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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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84/225

寿綾乃という女 第4部 84

 伸明の結婚…


 それは、一大イベント…


 五井一族にとっての一大イベントだ…


 それは、なぜか?


 それは、伸明が誰と結婚するかで、一族内のパワーバランスが、崩れかねないからだ…


 それを、回避するために、あの和子は、私を選んだ…


 私、寿綾乃を選んだ…


 それを、さっき、和子の双子の姉である、昭子から、聞いた…


 そして、それを、聞いて、納得した…

 

 なぜ、あの和子が、私を推すのか、納得した…


 五井の女帝が、なぜ、私を推すのか、納得した…


 たしかに、私が伸明と、結婚すれば、五井のゴタゴタは、避けられる…


 なにより、私には、後ろ盾もなにもないのが、良い…


 私が、五井のように、有力な一族の出身ならば、伸明と結婚することで、五井の運営に口を出してくる可能性が高いからだ…


 それを、避けるうえでも、一般人の私の方が、いい…


 なにより、私が、伸明と結婚すれば、今のまま…


 今のままの体制で、五井を運営できる…


 今のまま、東家が本家を牛耳ることが、できる…


 これが、いい…


 あの和子が、いみじくも、言ったように、亡くなった建造が、私の叔母を好きだった…


 私に似たルックスの美人の叔母を好きだった…


 それゆえ、私を伸明の妻にして、建造に、報いたい…


 生前、一生懸命、五井一族をまとめた、建造に、報いたい…


 その気持ちにウソは、ないだろう…


 が、


 その一方で、打算もある…


 私と伸明が結婚することで、五井のパワーバランスが、崩れない…


 今のままの体制でいる…


 今のままの東家が、主導する形で、いる…


 それも、また、大きいだろう…


 政界では、ないが、伸明の結婚で、一族内の主流派が、一気に、非主流派に転落することもありえるからだ…


 だから、それを、防ぐために、私を選んだ…


 その側面の方が、大きいだろう…


 亡くなった建造の功績に報いたい気持ちもあるだろうが、その方が、大きいだろう…


 打算の方が、大きいだろう…


 なにより、あの伸明は、私を好き…


 この寿綾乃を好き…


 それが、大きい…


 自分で言うのも、なんだが、あの伸明は、私を好き…


 それは、わかる…


 十分過ぎるほど、わかる…


 まあ、これは、私に限らず、誰でも、同じ…


 誰かが、自分を好きか、どうかは、見ていれば、わかる(苦笑)…


 相手の態度を見ていれば、わかるからだ…


 真逆に、嫌いも、同じ…


 同じだ…


 相手が、自分を嫌いか、どうかは、見ていれば、わかるものだ(爆笑)…


 例え、言葉にしなくても、態度を見ていれば、わかるものだ…


 そして、一方の私は、といえば、やはり、伸明が好き…


 結婚うんぬんではなく、伸明が好きだ…


 が、


 結婚はできない…


 それは、なぜか?


 それは、私には、ナオキがいるから…


 長年、連れ添ったパートナーの藤原ナオキが、いるから、できない…


 伸明と結婚できない…


 伸明は、二番手…


 一番、好きなのは、ナオキだから、伸明と結婚できない…


 そして、そんなことを、思いながら、私は、調子に乗っている…


 実に、調子に乗っていると、思った(笑)…


 果たして、私は、そんなにいい女なのだろうか?


