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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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93/225

寿綾乃という女 第4部 93

 いずれに、しても、気になる…


 気になるのは、伸明のことではない…


 伸明のことは、いくら 考えても、答えは出ない…


 だから、気になるのは、団郁馬のこと…


 五井北東家の当主、団郁馬のことだ…


 どんな男か、気になる…


 実に、気になる…


 私は、そう、考えると、早速、パソコンを立ち上げた…


 スマホではなく、パソコンを立ち上げた…


 パソコンの方が、画面が、大きいからだ…


 それゆえ、見やすいからだ…


 私は、パソコンを立ち上げて、東都テレビのホームページを見た…


 東都テレビの社長や会長の名前を見た…


 どんな顔をしているのか、知りたかったからだ…


 が、


 団郁馬の名前は、なかった…


 あったのは、別人の名前…


 違う名前だった…


 会長にも、社長にも、団郁馬の名前は、なかった…


 それゆえ、少し、考えて、今度は、東都新聞のホームページを見た…


 東都新聞の社長や、会長の名前を探す…


 そこにも、団郁馬の名前は、なかった…


 私は、少し考えて、今度は、東都新聞の社主を探した…


 が、


 東都新聞のホームページでは、社主の名前を載せたホームページは、どこにも、なかった…


 それゆえ、今度は、ネットで、東都新聞の社主を探した…


 そこでは、簡単に見つかった…


 東都新聞は、団家が、所有すると、書いてあった…


 が、


 それ以外の記述はなし…


 団郁馬についての記述は、見つからなかった…


 私は、少し考えてから、違うアプローチを試みた…


 直接、団郁馬の名前を、パソコンに入力した…


 おそらくは、ヒットしないだろうと、思いながらも、入力した…


 この団郁馬という男…


 思ったよりも、用心深い…


 それゆえ、自分の名前を表に出さないのだろう…


 東都新聞の社主が、団家であるという以外は、ヒットしないのは、そのため…


 極力、自分の存在を目立たなくする…


 あるいは、隠す…


 そういうことだろう…


 つまりは、隠すことで、あえて、自分の力を誇示する…


 そういうタイプの人間かも、しれない…


 この手のタイプの人間には、二種類が、ある…


 わざと、自分の力を、誇示するタイプ…


 もう一方は、わざと、自分の力を誇示しないことで、かえって、自分の力を大きく見せようとするタイプだ…


 わざと、自分の力を誇示するタイプの人間は、さまざまな場所で、自分の実績や肩書をアピールする…


 要するに、自分を大きく見せたいタイプの人間だ…


 もう一方の自分の力を誇示しないタイプの人間は、わざと、自分の力を誇示しないことで、かえって、自分の力を大きく見せたいタイプの人間…


 例えば、伸明の五井家を例に取れば、さりげなく、


 「…ボクも五井家の人間なんですよ…」


 と、言う…


 わざと、さりげなく、言う…


 そうすることで、周囲の人間が、


 「…あの五井家の一族なら、きっと、凄いお金持ちじゃ…」


 となる…


 が、


 実際は、五井家の末端…


 単に、五井家の血を引いているだけ…


 単に、五井一族であるだけ…


 という人間もいる…


 つまりは、わざと、控えめに言うことで、返って、五井一族と聞いたものの想像力を膨らませるというか…


 多くを語らないことで、返って、自分を大きく見せるタイプの人間ということだ…


 そして、おそらく、この団郁馬という男は、このタイプの男…


 わざと、自分を語らないことで、自分を大きく見せるタイプの男ということだ…


 自分を語らないこと=自分をミステリアスな存在に見せることだからだ…


 ミステリアス=神秘だから…


 神秘だから、余計に周囲が、その人間を大きく見る…


 謎が、多いから、余計に、周囲が、大きく見るからだ…


 そう、思いながらも、さっきも言ったが、団郁馬の名前を直接、パソコンに打ち込んだ…


 おそらく、ヒットしないだろうと、思いながら、打ち込んだ…


 が、


 意外にも、ヒットした…


 団郁馬の名前が、ヒットした…


 そして、ヒットしたホームページを見た…


 そこには、団郁馬氏、平成研の会議に出席とある…


 平成研?


 一体、なんだろうか?


