その原因だと思われる集団に辿り着き、それを調査をしていた。しかしその集団は警察や病院とも癒着していたようで調査が難航していた。また、数度その組織の下っ端や構成員と思しき者たちから襲撃を受けていたそうだ。襲撃に関しては特に問題視されなかったが、中々その原因である集団の中枢に辿りつくことが出来なかったそうだ。
しかし、先ほどの電話によってその組織の中枢は壊滅しており、元々の依頼についても解決してしまっているらしいとのこと。解決したは良いものの、誰がどうやって集団の中枢を知り、壊滅させたかの調査やその後始末があるとのことであった。
本来であれば、解決にはまだ1ヶ月かかると予測しており、その身体を壊さぬように自分と部下の仕事量を調整しながら調査をしていたがそれがぶっ壊され、後処理に東奔西走しないといけなくなった訳である。
「と、いう訳だからしばらく帰りが遅い、というか帰れんかもしれない…なんでしばらくの間、マリアさん達にうちの娘をお願いしたいと思います」
「剛輝様、それは問題ありませんよ。元々この家にお世話になる身なので、責任をもってレイナ様の面倒を見ましょう。というよりはその組織を壊滅させたのはそこのアオイですし」
「…は?」
マリアから衝撃的な事実をしり、口をあんぐりと、むしろ顎が外れそうなほど開ける剛輝。当のアオイは素知らぬ顔で片づけを未だ行っていた。
「ど、どういうことだ?」
「どうもこうも言ったままですよ。ねぇ旦那様」
「…ん?こっちに話を振る?まぁ、その集団は元々『私たち』も追っていたところでな。ぶっちゃけていうと『例のところ』と繋がりがあったらしく、それも含めて日本に来たわけだが…」
「あー、ということはそういうことなのか?」
「そういうこと」
剛輝とホークの2人の間のみで言葉を濁しながら事実確認を行い、それを知った剛輝は片手で目を覆い、椅子の背もたれにもたれ掛かる。
「ああー」とため息交じりな声を響かせながら恨みがましい目を向けた。
「おい、アオイ」
「何でしょうか?」
「お前の仕事が増えたんだが?」
「面倒な調査がなくなって、後は後処理だけなんで結果的には仕事が減ったのでは?」
「いいか小僧、良いことを教えてやろう。社会人ってのはなぁ!仕事がなくなったということは新しい仕事が来るってことだ!!ただでさえ暫くの間は別の依頼は引き受けられないとしていたのに、お前のせいで新しい仕事は舞い込むし、しばらくは現場と事務所の行き来だ!」
「そうですか、仕事ができて良かったですね」
「きぃさぁまぁ!!!」
「はいはい、お父さん落ち着く。アオイも煽らない!」
レイナは「はぁ」と溜め息を付き、父を落ち着かせ、アオイを止める。すかさずマリアは剛輝の前に水を置き、そのまま剛輝はその水を一気飲みをした。
「ぷはぁ…こいつに文句言っても仕事がなくなるわけじゃないからな…」
「私もこれから仕事だから仲間だな、剛輝」
「嫌な仲間だな、それは!」
アオイからホークにヘイトを向け、青筋を浮かび上がらせた。
「旦那様、仲良く会話も良いですけど、そろそろ迎えの車が来ますよ?」
「あー、なら早く用意しないとな。剛輝、ついでだから送ってやろうか?」
「いいのか?それは助かる」
「お互い様だろ?こういう時は」
剛輝とホークが今日の予定を話し合いながら足早に食事を終わらせた。レイナとミーナもゆっくりではあるが食事を終わらせ、その食事に使われた食器をアオイとマリアの2人で後片付けを行った。
食事の後レイナとミーナは居間のテレビの前にあるソファーに座り、テレビを点けてぼんやりとニテレビ番組を見ていた。なお、ミーナは土曜朝から放映されているアニメに夢中になっていた。剛輝とホークは仕事に行く準備などをし、マリアはホークの手伝いをしていた。最後にアオイはレイナとミーナの様子を身ながら食事の後片付けをしていた。
そしてレイナはふと、アオイに聞きたいことを思い付き、そのまま思ったことを口に出した。
「そういえばアオイ」
「?何でしょうか?」
食器を洗い終え、ゴム手袋を外しながら答える。なお、ゴム手袋の下からは普段身に着けている黒い手袋が顔を出す。
「アオイとマリアさんって、いつ朝ごはん食べるの?」
「それは…マリアさんと自分は皆様の朝食の前に済ましてあります」
「え?そうなんだ。2人とも朝早かったからね」
「なので心配はありませんよ」
レイナは納得したのか、「ふーん」と鼻を鳴らした。しかしこれはアオイと話す機会ではないか?と思い直し、会話を続けようとする。その間にアオイはレイナが座っているソファーの後ろに立つ。
「アオイ達って、今日は何をするの?私は来週、夏休み前の期末試験だから勉強しないといけないけど」
「今日は特に予定はないですね。どちらにせよミーナお嬢様の護衛があるので仕事であることには変わりありません」
「そうなのね。ねね、アオイって勉強ってできる?」
「勉強ですか…学校などのまともな教育機関で学んだことはありませんが…何を教えてほしいんですか?」
「えーと、数学と英語、かな。英語は別に1年生だから簡単なんだけど…数学はなんか苦手なんだよね」
「数学ですか。まぁ、それなら教えられないこともないです」
「え!ホント!?」
レイナはソファーから身を乗り出してアオイに詰め寄る。その唐突なレイナの動作に両の手を胸の高さに上げ、静止のポーズを取る。
「ちょっと、ソファーから落ちますよ」
「大丈夫だって…それで本当に教えてくれるの?」
「ちゃんと教えますから。数学はま…仕事で良く使うので多少は教えられると思います」
「助かるー。ありがとね、アオイ」
「え、あ、はい」
レイナはそれで満足したのか、ミーナと共にアニメの画面に目を向ける。一方でアオイは明るいレイナに当てられ、呆然としてしまった。
そんな呆然としていたアオイを正気に戻したのは仕事に行く準備を終えた剛輝達であった。剛輝達はバタバタとしながら居間に入ってくる。
「ホーク、お前が早く髭を剃らないから時間がかかったじゃないか!」
「そういう剛輝こそ、歯磨きに時間がかかり過ぎじゃないか?そもそも洗面台が一つしかないのが悪いんだ!」
「日本の一般家庭の家はこんなもんなの!お前みたいな金持ちと一緒にされたら困る!」
「剛輝が早く起きれば私はゆっくり準備ができたんじゃないか?」
「それはこっちのセリフだ!早く起きろ!」
互いに互いを言いあいながら朝から大声を出していた。後ろからついて着たマリアはもちろん、居間にいたアオイとレイナはその2人を見て溜め息をついてしまう。
「…どっちも早く起きないのが悪いじゃん」
レイナの辛辣であるが、全くもってその通りな言葉を聞き、大の大人2人は申し訳なさそうに視線を逸らした。
次は月曜日!なお、木曜日は私用でお休み!




