05話
ストックが増えません!!!(作業しろ)
カーテンから漏れる朝日を浴びながらシングルベットの上で1人、背伸びをしながらレイナは起き上がった。ぼんやりと寝ぼけた頭を振りながら時刻を確認すると早朝6時半手前であり、枕元にあるスマートフォンのアラームが鳴り響く直前で起床した。
今日は土曜日。このまま布団に潜り、二度寝を決行しても良いとは思った。しかし、来週には夏休み前の期末テストがあることを思い出し、少しでも勉強をしようと思い直し、起き上がることにした。
ベットから這い出たレイナはトボトボと覚束ない寝起きの足取りで階段に向かった。すると階下から美味しそうな匂いが漂ってきた。そこで昨日から自分と父以外にこの家に住まう人が増えたことと昨日のことを思い出した。
昨夜、あのやり取りの後は美味しくハチミツ入りホットミルクを飲んだことによって、身体が火照った。次第に眠くなったレイナは大人しく自室に戻って、布団に潜ったのであった。しかし、マリアとアオイは眠る様子はなく、2人はそのまま会話を続けていたようであった。
何やら重要な話であったらしく、レイナは早く自室に戻り眠るように促され、その場を後にしたのであった。
そんなことを思い出しながら1階に降り立ち、居間に向かうと朝食の用意をしていたマリアが目に入った。
「あ、おはようございます。マリアさん」
「おはようございます、レイナ様。昨日はよく眠れましたか?」
「はい、マリアさんのお陰でぐっすり眠ることができました」
「それは良かったです。今朝食の準備をしてますのでもう少しお待ちください。それと…」
マリアはこの場にいない4名についてレイナに伝える。剛輝とホーク、ミーナはまだ眠っているようである。その中でミーナは起床時はとても寝ぼけているので早めに起こしたいのだが、現在、朝食の用意で手を離せない。そのため、マリアはレイナにミーナを起こして欲しいとお願いをし、それをレイナは快諾した。
そしてこの場にいないアオイは早朝から朝食に不足しているものを買い出しに行っているらしい。便利なもので、この街には24時間営業している店舗があるため、どの時間でも容易に食品をはじめ、様々なものが手に入るのである。
「そ、そうなんですか?でもそのお店までそこそこ距離があるはずですよ?大丈夫なんですか?」
そう、その便利な店舗はこの家からは距離があり、具体的に言えば往復で8㎞程である。徒歩でも不可能ではないだろうが、通常なら車などを使うところである。
だが、そんな常識は彼の女装メイドには通じない。
「問題ないですよ。この程度の距離なら買い物も含めて20分ほどで戻ってきます」
「え?それって…」
レイナが深く聞こうとしたとき、ちょうど玄関の扉が開く音が鳴った。
「ほら、噂をすれば戻ってきましたね…タイムは19分34秒78…まぁまぁですね」
「え?ホントにその時間で戻ってきたんですか?」
「ウソをついたと思われても仕方がないと思いますが、本当ですよ。それよりもアオイを出迎えに行きませんか?レイナ様」
「良いんですか?」
「はい、短い間ですけどこれから一緒に生活するのですから気にする必要はありません。それに外で一仕事を終えた人を出迎えるのは可笑しいことじゃありませんよ?」
「な、なるほど…なら行きます」
マリアに旨いこと話に乗せられた感が否めないが、レイナはマリアと共にアオイを迎えるため玄関に向かった。
玄関を見ると、ちょうど買い物袋が乗った靴箱に手を置きながら片足で立ち、もう片方の手で靴を脱いでいる白髪の少年がいた。しかも服装が昨日とは大きく違っていた。
その服装は上半身は薄手の白いパーカーであり、下は黒いジャージ、頭部には黒いキャップ、そしていつもの真紅の目はまたも黒いサングラスで覆われていた。なお、顔以外での肌の露出がないことは昨日と変化はない。
「ただいま戻りましたマリアさん…っ、おはようございますレイナ様」
「お、おはよう、あとおかえりなさいアオイ」
「はい、ただいま戻りました」
朝の挨拶と帰宅の挨拶をした2人ではあるが、その少ない言葉のみで会話は終わり、昨日と同じように微妙な空気が流れる。そしてそれを打ち消すのがマリアであった。
「お疲れ様ですアオイ。しかしなんで貴方は会話を続けるということが出来ないんですか?これから一緒に住む相手と会話ができないと今後不便ですよ」
「…分かってますよ」
「とりあえず、すぐに着替えてきなさい」
「…このままで良くないですか?動きやすいですし」
「駄目です」
「ですが…」
「駄目です」
「…分かりましたよ、着替えてきます」
「ならよろしい」
アオイはマリアに靴箱の上に置いていた物がたくさん入った買い物を渡し、そのままトボトボと2階にある、自分に振り分けられた自室に向かった。それを見送ったマリアはレイナに振り返る。
「レイナ様、あの通りアオイは圧しに非常に弱いです。何かをお願いする際には私の用意に圧力を掛けるといいでしょう。親しい人間には簡単に従ってくれます」
「そうなんですか?でも私は昨日会ったばかりですし、親しい訳では…」
「私の勘ですが、その点は問題ないと思います。加えて言うならレイナ様ががつがついけば素になると思いますよ?」
「それも勘ですか?」
「そうですね、勘です(それに私たちに『例の事』を教えてくれたのはアオイですからね)」
「?どうしました?」
「大丈夫ですよ、アオイから物を受け取ったので私は朝食の準備に向かいますが…」
「ミーナちゃんを起こしに行けばいいんですね?」
「そうです、よろしくお願いします」
そのままレイナとマリアは二手に分かれた。
レイナはリズムよく階段を上り、ミーナの部屋の前に辿り着く。そして3度ノックをしてから起床しているか否かを確かめた。その結果は内側からの反応はなく、あったとしても少女の可愛らしい起きることを拒否する声のみであった。
まだ起きてないと判断したレイナは部屋の扉を開け放つ。中は床に直引きされた布団が一組と綺麗に畳まれた布団が一組あった。本来ならベットの方が良かったのであろうが、当のミーナは「床で眠るのなんて初めて!日本にいる間は床で寝たいの!」と言い出した結果である。なお、ホークはそれに反対する事はなく、同じく床で眠ることになったマリアも「問題ない」と答えたのであった。
(マリアさん、とても綺麗に布団を畳んでる…むしろ使ってないんじゃないかな?…そんな訳ないか。それよりも)
一瞬別のことを考えてしまったが、今は金髪の少女を起こすことが先である。レイナは布団で自前で持ってきたと思われる黒い犬のぬいぐるみを抱きしめながら眠っており、日の光が室内に入ってきてるのにも関わらず、起きる気配がない。
仕方がないため、レイナは声を掛けて起こすことにした。
「ミーナちゃん、朝だよ?起きよ?」
「みゅぅ…眠いのぉ」
「マリアさんが朝ごはん用意してるよ、起きて?」
「やぁだ!」
「もう…どうしよう」
ミーナは一向に起きる気配がなく、嫌々と身体を動かし、布団の中に潜ってしまった。
流石に困り果てたレイナの元に1人の人物が現れる。
「どうかしました?レイナ様?」
それはメイド服に着替えを終えたアオイであった
次は月曜日!!