 今度は、平成研の名前で、検索した…


 すると、だ…


 すぐに、見つかった…


 平成研のホームページが、見つかった…


 そこには、代表の名前が書いてあった…


 代表の名前に藤原ユリコと書いてあった…


 あのユリコの名前が書いてあった…


 ナオキの前妻の名前が書いてあった…


 私の宿敵の名前が書いてあった…


 それを見て、一瞬、唖然とした…


 唖然として、言葉も出てこなかった…


 が、


 すぐに、一瞬後に、笑い出しそうになった…


 思わず、笑い出しそうになった…


 私の前には、いつも、あのユリコが、立ちはだかっている…


 あらためて、そう、思った…


 あのユリコが、いつも、立ちはだかっている…


 そう、思ったのだ…


 若き日に、あのユリコから、私は、ナオキを寝取った…


 結果的に、ナオキを私のモノにした…


 だから、その一点だけを見れば、間違いなく、私は、悪役…


 誰が、見ても、悪役だ…


 が、


 それ以前に、私は、あのユリコと相性が悪かった…


 初めて会ったときから、悪かった…


 なんとなく、嫌という人間は、誰しもが、いる…


 初対面で、会ったときから、嫌という人間は、いる…


 私の場合は、ユリコが、そうだった…


 初めて会ったときから、嫌だった…


 正直、虫が好かないというか…


 根拠がなく、嫌いだった(爆笑)…


 そして、それは、おそらく、ユリコも同じだったろう…


 初めて、私を会ったときから、私を嫌いだったろう…


 ユリコは、平凡な容姿で、私が、美人だったから、ユリコは、私を嫌いだった…


 最初は、それが、理由だと思ったが、そうではない…


 なんとなく、嫌なのだ…


 理由は、ない…


 ただ、好かない…


 生理的に好かないのだ…


 そして、それを、考えたとき、もう一つの光景が、脳裏に浮かんだ…


 あのユリコ…以前、スーパーで、長谷川センセイといっしょにいるところを、見た…


 私の主治医であり、五井西家の血を引く、末裔であり、なにより、五井家当主の伸明と結婚するハルカの兄である、長谷川センセイといっしょにいるところを、見たことを、思い出した…


 なにか、ある?


 当然、なにか、ある!


 私は、思った…


 私は、考えた…


 そして、それ以上に、考えたのは、今度の騒動…


 今回の伸明の結婚の騒動に、あのユリコが、一枚噛んでいるという確信だった…


 揺るぎのない、確信だった…


 なにより、あのユリコは、以前、五井の女帝、諏訪野和子に、一杯食わされている…


 完敗している…


 それは、以前、あのユリコが、五井のゴタゴタが、あったとき、抜け目なく、立ち回り、下位の五井の分家…


 五井の本家と、東西南北の分家以外の五井家の分家から、株を譲り受け、和子に、買わせようと、試みたことだ…


 当然のことだが、五井家の株が、外部に出ては、困る…


 五井家が、五井グループを所有するのは、基本的に、五井ホールディングスの株を五井家が、所有しているから…


 例外は、あるが、五井グループの主要各社の筆頭株主に、五井ホールディングスがあり、その五井ホールディングスの株を五井一族が、所有しているから、五井グループの各社に君臨することができるからだ…


 いわば、間接統治というか…


 直接、五井の各社の株は、五井一族は、所有しないが、その各社の株を五井ホールディングスが、所有することによって、五井各社を統治する形になっているからだ…


 だから、その五井ホールディングスの株が、外部に流失しては、困る…


 一株でも、流失しては、困る…


 あのユリコは、五井の下位の分家に近付き、高額で、一部の株を、一族から、買った…


 そして、その株を、あの諏訪野和子に、買わせようとした…


 五井の女帝に買わせようとした…


 が、


 五井の女帝の方が、ユリコより、一枚上手だった…


 諏訪野和子の方が、一枚上手だった…


 和子は、事前に、ユリコが、五井の分家から、株を買うために、どこから、その資金を手に入れたか、事前に調査していた…


 事前に掴んでいた…


 資金の提供先は、意外や意外…


 暴力団だった…


 高尾組という経済ヤクザだった…


 そのヤクザから、融資を受けて、ユリコは、五井の分家から、株を買い取り、買った株を数倍の高値で、五井の女帝に売りつけようとしていた…


 株を五井本家に買い取らせようとしていた…


 当然、和子は、買い取らなければ、ならない…


 五井一族以外の人間が、五井ホールディングスの株を持っては、まずいからだ…


 株が、外部に流失しては、まずいからだ…


 しかしながら、その株を買い取る資金の提供先が、暴力団であることを、和子は、逆手に取った…


 和子は、どこからか、知らないが、ユリコが、高尾組から、資金提供を受けたことと、その資金を、いつまでに、返すか、掴んでいた…


 それを、逆手にとって、


 「…今月中に、高尾さんに、資金を返さなければ、マズいんでしょ?…」


 と、ユリコに迫った…


 事実、ユリコは、返済期限までに、資金を返さなければ、ならなかった…


 それゆえ、たしか、ユリコは、あのとき、買い取った金額の3倍の価格で、買い戻せと、和子に迫ったが、


 「…2倍にしなさい…欲をかくんじゃ、ありません!…」


 と、和子に、ピシャリと、言われ、和子の言った買値で、株を売らざるを得なかった…


 ユリコにとっては、屈辱…


 まぎれもない屈辱に違いなかった…


 そして、それを、考えれば、今回の騒動の裏に、あのユリコがいても、おかしくはない…


 十分に、おかしくはない…


 ユリコは、屈辱を甘んじて受けるような女ではない…


 自分の受けた屈辱を何倍にして、返さなければ、気がすまない女だ…


 だから、今回の騒動の背後にいても、おかしくはない…


 あの和子の不在を狙って、五井に嫌がらせを仕掛けても、おかしくない…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 なにより、五井に攻撃を仕掛けることは、私に対する嫌がらせでもある…


 今回の五井の当主、諏訪野伸明の結婚に、ユリコが、絡んでいるとしたら、それは、私に対する嫌がらせでもある…


 なぜなら、あのユリコは、私と伸明の関係を知っているからだ…


 伸明を私以外の女と結婚させることで、私から、伸明を奪い取る…


 それによって、私に復讐することが、できる…


 ユリコから、ナオキを奪った私に復讐することができる…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 そして、そう考えると、いつのまにか、パソコンを動かすために、手にしたマウスを力いっぱい握り締めていた…


 思わず、力いっぱい握り締めていた…


 思わず、私の宿敵が、私の前に立ち塞がった…


 あのユリコが、立ち塞がった…


 そう、思ったからだ…


 そう、考えたからだった…


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