↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
64/225

寿綾乃という女 第4部 64

 だから、私は、それを、確かめるべく、彼女に、聞いた…


 直球で、聞いた…


 「…そう言えば、菊池さん…」


 と、言ってから、聞いた…


 「…なんですか? 綾乃さん?…」


 「…さっき、菊池さん、社長と、伸明さんの、結婚相手と、される人物が、同じ女性だと、言ったでしょ?…」


 「…ハイ、言いました…」


 「…それって、誰から、聞いたの?…」


 直球で、聞いた…


 彼女は、私の質問に、顔色を変えた…


 大げさでなく、顔色を変えた…


 途端に、表情が、強張った…


 強張った表情のまま、


 「…それは…」


 と、口ごもった…


 「…それは…なに?…」


 「…五井一族からに、決まっているでしょ!…」


 菊池リンが、投げやりに言った…


 が、


 私は、それを、受けて、


 「…それは、わかっているわ…」


 と、受け流した…


 「…五井一族の誰か、聞いているの?…もしかして、あの西家の方?…」


 「…西家? どうして、そう思うんですか?…」


 「…だって、伸明さんと、見合いをしたでしょ?…」


 私が、言うと、彼女は、黙った…


 「…」


 と、沈黙した…


 私は、


 「…図星ね…」


 と、言いながらも、ホントに、そうだろうか?


 と、考えた…


 ことは、そう、単純なんだろうか?


 私には、そうは思えなかった…


 なぜなら、これは、反乱…


 五井家内部の反乱だからだ…


 今は、五井本家は、事実上、東家が牛耳っている…


 牛耳る=支配している…


 それは、伸明の母が、東家出身だから…


 そして、伸明の母の妹である、叔母の和子もまた、前当主、建造の弟の義春と、結婚した…


 つまりは、姉妹で、本家の兄弟と結婚したからだ…


 それゆえ、叔母の和子は、伸明の後ろ盾…


 後ろ盾=後見人になった…


 それを、見て、他家が、面白いわけはない…


 とりわけ、五井の東西南北の分家の内、東家を除いた、西家、南家、北家が、面白いはずが、なかった…


 なぜなら、本来、東西南北の分家の権限は、対等…


 対等だからだ…


 それゆえ、和子が、倒れた今、西家が、動き出した…


 本家にちょっかいを出すべく、動き出した…


 当然、他の、南家、北家も、動き出すだろう…


 西家、同様、動き出すだろう…


 私は、考えた…


 考えたのだ…


 同時に、思った…


 そんなことを、考えながら、思った…


 五井家、前当主、建造と、弟の義春兄弟のことを、だ…


 なぜ、当時、建造と義春は、東家の姉妹と、結婚したのだろうか?


 それを、思ったのだ…


 他家のお嬢さまでも、良かったのでは、ないか?


 西家でも、南家でも、北家でも、良かったのでは、ないか?


 そう、思ったのだ…


 それゆえ、菊池リンに、


 「…菊池さん、話は変わるけれども、ちょっと、聞いていいかしら?…」


 と、言った…


 菊池リンは、怪訝な顔をした…


 私になにを聞かれるのか、不安だったのだろう…


 だから、私は、


 「…たいしたことじゃ、ないわ…」


 と、念を押してから、聞いた…


 「…ほら、伸明さんのお父様と、その弟さん、つまり、アナタのおじいさま…五井本家の兄弟は、どうして、東家の姉妹と、結婚したの? 菊池さんのおばあさま姉妹と結婚したの?…」


 と、聞いた…


 私の質問は、予想外だったようだ…


 同時に、明らかに、安堵した表情になった…


 「…そんなことですか?…」


 と、安堵した表情で、言った…


 「…簡単ですよ…」


 「…簡単?…」


 「…そうです…簡単です…単純に、他家に、建造さんと、義春おじいさまと、結婚できる適齢期の女が、いなかったからです…」


 あっさりと、真相を告白した…


 「…だから、五井内部で、おじいさまたちが、結婚する相手は、東家のおばあさまたちしか、いなかった…五井の歴史は、四百年…だから、一族とは、いえ、血の繋がりは、薄い…もはや、他人並みに、薄い…だから、いつからか、結婚は、一族内で、しろと、言われて、それを守っただけです…」


 それでか?


 私は、その説明を聞いて、納得した…


 なにに納得したかと、言えば、どうして、あの西家の当主が、長谷川センセイの妹を連れて来たのか?


 その理由に納得したのだ…


 長谷川センセイは、今は、なんの繋がりもないが、西家の血を引いている…


 正確に言えば、西家の一族とも、言える…


 だから、その妹もまた、西家の血を引いている…


 五井一族の血を引いている…


 それゆえ、あの西家夫妻は、ハルカを、伸明に紹介した…


 ハルカも、血は薄いが、五井一族…


 五井一族の血を引いているからだ…


 だから、紹介した…


 一族の結婚の掟に従っているわけだ…


 同時に、思い出した…


 この目の前の菊池リンもまた、かつては、伸明の結婚候補の一人だったことを、思い出した…


 そのとき、この菊池リンは、言った…


 五井の結婚の掟を当てはめたとき、伸明と、結婚できるのは、私しか、いないと、打ち明けた…


 一族同士で、結婚できる、適齢期の女は、自分一人だけと、打ち明けた…


 だから、あの西家夫妻は、あのハルカを紹介したのだと、今さらながら、気付いた…


 あの西家夫妻に、適齢期の女は、いないに違いない…


 が、


 偶然か、偶然でないか、わからないが、五井一族の血を引く、娘と知り合った…


 それゆえ、それを、好機と見て、伸明とハルカが、見合いをした…


 そう、気付いた…


 今さらながら、気付いた…


 そして、そう、気付くと、安心した…


 ホッとした…


 なぜ、あの西家夫妻が、ハルカを連れて来たか、わかったからだ…


 私には、これまで、なぜ、あのハルカなのか?