 そう、思った(爆笑)…


 たしかに、私は、自分で言うのも、なんだが、美人だ…


 元フジテレビのアナウンサー、近藤サトさんの若い頃に、似た、美人だ…


 しかしながら、歳は、すでに、32歳と、決して、若くは、ない…


 なにより、私程度の美人は、世の中には、ごまんといる…


 いや、


 ごまんとまでは、言わないが、それなりにいる(苦笑)…


 それゆえ、考えた結論は、ただ、運が、いい…


 それが、答えだった(爆笑)…


 私は、自分でいうのも、なんだが、たしかに、美人だが、誰も、会ったことがないほどの、美人ではない…


 人々が、圧倒されるほどの美人ではない…


 ある意味、ありふれた美人だ(笑)…


 それは、街を歩けば、わかる…


 田舎では、圧倒的な美人だったが、それは、田舎だから…


 田舎だから、人口が少ないからだ…


 だから、田舎では、圧倒的な美人だった…


 が、


 それが、都会に出てきたら、違った…


 決して、ゴロゴロとまでは、言わないが、都会には、それなりに、いる…


 自分と似たような美人がいる…


 それが、驚きだったし、それを、見て、消沈した…


 自分に自信がなくなった…


 いい意味で、私の伸び切った鼻が、へし折られた…


 私並みの美人は、世の中には、それなりにいることが、わかったからだ(苦笑)…


 そして、そんな月並みな美人が、あの伸明と、知り合い、好きになって、もらえたことが、奇跡…


 奇跡だと思う…


 正直、顔以外、取り柄のない私を好きになってくれたのが、奇跡だと思う…


 何度も言うように、私並みの美人は、世の中に、それなりにいるからだ…


 だから、奇跡…


 奇跡なのだ…


 なにより、たとえ、美人やイケメンに生まれたからといって、そのルックスを生かして、玉の輿に乗れるものは、少ない…


 男も女も少ない…


 そんなことができるものは、少ない…


 それゆえ、私風情の美人が、伸明のようなスーパーお金持ちと知り合い、好きになられたことが、奇跡…


 奇跡に他ならない…


 小学生や中学生では、ない…


 三十を過ぎた立派な大人だ…


 それが、どれほどの奇跡か、わからないのが、おかしい…


 稀に、それが、わからないものが、いるが、それは、やはり、頭がおかしいのだろう…


 まだ、若ければ、言い訳ができる…


 あのときは、若かったから、わからなかったと、言い訳できる…


 が、


 さすがに、三十路を過ぎれば、その言い訳は、できない…


 また、これは、私の個人的意見だが、歳を取れば、誰もが、頭が良くなるものでは、決してない…


 現に、私自身、高校生のときと、中身は、変わらない…


 十数年前に、ナオキと初めて、会ったときから、中身は、変わらない…


 ただ、ナオキといっしょに、会社を手伝って、その過程で、さまざまな経験をした…


 会社が、大きくなる過程で、さまざまひとと会った…


 それが、大きい…


 決して、頭が、良くなったわけでも、なんでもない…


 ただ、当時は、まだ、体験していなかった体験をした…


 それだけだ…


 そして、たぶん、それは、誰もが、同じ…


 同じだ…


 言葉は、悪いが、偏差値40の高校を出て、会社に入れば、学校の成績と、仕事は、別物だから、仕事が、できれば、簡単に出世できると、考えるのは、やはり、その人間が、偏差値40だからだろう(爆笑)…


 会社に入れば、まずは、そこに、どんな人間が、いるのか、見る…


 どんな人間というのは、まずは、学歴…


 どんな職場でも、仮に、その職場の人間が、早稲田や、慶応を出ているものが、大半なら、まずは、自分は出世が難しいと考えるのが、普通だろう(笑)…


 その中で、高卒で、入って、出世できると、思うのが、間違っている…


 それは、サラリーマン金太郎の世界…


 マンガの世界に他ならない…


 現実には、ありえない話だからだ…


 もし、サラリーマン金太郎の世界が、この世の中に、現実にあると、考えるのなら、頭が、おかしいのだろう…


 よほど、頭が、おかしいのだろう…


 話を元に、戻そう…


 つまりは、学校を出て、仕事に就いた…


 が、


 そこで、得たのは、経験だけ…


 別に、頭がよくなったわけでも、なんでもない…


 仕事を通じて、さまざまな経験をしただけだ…


 頭が、良くなったわけでも、なんでもない…


 仮に、そこで、たいした学歴もないのに、出世できたとすれば、まずは、その仕事が、自分に合っているのだろう…


 出世の有無は、仕事が、自分に合っているのか、いないのかが、一番大事だからだ…


 後は、運…


 仮に、自分の方が、頭が悪いにも、かかわらず、頭のよいひとよりも、自分が、出世したのだとしたら、まずは、運が良いと、思うこと…


 ただ、その前提に、その仕事が、自分に合っているか、否かが、大切だ…


 そして、仕事は、どんな職場でも、出世ができる前提では、マネジメント能力が、求められる…


 さきほど、例にあげた高校が、偏差値40出身の人間では、マネジメントは、無理…


 あくまで、現場で、仕事が、できるので、あって、マネジメント=管理は、無理だからだ…


 そして、やはり、それが、わからないのが、偏差値40なのだろうと、考える…


 今では、そう、思える…


 そして、そんな体験をしたのは、まだ会社が、小さかったとき…


 会社が、小さいから、ひとが選べない…


 だから、学歴が、低くても、入って来られたからだ…


 それが、今、従業員は、千人にも、達した…


 当たり前だが、社員は、大半が、大卒…


 それも、著名な大学を出ているものが、多い…


 そして、もし、その偏差値40の高校を出たひとが、会社に残っていたとしても、出世は、もちろん無理だが、それ以前に、著名な大学を出たひとたちと、話が、合わないだろう…


 話をすれば、大半の人間が、相手の学歴が、わかる…


 極端な話、東大を出たものと、さっき言った偏差値40の高校を出たものが、席を並べて、仕事をしていても、まずは、仕事以前に、会話が、噛み合わない…


 それが、わからないのが、おかしい…


 それは、また、結婚も、同じ…


 同じだ…


 いくら、美人でも、偏差値40の高校を出た女が、東大卒のエリートと結婚できるはずもない…


 いや、実際は、世間にそれなりに、いるかも、しれない…


 しかし、私に言わせれば、話が合うのだろうか?


 大いに、疑問だ…


 これは、差別と言えば、差別だが、現実に、話が、合うか、どうか、だ…


 東大は、大げさだが、仮に、自分の住む地域で、偏差値40の高校を出たものと、偏差値70の高校を出たものが、結婚して、うまくいくかと、考えれば、そんなこと、ありえないと、考えるのが、普通だろう…


 どうしても、頭の差があると、いっしょにいるのは、難しい…


 会話が噛み合わないからだ…


 お互いに、興味を、持つものが、異なるからだ…


 それでも、うまくいくのは、昔から、知っている場合…


 近所の幼馴染で、物心つかない頃から、知っていて、いっしょに、遊んだ間柄の男女とか…


 子供の頃から、知っていれば、意外に、頭の差を感じないことも、大きい…


 アイツは、ああいうヤツだと、お互い、思っているからだ…


 だから、互いを受け入れられる…


 が、


 そんな例は、稀だろう…


 実際には、ほとんど、ありえないだろう…


 私は、思った…


 私は、考えた…



 そして、いつしか、夕方になり、ナオキが、家に戻って来た…


 私は、ナオキが、家に戻って来たタイミングで、今日、あったことを、話そうと思った…


 昼間、あの諏訪野昭子と会ったことを、話そうと、思った…


 が、


 それどころでは、なかった…


 それは、一目、ナオキの顔色を見たときから、わかった…


 なにか、あったと、わかった…


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