 おおげさに、言えば、解けない謎だった…


 たしかに、ハルカは、美人…


 誰が、見ても、勝気な美人だった(苦笑)…


 誰が、見ても、勝気な美人?


 そう、考えると、辻褄が合っている…


 実に、合っている…


 なぜなら、五井の血を継ぐものは、女は、皆、勝気…


 勝気だからだ(苦笑)…


 そして、美人…


 この目の前の菊池リンも、また、美人…


 可愛い系の美人だ…


 そして、


 そして、だ…


 五井の血を引く歴代の女たちが、才能豊かな男たちと、結婚することで、五井は、伸びて来た…


 業績を伸ばした…


 ということは、どうだ?


 おそらくは、女たちは、美人が、多いのでは、ないだろうか?


 美人が、多く生まれる家系なのでは、ないだろうか?


 なぜなら、才能ある男たちと、結婚するには、やはり、自分も、なにか、持っていなければ、ならない…


 当然、五井だ…


 金は、あるだろう…


 が、


 それだけでは、いい男は、ゲットできない…


 その場合には、美人が、有利…


 ルックスがいい方が、有利だからだ…


 これは、男も女も同じ…


 同じだ…


 仮に、条件が、同じだった場合は、ルックスがいい方が、有利だからだ…


 この場合の条件とは、お金だったり、性格だったり、頭の良し悪しだったり、する…


 もし、それが、同じなら、誰だって、美人や、イケメンの方が、いい…


 当たり前のことだった…


 そして、私が、そんなことを、考えていると、


 「…綾乃さん、なにを、考えているんですか?…」


 と、菊池リンが、聞いてきた…


 当たり前だった…


 私は、少し考えて、


 「…いえ、五井の女性って、美人が、多いのかなって…」


 と、答えた…


 私の回答に、菊池リンは、唖然としたようだ…


 「…どうして、そう、思うんですか?…」


 と、直球で、聞いてきた…


 「…だって、菊池さん、可愛いでしょ…」


 私が、言うと、目の前の菊池リンが、


 「…」


 と、絶句した…


 どう、答えていいか、わからなかったのかも、しれない…


 「…そして、伸明さんの見合いの相手のハルカさんも、美人…彼女もまた、五井の血を引いている…五井西家の血を引いている…」


 「…」


 「…以前、マミさんが、言ったことがあるの…」


 「…マミさんが、なにを言ったんですか?…」


 「…五井家というけれども、皆、苗字が違う…本家は、諏訪野だけれども、アナタは、菊池…同じ一族なのに、苗字が違うのは、おかしいでしょ? それで、マミさんが、言ったの?…」


 「…マミさんが、なにを?…」


 「…寿さん、どうして、同じ五井一族なのに、苗字が違うか、わかる? と、言ったの…」


 「…」


 「…そのとき、マミさんに、わかりませんと、正直に答えた…すると、マミさんが、笑いながら、それは、歴代の五井の血を引く女性たちが、才能ある男たちをゲットして、その男たちの力で、五井は、大きくなったと、笑って答えたの…」


 「…」


 「…そして、そのときは、気付かなかったけれども、才能ある男たちを捕まえるには、やはり、ルックスがいい方が、有利だと、今、思った…」


 「…」


 「…そして、それは、今、菊池さんや、あのハルカという五井西家の末裔に、当てはまる…共に、美人…だから、思ったの…」


 私が、言うと、菊池リンが、唖然とした…


 唖然として、言葉もなかった…


 それから、少しして、


 「…そこまでは、考えなかった…」


 と、口を開いた…


 「…マミさんが、綾乃さんに、言ったのは、事実…五井の発展は、五井の女性たちの婿取りだと、聞いていた…歴代の五井の女性たちが、才能ある男たちと、結婚して、五井を発展させた…そう、聞いていた…」


 「…」


 「…でも、その女性たちが、美人か、どうか、なんて、考えなかった…なんといっても、昔のことだから、写真もなにもないから…」


 菊池リンが、戸惑いながら、言った…


 それゆえ、私も、


 「…それは、私も、同じ…」


 と、答えた…


 「…綾乃さんも…」


 「…そう、同じ…今、菊池さんと、あの伸明さんの見合い相手もハルカという女性を思い出して、考えたの…」


 私が、言うと、菊池リンが、考え込んだ…


 明らかに、考え込んだ…


 「…でも、面白いわ…」


 「…なにが、面白いんですか?…」


 「…だって、菊池さんと、あの伸明さんの、見合い相手を見て、そんなことを、思いつくなんて…」


 「…」


 「…私も、これまで、そんなこと、考えたこと、なかった…」


 私が、続ける…


 「…でも、そう考えれば、納得する…辻褄が合う…」


 「…辻褄が合う?…」


 「…だって、そう考えれば、どうして、歴代の五井の女性たちが、才能ある男たちをゲットできたか、納得するでしょ?…」


 「…」


 「…まあ、もっとも、それは、私が、今、思いついたことだけで、事実は、ホントか、どうかは、わからないけれども…」


 私が、笑いながら、言うと、沈黙した…


 目の前の菊池リンが、不自然なほど、長く沈黙した…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。